3月の寒いとある日のこと。ポルシェを所有している知人達で集まって試乗会をした。
誘われた時は正直気が進まなかったのだけれど、レクサスRC-Fを持ってきてくれる友人(の奥さん)がいたので、それ目的で参加した。ところが直前になってその友人の奥さんに用事が出来てRC-Fあえなく棄権。もうガックシ…
参加した車は
マイチェン前のカイエンS(私の)
ケイマンGTS
ニュー911カレラ
マカンS
マイチェン後のパナメーラハイブリッド
何故参加に気が引けたかというと…そう、みんなぶん回すから。去年余裕たっぷりだったタイヤをあえて交換したところなのになぁ。
さてまずはケイマンGTSに乗せていただく。3400cc・340馬力・トルク38・車重1380kg(大体)。リッターあたり100馬力だからかなりのチューンだ。右ハンドルPDK仕様。オプション満載で総額1300万円以上とのこと。大体外装色に50万円かけるなんて不思議な奴(後輩です)。総走行距離は5700km。
外観から。この車ホント美しい。まだ旧モデルも十分かっこいいが、このニューモデルのデザインは素晴らしいと思う。MRならではのデザイン。面白かったのはツインブラックマフラー。最初ガソリンのススで汚れているのかと思ったら然に非ず。
カギをもらいそそくさと中に入る。ドア剛性はまずまず。2ドアなので少々重くて、フレームレスなのでセダン系より少々剛性感が落ちる感じはしょうがない。
コックピットは最近のポルシェに共通するもの。センターコンソールにずらずらとスイッチが並んでいる時代錯誤なものだが、山ほどあるオプションを全部付けたときのことを想定するとやむを得ないのだろうか。普段SUVに乗ることが多いので、シートに座ると普段との景色の違いに焦り、シートリフトを上に全開し少々落ち着く…って手動じゃん!ここはオプションにしなかったのね…。ハンドルは珍しいアルカンターラ生地。シートも体に触れる部分はアルカンターラ。ルーフもアルカンターラ。ダッシュボードの形状は911の絶壁タイプより優しいラウンド形状でなじみやすい。後方視覚はまあそこそこ。
気になったのは2点。メーターに出る日本語。明朝体でなんだか「和」を感じる…。もう一つはやや致命的。アクセルが左に相当オフセットされていること。走り出すと気にならなくなったけれど、初めてアクセルに足乗っけようとした時は足が空振りした。しばらく自分が左を向いて運転していないか気になってしょうがなかった。
さて早速エンジンを掛ける。なんじゃこりゃ。私のカイエンのスポーツエグゾーストシステムなんて比じゃない。「ボワヮヮヮヮ~~ン!!」と轟音を奏でてエンジン点火。アイドリング時も「ボッボッボッ」といかにもアナログなサウンドを聴かせてくれる。相当ヤンチャな車の可能性あり。ミラーなどを調整する。ちなみに電動開閉式ドアミラーもオプションとのこと。シートは硬質で、サポートもしっかりしている。アルカンターラシートは革シートよりフィットしていい感じだった。
スルスルと発進する。ノーマルモードで加減して発進すると、PDKの悪いところかどうか分からないが、結構緩慢な加速にしかならない。ただ発進した瞬間に分かったのは、ハンドリングのダイレクト感がハンパないこと。早速全開加速を試みる。やっぱり発進直後の加速は少々物足りないが、3000rpmを超えるともう一瞬で3ケタ速度まで到達する。一番の感動はPDKの繋がり。このダイレクト感や、一瞬でシフトアップする感覚を覚えると、トルコンATがだるく感じ、MTがもどかしく感じる。特にスポーツプラスに設定すると、電光石火でシフトアップする。ATスティックもカイエンの硬質感ゼロのものとは異なりカッチリ感がある。
全開加速後アクセルをパッと離せば、アフターファイアまで起こす徹底ぶり。こりゃすごいわ。エンジン音、排気音は超ゴキゲンだけれど、V8のような重い排気音ではなく、6気筒のやや軽い排気音。
圧巻はコーナーリング。そらエンジン前に積んでないのだから当然だけれど、鼻先軽い軽い&鬼グリップタイヤ&かなりのロードインフォメイションを伝えてくれるサス等で本当に直角に曲がっているんじゃないの?と思えるぐらいスパッと曲がる。もちろんこの車、TVR(トルクベクタリング)やPASM等の電制満載ではある。出来れば素のモデルと比較してみたいものだ。ただステアリングのアルカンターラは最後まで触り心地に違和感があった。もちろん超クイックなハンドリングなので、ステアリングをスルスル滑らせる必要がないのだけれど。これってバックスキンのように劣化してツルツルにならないのかな?
ブレーキはポルシェの伝統、超硬質でなおかつ効きは抜群。ブレーキパッドはオプションなし。いい車のブレーキは前につんのめる感じではなく、後ろのブレーキがしっかり効き、水平に沈み込み停止する感覚だけれど、これはまさにそう。重いカイエンはそうはいかない。素人なので高速コーナーなどでブレーキをかけたわけではないけれど、このハンドリングとロードインフォメイションなら急に車がパニックになることはないだろう。加速よりもブレーキングにこの車の価値を見いだせる。
とにかくスポーツ。スポーティーではなくスポーツな車。回転数を高めにキープして美味しいゾーンを使い走りを楽しみたいが、排気音が目立って周りからヤンチャな走り屋と思われるのがどうも嫌。しかもそのゾーンは高速道路でしか不可。それならばとサスをノーマルにして、エグゾーストもノーマルにすると、一転しておとなしめの乗り心地、排気音、シフトチェンジになる。ただ発進加速も一段落ちる。かといってサスをスポーツプラスにして、エグゾーストをONにすると、これぞ非日常を味わえる。じゃあ一台で2度おいしい車かというとそれはちょっと違う。素地はスポーツカー。普段はベンツSLKのような感じになって欲しいと思ってもそれは叶わない。全てノーマルにしてもアドレナリンはチョロチョロ出る車。先に乗った911とは全く異なる車。高速走行は少ししかしていない。TVR付きといえどゆったりクルーズする車ではないのは一目瞭然。ハンドルはしっかり持っていないといけなかった。ここが911との最大の相違点。決してフラフラしているわけではないが。
総括:ライトウェイトスポーツカー。剛性の塊。走る曲がる止まるすべてに超硬質。特に曲がるが大好物。街中をトロトロ走っているとそうでもないが、時速50や60kmになるともっと速く走りたいとウズウズしてくる。外観は正直911よりかっこいいと思う。視線を集めまくった。容姿、走り共にこれが今のポルシェの最高傑作じゃないのかな~。911ターボSとかもそりゃいいのだろうけどさ。プアマンズ911という言葉はこの車と911を乗り比べればその言葉の意味のなさがすぐに分かるが、ま、そうはいかないのだろう。結局911は乗り出し1400万円の車になっちゃったからね(カレラPDKの定価が1250万円)。
この車最高におすすめ。欲を言えばボクスターがいいなぁ~。欲しい!!