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大型バス「値上げ」で噴出した、予想外の悲鳴

東洋経済オンライン 9月27日(日)6時0分配信

 国の安全対策強化で貸し切りバスの運賃が値上がりし、修学旅行や部活動遠征に影響が出ている。積み立てていた資金が足りず、追加徴収したり、コースを変更したり対応に腐心している。

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 秋の行楽シーズンの日帰りツアーでも、旅行会社や観光地が集客減など打撃を受け悲鳴を上げる一方、バス業界は過剰な価格競争の歯止めに一服し、安全コストへの理解を求めている。

■ 修学旅行も「有料施設には立ち寄れない」

 佐賀市のある中学校は、来春の修学旅行の計画変更を余儀なくされている。当初は広島-松山-大分を巡る行程でバス代は3台、31万円と試算していた。運賃改定により43万円と4割近く上がり、2年前からの積立金では不足することに。旅費を追加徴収したり、立ち寄り先を減らしたりして補った。

 担当教諭は「入場料の高い水族館をコースから外すなど工夫したが、それでも資金が足りなかった」と吐露する。「修学旅行なので教育的効果がなければいけないが、資金面を考えると有料施設に立ち寄れない」と内情を明かす。

 学校の部活動にもしわ寄せがきている。佐賀市のある中学校では、中体連など規模が大きい大会はPTAなどから補助が出るが、練習試合の遠征費は保護者の積立などで賄っている。運動部を統括する顧問教諭は「貸し切りバスを借りられず、自転車で会場に向かわせたり、保護者の車で送迎したりしている」と現状を語る。

 観光地もツアー行程から外される例が出ており、思わぬ余波に戸惑いを隠せない。

 吉野ケ里歴史公園では小中学校や高校の修学旅行が減少傾向にある。観光客対応の担当者は「少子化や学校の統廃合など複合的な要因で団体客が減っている。貸し切りバスの運賃改定の影響も原因の一つ」とみる。

 県外も同様で、多くの修学旅行生や観光客で賑わう大分県の水族館うみたまごは「全体の入場者数は変わらないが、貸し切りバスの団体客は減っている。旅は安全が第一だが、運賃値上げは観光地には痛い」と漏らす。

■ 世界遺産登録でも、ツアー申し込みは減少

 秋の大型連休に、県内の旅行会社の表情も渋い。佐賀市の旅行代理店支店長は「修学旅行や部活などの学校関係だけでなく、日帰りツアーや会社の社員旅行などに影響が出ている」と危機感を見せる。

 県外旅行者向けで佐賀市の三重津海軍所跡と佐賀城本丸歴史館を巡る日帰りツアーは昨年と比べ旅行代が3〜4割アップした。7月の世界遺産登録で弾みをつけたいところだったが、「昨年よりも申し込みが減少傾向にある」とこぼす。業者の一人は「国が値上がりした運賃を補助する方策などを打ち出してくれなければ、中小・零細の旅行会社は持ちこたえられない」と悲鳴を上げる。

 県内の貸し切りバス業者は際限ない価格競争に歯止めがかかったことに安堵している。県内業者の観光課営業主任は「修学旅行など大切なイベントに影響が出るのは申し訳なく思うが、安全を保つにはコストがかかることも理解してほしい」と話す。

■運賃制度改正
国交省は2012年4月に群馬県の関越自動車道で発生した高速ツアーバス事故を機に、長距離や長時間にわたる運転手の労働環境を見直す安全対策の一環で2014年4月に運賃制度を改正した。過度な価格競争を防ぐため、値下げ範囲を制限し、罰則も強化した。バスの出庫前後1時間も走行時間とみなし、運賃に跳ね返っている。

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最終更新:9月27日(日)6時0分

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