IoTの標準化団体

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IoTの標準化

IoT 関連のコンソーシアム、標準化団体が多数あり、全てを把握しきれないほどに乱立しているように感じます。産業分野ではGEを中心としたIndustrial Internet Consortiumは150社以上も参加し、oneM2Mも、欧州や米国、アジアの通信関連標準化組織7団体によって2012年に設立され、5つの業界団体および200以上の企業が参加して強大な勢力となって標準化を進めています。一方で、スマートホーム分野は、複数のコンソーシアム・標準化団体が乱立している状況です。

2015年7月にジュネーブのITUで行われた「Global Standards Collaboration(GSC)」では、各産業界でフォーラムやアライアンスが乱立し細分化し、それぞれ独自のIoTモデルを構築していることが課題提起されていたようです。

IoT の世界において、 異なる機器やプラットフォーム間で標準化を進めることは、これまでに多くの技術が標準化によって普及・定着してきたことを考える、早急に解決すべき重要な課題であると思われます。業種を超えて企業が連携することは、新しいサービスや商品を生み出すために非常に大切であり、標準化によってIoTはより身近な技術として世の中を支える存在になっていくものと思われます。

通信やセキュリティなどIoTに絡む技術分野は多用です。ですので、新たな団体を設立して標準化をめざす場合もあれば、これまでの既存の団体がIoTに特化して標準化を目指す場合もあります。またIoT 関連の標準化団体の特徴としては、多くのベンダーが複数の団体に参加しているということがあります。どこのどんな規格がデファクトスタンダードを取るのか、まったく予測がつかない状況だからかもしれません。

日本に目をやると、日本企業のIoT関連団体への参加が少ないといわれています。しかし、IoTの重要要素であるセンサーに秀でた企業は日本に多数ありますし、IoTを手掛けている企業の割合は、世界全体よりも日本の方が高いという報告もあります。だから尚更のこと、IoTの国際標準化に発言力を持たないとかつての携帯電話のように、IoTにおいても「ガラパゴス化」してしまう可能性が否定できないと危機感を示す向きもあります。

IoT標準化をめざす団体・規格の分類

様々な団体があり、それぞれの団体が何を目指しているのか、それぞれの団体の位置づけや関連など、素人にはとても分かりづらいものになっています。

〇 世界標準化、デファクト化、エコシステム化

IoT規格の標準化をめぐる動きを、「世界標準化」、「デファクト化」、「エコシステム化」の視点でとらえ、日本は基本技術の世界標準化でそれほど後れをとっている訳ではないが、産業分野では出遅れ気味とする見方があります。

規格・技術・団体
世界標準化
既存規格

6LoWPAN : IETF、省電力無線NW

Zigbee : 無線センサーNW

IP500 : 大規模省電力センサーNW

3GPP : LTEによる大規模無線NW規格化を目指す団体

oneM2M : 世界主要7標準化団体、M2M

Thread Group : グーグル、スマートホーム

TSN : 産業・自動車向けEthernet AVB

日本主導既存規格

Wi-SUN / ECHONET : スマートホーム

GotAPI : 無線通信

 

デファクト化
デファクト化を目指す基本技術

MQTT : IBM、既にオープンソース化

 CSRmesh : 英CSR、スマホ接続・制御

デファクト化を目指す団体/規格

AllSeen Alliance : クァルコム、スマートホーム

Homekit : Apple. スマートホーム

エコシステム化
エコシステム化から標準化を目指す団体

Open Interconnect Consortium : インテル、スマートホーム・オフィスから産業分野へ

Industrial Internet Consortium : GE、製造業など産業分野

HyperCat : BT等英国企業、オープンカタログ

Smart Objects Guideline : 欧州企業中心、ガイドラインや便利情報

(IoT政策の動向 2015年5月21日 (株)インターフュージョン・コンサルティング代表取締役会長奥井規晶 より)

〇 技術標準化の3分野

「TECHNO-FRONTIER 2015」での日立製作所の木下 泰三氏の講演では、技術標準化を「通信インターネット系」、「電気制御系」、「スマートデバイス・家電機器インターフェース系」の3つの分野でとらえて、通信インターネット系では「OneM2M」、電気制御系では「IEC/SG8」、スマートデバイス・家電機器インターフェース系では、「IEEE 2413」が先行しているとしておられます。

5つの階層における有力な規格や標準化組織

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日立製作所の木下 泰三氏(情報・通信システム社 ITプラットフォーム事業本部 IoTビジネス推進統括本部 事業主管)の講演より

〇 複雑化する業界団体

IoTの業界団体の目的を大きく、標準化、プラットフォーム、IoT エコシステムの構築を目指す団体に分かれ、その中でもさらに各団体の目的は分かれており、IoT の業界団体は複雑化の一途をたどっているという指摘があります。

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(ニューヨークだより2015 年8 月「米国におけるIoT(モノのインターネット)に関する取り組みの現状」八山 幸司 より)

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(More With Mobile http://www.more-with-mobile.com/2015/06/iot-alliances-and-interoperability.html より)

〇 共通・汎用規格を狙う団体と業界別・特定規格を狙う団体

IoT規格を進める団体を「共通・汎用規格を狙う団体」と「業界別・特定規格を狙う団体」に分類する見方もあります。

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(IPA第2回つながる世界の開発指針検討WG 資料2「 IoT規格における開発指針の位置づけ案」2015年9月18日 ソフトウェア高信頼化センター より)

〇 IoT標準化団体の位置づけ

下図は、複雑に絡み合ったIOT標準化団体の位置づけを示したものです。こうしてみるとそれぞれの団体の特徴が見えてきます。Industrial Internet Consortiumは重工業、Allseen Allianceは家電といったメーカーが多く、Open Interconnect ConsortiumとAllseen Allianceは対立関係になると見られます。

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(iroha Tech Note http://tech.at-iroha.jp/?p=335 より)

〇 セキュリティに関する標準化

ここまでは、技術的な標準化でしたが、IoTが本格的に市場になるにはセキュリティー技術がそれに見合った成熟を遂げることが必要です。消費者の立場でIoT製品を購入しようというとき、セキュリティの信頼性がないと買わないだろうことは想像がつきます。

2015年8月、アメリカの「オンライン・トラスト・アライアンス」は、IoT製品のセキュリティーやプライバシー保護の基準である「インターネット・オブ・シングス・トラスト・フレームワーク」の初期版を公開しました。ちょっと前の2015年4月にアメリカのクラウドセキュリティアライアンス(CSA)は「New Security Guidance for Early Adopters of the IoT」と題するガイドラインを公表しています。標準技術団体である「IEEE」は、「P2413」と呼ばれるIoT関連技術を2016年中に標準化するとの情報があります。P2413WG(Working Group)が進めているのは「フレームワークとして、共通要素間及び領域をまたがったレファレンスモデル」「プライバシー、安全性を考慮したデータ取り扱いのブループリント」「リファレンスアーキテクチャー」などです。

 

IoTに関わる標準規格の策定に向けた取り組みが各団体活発に行っていますが、まだ、IoT全体を包括的にカバーする規格は存在していません。しかし、傍観しているだけではせっかくのビジネスチャンスを失いかねません。今後の動きを注視していくことが大事なようです。

 

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