【フランクフルト=加藤貴行】独フォルクスワーゲン(VW)の排ガス試験を巡る不正問題で、ドイツ検察当局は28日、マルティン・ヴィンターコーン前社長に対し、詐欺容疑で捜査を始めたと発表した。VWの不正は組織ぐるみの関与の有無が焦点になっている。世界の自動車業界を揺るがしている問題は、欧州自動車最大手のトップの刑事責任が問われる可能性が出てきた。
独検察は同日の声明で、社外の告発に基づいて「排ガスのデータを改ざんして販売した詐欺容疑」で前社長の捜査をするとした。検察はすでにVW本社から関係書類の押収なども始めている。今後、関係者の事情聴取を進め、前社長の責任の有無も問う見通しだ。
VWは会社としての違法性は認めていたが、ヴィンターコーン氏は23日の辞意表明時に自らは不正には関与していなかったとしている。
同社は不正問題を受け、技術部門の幹部の停職処分を決めたほか、弁護士事務所が主導し調査を進めている。不正対象車両は世界で1100万台にのぼる見通しで、数週間内にリコール(無料の回収・修理)を始める検討に入っている。
欧州メディアによると、1100万台のブランド別内訳はVWが500万台、アウディが210万台、シュコダが120万台などとなっている。
VWの株価は28日、一時節目の100ユーロを割り込み、5年ぶりの安値圏に下落した。
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