近くで見ると雄大ですね。
今もちょっと噴火していますが鹿児島といえばこの山桜島です。
案内人の羽田美智子です。
桜島は日々噴火を繰り返しているまさに生きている山です。
8月には大きな噴火のおそれが高まり一時鹿児島は緊張に包まれました。
荒々しい姿を見せる桜島ですが実は地元鹿児島の人たちにとっては強さの象徴でもあり心のよりどころでもあるんです。
この桜島のように強くなりたい。
そんな思いを胸に鹿児島では子どもたちが毎年夏4泊5日かけて桜島の周りを歩きます。
その道のりはなんと100キロ。
その先に子どもたちは何を見つけるのでしょうか。
そ〜れ!そ〜れ!そ〜れ!い〜ちい〜ちいちに!
(一同)そ〜れ!い〜ちい〜ちいちに!
(一同)そ〜れ!地域の中で子どもたちが切磋琢磨し強さを身につける。
薩摩藩の時代から続く鹿児島の伝統です。
100キロの旅が始まったのは12年前。
少子化で失われつつあった機会を取り戻そうと親たちが企画しました。
この夏挑んだのは県内の小学4年生から6年生114人です。
オ〜!いざ出発。
子どもたちは垂水市の港をスタート。
5日間かけて湾をぐるっと回り鹿児島市の中心部まで歩きます。
最初の2日間は海沿いの道。
顔を上げればいつも桜島があります。
次の2日間は坂道を上ります。
子どもたちにかかる負担がだんだん大きくなっていきます。
い〜ちい〜ちいちに!
(一同)そ〜れ!い〜ちい〜ちいちに!
(一同)そ〜れ!最終日は山道です。
高低差300メートル長さ3キロに及ぶ急勾配が待ち受けています。
歩き始めた子どもたちです。
(一同)そ〜れ!そ〜れ!10人ずつのグループで声を出し励まし合います。
そ〜れ!そ〜れ!そ〜れ…!1人だけ声が出ていない男の子がいました。
丞大くんが住んでいるのは鹿児島市から車で1時間半かかる山の中です。
丞大!起きてね。
一人っ子の丞大くん。
いつもお母さんに起こしてもらいます。
(ラジオ)「ラジオ体操第1です」。
近所に同年代の子どもはいません。
夏休みの課題朝のラジオ体操はお母さんと2人きり。
面倒な事は嫌い。
いつもマイペースです。
丞大くんに100キロに挑戦するよう言ったのは母親の瑞代さんです。
7年前に離婚して以来丞大くんを1人で育てています。
さみしい思いをさせている分甘えるのも許してきました。
しかしそろそろ厳しさも必要だと考えています。
(取材者)じゃあ本当は出たくなかった?やる気になれないまま始まった100キロの旅。
早くもほかの子のペースについていけず後ろから来たグループに追いつかれてしまいました。
一人木陰で休む事に。
ゆっくりでもいいから少しずつでも飲んで。
急いで急に飲まんでいいよ。
ゆっくりね。
これまでの自分ではついていけない厳しい世界。
しばらく動けなくなってしまいました。
100キロの旅で今度こそ強くなりたいという男の子がいました。
せ〜の。
(一同)1234。
い〜ちい〜ちいちに!
(一同)そ〜れ!今回が3回目の挑戦です。
歩調歩調歩調!
(一同)そ〜れ!過去2回はみんなについていけませんでした。
何度も置いてきぼりになり毎日泣きながら歩きました。
旅の途中両親に宛てて書いた手紙です。
鉛筆に…。
それに揺れてめっちゃ汚い字になったんですけど…。
駿喜くんの両親は生まれも育ちも鹿児島。
「男なら強くあれ」。
駿喜くんに再び挑戦するよう言いました。
このトレーニング器具も去年の誕生日におじいさんから贈られたものです。
1日目は順調に歩いてきた駿喜くん。
2日目。
ある場所を前に不安がよぎります。
延々と続く坂道。
かつてはつらさのあまり泣きだし後れてしまった所です。
さて今年は…?フフッ大丈夫みたい。
初めて泣く事も後れる事もなく登り切りました。
(取材者)昨日より元気だね。
うん。
(取材者)大丈夫?大丈夫大丈夫。
これまでとは違う自分に少し自信をつけました。
ところが同じ頃気がかりな事が起きていました。
先頭を歩く駿喜くんのペースについてこられない下級生がいたのです。
頑張れ頑張れ。
ぼくだって頑張ってんの!みんな頑張ってんだよ。
みんなと頑張ろうよ。
初めて参加した4年生の和田佳己くんです。
佳己止まったらねずっと止まんなきゃいけないからねえ行くよ。
はい足動かして足動かして。
佳己足動かして。
佳己足動かして。
歩いた距離は30キロを超えました。
ううっ…。
座り込んだら駄目。
座り込んだら駄目駄目。
でも道のりはまだまだ続きます。
頑張れ頑張れ。
はい歩こう歩こう。
はい。
(一同)頂きま〜す。
頑張って食べよう。
駿喜くんがグループから後れていた佳己くんの隣に座りました。
これまではグループの先頭にいた駿喜くん。
一番後ろを歩き始めます。
駿喜くんが駆け寄ったのは…?佳己くんです。
最初に歩いた時のつらさを知る駿喜くんが支えます。
(一同)お疲れ!初めて全員一緒に目的地に到着する事ができました。
3班準備できてる?はい行くよ。
過去2回は泣いてばかりだった駿喜くん。
仲間に目を向け引っ張るまでになりました。
(一同)そ〜れ!1234!初日はみんなから後れ1人休んでいた丞大くん。
なんとかついていけるようになりましたが相変わらず声は出ていません。
ここまでの疲れでもう歩くのがやっとです。
膝痛いの?こっから下。
足?頑張れもうちょっともうちょっと!ところが…。
歩調コール!
(一同)オ〜!い〜ちい〜ちいちに!
(一同)そ〜れ!い〜ちい〜ちいちに!
(一同)そ〜れ!丞ちゃんと呼びかけられた途端初めて大声を出しました。
3!
(一同)そ〜れ!4!
(一同)そ〜れ!い〜ちい〜ちいちに!い〜ちい〜ちいちに!どんどん大きくなる励ましの声。
2!
(一同)丞ちゃん!3!
(一同)丞ちゃん!
(一同)そ〜れ!そ〜れ!
(一同)そ〜れ!1234!自分一人の世界では本気を出す機会がなかった丞大くん。
仲間と競い励まし合う中で変わり始めていました。
白銀坂をみんなで登り切りましょう!
(一同)オ〜!いよいよ最終日。
(一同)そ〜れ!そ〜れ!最大の難所白銀坂に挑みます。
高低差300メートル。
足元の悪い急な山道が3キロにわたり続きます。
い〜ちい〜ちいちに!
(一同)そ〜れ!歩調!歩調!歩調!仲間に負けまいと大声で気合いを入れる丞大くん。
3!
(一同)そ〜れ!4!
(一同)そ〜れ!3!
(一同)そ〜れ!4!
(一同)そ〜れ!1234!
(一同)1234!いい声出てるじゃん!頑張れ頑張れ!
(荒い息)もうちょっと!立って立って!あっ大丈夫?立つ!そう!頑張れ!もうちょいもうちょい!よ〜しよし!ペース上げよう!
(荒い息)落ちてるよ!行こう行こう!そう!もうちょっと頑張れ!いい声出したじゃん!
(荒い息)立つ!目標目標!立って立って!目標目標!目標!丞ちゃんの目標!何度倒れても立ち上がり続けて1時間。
頂上にたどりつきました。
はいお疲れ。
よく頑張った。
よく頑張った。
本気を出した先に見えつつあるのは新しい自分です。
(拍手)みんな一緒にゴールです。
(一同)100キロ完歩みんなで完歩イエ〜イ!
(拍手)5日間の旅が終わりました。
丞大くんは来年も100キロに挑もうと決めました。
「男なら強くあれ」と言われ続けた駿喜くん。
今年は一度も涙を見せず歩ききりました。
駿喜くんが着ていたTシャツにはグループの仲間が記した言葉。
「ずっとみんなを引っ張ってくれたね」。
「見事100キロメートルの道のりを完歩した事をここにたたえます」。
おめでとう。
(拍手)仲間を思いやり支えるのが本当の強い男。
3回目で見つけた答えです。
桜島を見上げながら歩いた100キロの道。
自分の中に見つけた強さを胸に子どもたちは歩き続けます。
「鹿児100」のみんな!
(一同)ありがとう!2015/09/24(木) 19:30〜19:55
NHK総合1・神戸
にっぽん紀行「ぼくは 強くなりたい〜鹿児島 桜島100kmの道〜」[字]
毎年夏、鹿児島では、シンボルである桜島の周囲100キロの道のりを、小学生が4泊5日をかけて歩く。歩き続ける中で子どもたちは何を見つけるのか。ひと夏の成長を追う。
詳細情報
番組内容
鹿児島県の桜島は、噴火を繰り返す、生きている火山だ。荒々しい姿を見せる一方で、地元の人々にとっては「強さの象徴」でもあり、心のよりどころでもある。毎年夏には、その桜島の周囲100キロの道のりを、小学生が4泊5日をかけて歩く。時には桜島を仰ぎ見ながら、時には桜島を背中に感じながら、ただひたすら歩き続ける中で子どもたちは何を見つけるのか。ひと夏の成長を見つめる。
出演者
【語り】羽田美智子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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