トップページ科学・医療ニュース一覧18歳選挙権で高校生向けの副教材
ニュース詳細

18歳選挙権で高校生向けの副教材
9月29日 11時39分

18歳選挙権で高校生向けの副教材
k10010251701_201509291216_201509291221.mp4
選挙権年齢が引き下げられて18歳以上になることに伴い、政治参加に関する教育の充実を図るため文部科学省と総務省が作成してきた高校生向けの副教材が完成し、29日公表されました。副教材は、模擬選挙や討論といった実践的な授業を盛り込み、すべての高校生などを対象に配布されることになっています。
選挙権が得られる年齢を引き下げて18歳以上にする改正公職選挙法が先の国会で成立し、来年夏の参議院選挙から適用されることを受けて、文部科学省と総務省は、新たな有権者となる高校生への政治参加に関する教育の充実を図るため、生徒向けの副教材と教員用の指導資料を作成し、このほど公表しました。
このうち、副教材は、有権者になることの意義や選挙の仕組み、議員の活動内容などを盛り込んだ「解説編」と、政治への参加意識の向上を目的に具体的な学習活動を示した「実践編」などの3部で構成されています。
「実践編」では、論理的な思考力や諸問題に対し合意形成を図る力などが求められるとして、生徒どうしが1つのテーマのもとに討論や政策論争を行ったり、学校内で架空の候補者への模擬選挙を実施したりすることができるように、具体的な進め方が、写真や図解などと併せて示されています。
一方、教員用の指導資料では、学校における政治的中立を確保するため、「教員の個人的な主義・主張を避けて指導する」といった留意すべき点なども盛り込まれています。
副教材は、両省のホームページ上で公開され、年内にすべての高校生などを対象におよそ370万部が配布されることになっています。

副教材の中身は

この副教材は、新たに有権者になる高校生に必要な政治的な教養を身につけてもらおうと、知識の暗記だけでなく政治的な課題などを多角的に考える力を養うことを目的に初めて作られました。
副教材は、「解説編」、「実践編」、「参考編」の3つに分かれ、まず、「解説編」では、選挙の公示や告示から選挙運動を経て、投票に至るまでが詳しく紹介されているほか、議員と政党の役割や近年の投票率の推移、憲法改正に必要な国民投票の仕組みなども記載されています。
さらに、「実践編」では、「今後の日本社会は、多様な価値観をもつ他者と議論しつつ協働する『民主主義の担い手』を要請している」としてグループでの話し合いやディベートでの政策論争をする方法が説明されているほか、模擬の選挙や議会を教室で行うなどして実践的に学ぶ方法もイラストや図表を交えて紹介されています。
今回は、副教材に合わせて教員向けの指導用の資料も用意され、生徒を指導する際には政治的な中立性を確保することを中心に授業などで注意するべき点が記されています。

政治的な中立性の確保求める

高校生の政治教育を巡って、今回の副教材と教員向けの指導用の資料は、特定の政党の立場や主張に偏らず、政治的な中立性を確保することを教育現場に対して求めています。
教育基本法や公職選挙法では、学校が特定の政党を支持したり、反対したりする政治教育などをしてはならず、教員も地位を利用して選挙運動をすることができないと定めています。
副教材では、新たに有権者になる高校生が「世の中のさまざまな見方や考え方について、試行錯誤しながら調べ、自分なりに考えていく」のが、学校だとしていて、教員向けの指導用の資料でも、「『公の性質』を有する学校においては、その政治的中立性を確保するため、教育内容に一党一派の政治的な主義・主張が持ち込まれたり、学校が政治的活動の舞台となるようなことは厳に避けなくてはならない」としています。
そして、高校生に実践的な教育活動を行う際には、1つの結論を出すよりも結論に至るまでの冷静で理性的な議論の過程が重要であることを理解させ、多様な見方や考え方のできる事柄などを取り上げる場合には生徒の考えや議論が深まるようさまざまな見解を提示することなどが重要だとしています。さらに、新聞などを活用する場合は、1つの新聞のみを使わず、複数の新聞などを使用して比較検討するほか、教員はみずからの言動が生徒に与える影響が極めて大きいことから個人的な主義主張を述べることは避け、中立かつ公正な立場で生徒を指導することを求めています。

文部科学相「選挙や社会参画に関心を」

下村文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で、「18歳以上の高校生は、選挙運動が可能となるので、公職選挙法も含め、選挙の仕組みについて正しい知識を身につけさせることも重要になってくる。学校現場において、選挙や社会参画について議論し関心を持ってもらうことで、結果的に若い世代の投票率が上がるよう、先生方に頑張って努力して欲しい」と述べました。
また、下村大臣は、記者団が、政治的中立の確保が強調され、教員の萎縮を招くおそれはないかと質問したのに対し、「政治的中立性を守ることと、民主主義国家として一人一人の国民が参加することがいかに重要かを教えることは相矛盾することではない」と述べました。

専門家「民主主義の本質理解を」

高校生の政治教育について文部科学省に提言してきた早稲田大学政治経済学部の田中愛治教授は、「これまでの政治や選挙に関する授業では、知識の暗記に終始することが多く、それでは政治が身近なものとならない。副教材で示されている模擬選挙などは、体験型の授業で生徒も楽しみながら選挙制度や投票の流れを知ることができる」と話しています。そのうえで、「これを一過性のものとして終わらせるのではなく、国や自治体の政策に自分たちの声が反映されるという民主主義の本質をしっかりと理解させることが大切だ」と話しています。

関連ニュース

k10010251701000.html

関連ニュース[自動検索]

このページの先頭へ