この調査結果について「米国とカリフォルニア州にとって明らかに問題だと、幹部たちは警戒を強めた」とCARBのヤング氏は話す。
ヤング氏によると、昨夏に始まったカリフォルニア州当局者らとVWとの話し合いで、VWのエンジニアは調査データとその手法に異議を唱え、結果の信ぴょう性を損なおうとしたという。「断固反対する態度だった」と同氏は振り返る。
EPAによると、VWは昨年12月2日に独自の調査結果を持ち出し、基準を超えていたのは「さまざまな技術的問題と予期せぬ走行中のコンディション」のせいだと主張した。その後、VWはエンジン制御ソフトを修正するためのリコール(回収・無償修理)に同意した。
CARBのエンジニアたちはテストを続け、VWによるソフト修正でも排ガスが大きく減少しないことを明らかにした。事態の打開につながったのは、車のコンピューターシステムに保存されていた診断データを調べたときだった。
ヤング氏は「いくつか非常に不思議な異常を発見した」と言う。
「例えば、通常とは逆に、車は温まった状態よりも冷えた状態での方がクリーンに作動していた。普通は温まったときに汚染制御システムも最善に働く。だが、この車は違った。明らかに何か違うことが起きていた。われわれは時間をかけて、彼らが合理的な説明ができないほどに十分な証拠と疑問を集めた」と同氏は説明する。
CARBは今年7月8日、その結果をVWに提示したが、同社の立場に変わりは見られなかった。一部の当局者は、VWが試験走行時に排ガス規制モードに切り替わる「無効化機能(defeat device)」ソフトを自社の車に搭載して意図的に法を犯しているのではないかとひそかに疑問に思っていたと、関係者の1人は明らかにした。
同ソフトは通常走行時には排ガス低減装置を無効化し、有害物質を基準値の最大40倍排出する。
「こんなふうにだまして逃げ切れると思うなんて、想像をはるかに超えている」と、1999年から2004年までCARBを率いたアラン・ロイド氏は驚きを隠せない様子で語った。
(原文:Timothy Gardner、Paul Lienert、David Morgan、翻訳:伊藤典子、編集:下郡美紀)
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