【ニューヨーク=吉野直也】オバマ米大統領は28日、国連総会一般討論で演説し、国民を虐殺し続けるシリアのアサド大統領の退陣を改めて要求した。「一部の主要国が国際法に反する形で自らの主張を展開している」と述べ、シリアを軍事支援するロシアの対応を批判した。アサド氏を「暴君」と呼び、シリア国民への無差別攻撃を重ねて非難した。
アサド氏退陣の手続きにも触れ「管理された政権移行が必要だ」と語り、新政権ができるまでの短期的な政権存続には理解を示した。一方で中東の過激派組織「イスラム国」(IS=Islamic State)掃討に向けて「ロシア、イランを含む各国と協力する用意がある」とも語った。
アサド政権への軍事支援を強化するロシアはIS掃討作戦へのアサド政権参加を提唱。作戦を主導する米国はシリアの反体制派を入れた枠組みづくりを進めており、反対する。
シリアでのISの進撃がおさまらないことからロシアがアサド政権に協力するよう求めたものだが、これがIS掃討を巡る米ロの主導権争いに発展している。10年ぶりの国連総会出席となるロシアのプーチン大統領はアサド政権を加えた新たな枠組みでの掃討作戦を訴える立場。米ロの応酬となっている。
オバマ氏はウクライナ危機に関しても「主権侵害は受け入れられない」と述べ、ロシアによるウクライナ介入を批判した。ロシアへの度重なる経済制裁が効果を上げていると強調する一方で、ウクライナ危機に象徴される米ロの対立により「冷戦に戻るわけではない」とも指摘した。
南シナ海で人工島を造成して領有権を主張する中国を念頭に「航海の自由は保障されなければならない」と批判。中国に外交的な問題解決を呼びかけた。イランの核を巡る最終合意に関しては「完全に履行されれば、核兵器の禁止は強化され、戦争の可能性は回避される」と述べ、イランと対立するアラブ湾岸諸国に理解を求めた。
オバマ、アサド、プーチン、ロシア、シリア情勢