国内・海外の有名文学作品が約10ページの漫画に
ドリヤス工場・著のコミック、「有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」を読みました。何とも長ったらしいタイトルですが、中身はそのまま。国内・海外の有名文学作品や童話を約10ページ程度にコミカライズしています。
もともとはリイド社のWebコミックサイト「トーチweb」に掲載されていたこの作品。25話に描きおろし作品1本を加えて、この度の単行本発売となりました。
収録作品
本書の収録作品はこちら。
- 太宰治「人間失格」
- 中島敦「山月記」
- 梶井基次郎「檸檬」
- 森鴎外「舞姫」
- 坂口安吾「桜の森の満開の下」
- フランツ・カフカ「変身」
- 宮沢賢治「注文の多い料理店」
- 永井荷風「ぼく東綺譚」
※「ぼく」はさんずいに墨 - 泉鏡花「高野聖」
- 夏目漱石「三四郎」
- アンデルセン「雪の女王」
- 芥川龍之介「羅生門」
- 田山花袋「蒲団」
- 幸田露伴「五重塔」
- 新美南吉「ごん狐」
- 樋口一葉「たけくらべ」
- 魯迅「阿Q正伝」
- 伊藤左千夫「野菊の墓」
- トルストイ「イワンのばか」
- エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」
- 菊池寛「恩讐の彼方に」
- 二葉亭四迷「浮雲」
- グリム童話「ラプンツェル」
- 夢野久作「ドグラ・マグラ」
- 堀辰雄「風立ちぬ」(単行本描き下ろし)
以上の全25作品(「ドグラ・マグラ」は連載時、前・後編)。ほとんどの人がタイトルだけでも聞いたことがあるのではないでしょうか。まさに有名作品ばかり。ちなみに私が読んだことがあるのは…聞かないで。文学作品、ちょっと苦手な分野なもので…。
最大の特徴は「水木しげる」タッチの絵柄
しかしこの本はそんな私や、時間の無いあなたのためにあるような本。文学作品を少ないページで簡潔にまとめてくれています。そして最大の特徴は「絵柄が水木しげるタッチであること」。そう、あの「ゲゲゲの鬼太郎」の水木しげる先生ですね。ドリヤス工場さんと言えばその水木タッチを完コピしたことで有名な漫画家さん。「あやかし古書庫と少女の魅宝」で一躍有名になりました。
あやかし古書庫と少女の魅宝 第1巻 (IDコミックス REXコミックス)
- 作者: ドリヤス工場
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2012/07/27
- メディア: コミック
- 購入: 4人 クリック: 39回
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こちらの作品はドリヤス工場氏の完全オリジナルで、ストーリーはライトノベル風。しかし本作「有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」はある意味原作付きです。どんな風に文学作品が調理されているのでしょうか。
感想
では感想。うーん、シュール(笑)。いや、おもしろいです。有名な文学作品を約10ページという制約のなかで適度に省略し、要所をかいつまんでコミカライズ。そしてそのタッチが水木しげる風である、というところに何ともおもしろみがあります。ある意味、読んでる自分が滑稽な感じ(笑)。そしてどの話もはしょり具合が絶妙で、急な展開に「はぁ?」となることもあるのですが、それが逆にシュールさに拍車をかけています(元の話がそもそもそうなのかもしれませんが)。
でもどの話もちゃんと作品として成り立っているのはドリヤス工場氏のセンスなのではないかと。そもそも作品を理解していないと抜粋もできませんし、イメージ化も難しいでしょう。文学作品や童話によくある解釈の難しい部分も無理にわかりやすくせず、あえてそのままにしているような感じがまた、文学っぽくて良いです。そして水木しげるタッチ、なぜにこんなに文学にマッチしているんだ…。
まあ「山月記」や「注文の多い料理店」「羅生門」などはそもそもボリュームが無いので、単にコミカライズしただけやん!と思わなくもないですが(笑)。これらは私も内容を知っていますが、うん、確かにこんな感じ。普通に楽しんで読めます。「人間失格」や「ドグラ・マグラ」はわけがわからない(褒めてます)。「恩讐の彼方に」は初めて内容に触れましたが、実にいい話でした。…と、短いページの漫画を読んだだけでこんな感想を持てることに、この作品の意義があるのでしょうね。
まとめ
以上、ドリヤス工場「有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。」を読んでみた、というお話でした。この連載は先にご紹介したトーチwebで「人間失格」と「山月記」、そして単行本に収録されていない第26話以降の作品を読むことができます。
トーチweb 有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。
このエントリーを書いている現在では「坊っちゃん」「夫婦善哉」「武蔵野」が掲載中。ということは第二巻の発売もありそう?単行本になるまではまだまだかかりそうなので、首を長くして待っています。ドリヤス工場先生、頑張ってください。