
私は現在、クオンツと呼ばれる金融工学を生業とした仕事をしています。大学時代に学んでいた数学、その中でも確率論、統計学をダイレクトに仕事として生かせるのはこれしかないと感じ、いまの職場を希望しました。クオンツという仕事にはいくつかの側面があります。金融理論を実務レベルに持っていくリサーチャーであり、最先端の金融理論を扱う学者でもあります。また、その理論を評価モデルに実装するエンジニアでもあります。名刺にはフィナンシャルエンジニアと書いてありますので、自分は金融理論を実践するエンジニアだと自覚しています。

バイサイドクオンツとして最近私が手掛けているのは、クレジットデリバティブの評価手法の提案とその評価ツールの開発です。デリバティブの中には単純なオプションだけでなく、CDSが組み込まれた債券など、複雑な仕組みを取り入れたものもあります。第一生命の保有するクレジットデリバティブに適切な価格を付けることが、いま行っている主な業務です。また、生命保険会社には長期的な視点の資産運用が求められるため、リスク管理が重要です。その運用戦略を決定する上で、当部の開発したALMモデルは不可欠なものとなっています。限られた人数や期間内での案件遂行の必要を迫られることから、より責任感が強くなったように感じます。

当社の保有する資産は多様化しており、その中にはデリバティブも含まれています。それを財務諸表に計上する時の金額は、私たちが作成したツールをもとに算出され、会社の損益や、課税ベースの利益が決まります。学生の時にも教科書などで知識としてはありましたが、実際に自分の仕事の成果が会計ベースに反映されたり、自分の構築したロジックが実務に使われて、高額の金融資産が売買されたりすることに、大きなやりがいと同時に責任の重さを感じます。また、最近の金融の世界では、商品の仕組みの複雑化により、金融工学のニーズが高まっています。保有資産の内容を正確に評価しようというトレンドから、自分の知識を生かすチャンスが増えていると思います。

今後は、金融工学のスペシャリストになりたいと思っています。いまは研究開発部門にいるため、金融商品の仕組みは理解していても、現実の取引の肌感覚がありません。理論を実務に応用するためには、実際のトレーディングをはじめとするさまざまな実践を積んでいく必要もあると考えています。クオンツは専門性の高い分野です。腕のいい職人さんのような、技のあるクオンツになりたいと思います。