[御嶽山噴火1年] 犠牲者ゼロをめざそう
( 9/29 付 )

 御嶽山噴火から1年がたった。麓の長野県王滝村であった追悼式では、噴火発生時刻の午前11時52分、犠牲者への黙とうがささげられた。

 登山者を不意打ちしたような噴火で、死者・行方不明者は計63人を数え、火山災害として戦後最悪の犠牲者を出した。

 鹿児島県では5月下旬に屋久島町・口永良部島の新岳が爆発し、火砕流も発生した。住民の全島避難はきょうで4カ月となる。

 口永良部島のほかにも鹿児島は桜島、霧島山、薩摩硫黄島、諏訪之瀬島と、気象庁が常時監視している活火山だけで五つが集中する「火山県」だ。

 登山者の多い霧島山をはじめ、活火山は人気の観光地でもある。御嶽山の悲劇は人ごとではない。鹿児島も教訓をくみ取り、犠牲者ゼロをめざしたい。

 御嶽山の噴火犠牲者の多くは、噴石が体に当たったことなどによる「損傷死」である。予知できない噴火がどれほど危険か、あらためて浮き彫りにした。

 御嶽山を教訓に気象庁は8月、「噴火速報」をスタートさせた。火口付近の登山者に一刻も早い避難を促すため、噴火から5分以内をめどにスマートフォンなどを通じて情報提供する。

 9月中旬の熊本県・阿蘇山の中岳第1火口の噴火が、全国初の噴火速報になった。噴火約7分後の速報が、観光客らの迅速な避難にどう生かされたか。しっかり検証しておきたい。

 政府は改正活火山法の成立を受け、年内にも全国50火山の周辺129市町村を警戒地域に指定し、避難計画作成を義務化する。

 ホテルやロープウエーの運営会社などにも計画作成を義務付け、自治体に登山者の把握を求める。周辺住民以外に目配りしたのは、御嶽山の教訓に学んだと言えるだろう。

 ただ、自治体の避難計画作成が完了したのは、まだ10火山前後にとどまる。ハザードマップ(危険予測地図)のない火山も少なくない。自治体の財政難、火山専門家の不足が理由とされる。

 「40人学級」と言われる火山研究者の不足も、ようやく対策に乗り出そうとしているところだ。

 世界有数の火山国を自認しながら、火山防災体制がいかにもろかったか。御嶽山噴火で痛感したことである。

 自治体を支援する。火山の危険度をいち早く診断する「主治医」を増やす。国の課題は山とある。

 東日本大震災で日本の火山は活動期に入った、との指摘もある。悠長にしてはいられない。


 
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