数々の重要文化財を所蔵する博物館のバックヤード。
そこになぜか展示される事もなく長年保管され続ける一体の仏像があった。
1,000年前に作られた阿弥陀如来像。
警察も驚いたある犯罪に深く関わっていた。
一体どういう事だ?取材で浮かび上がったのは日本中の寺が被害に遭っているある悪事。
ん?天罰とか何かちょっとオカルトっぽくなってまいりましたよ。
そうですね。
今日は何なんですか?今日タイトル見るとですね本当に怖い話に見える。
いきましょう。
こちらです。
ジャン!お告げだね。
(笑い声)概要をまずご覧頂いて。
和歌山のとある山の中にあるお寺の話です。
檀家さんはこれぐらいびっくりしたんじゃないかと。
そのお寺は500年間こういった仏像を地域で守ってきたんです。
ところがこれがある日突然変わったんです。
どうなったかご覧あれ。
こちら!ジャ〜ン。
実にカラフルになりました。
塗ったんでしょ?誰かが。
でも突然です。
突然!?これはスタッフ想像しました。
当然檀家さんたちはパニックになってるんじゃないか。
中にはいたずらなんじゃないかとかですねいやいや何かこれはついにお告げが来たんじゃないかって。
さぞかし大騒ぎになってるだろうと思って行ってみたらびっくりするような話でした。
違うんだ。
さあこの仏像に一体何が起きたのか。
調べていくとある事件と深く関わりがあるという事が分かってきたんです。
さあいきましょう!所さん!大変ですよ。
事件なんだ!突然カラフルになった仏像が置かれているのは和歌山県の山の中の寺だという。
車1台が辛うじて通れる道を抜けると70戸余りの集落が現れた。
早速突然カラフルになった仏像について尋ねてみる。
こんにちは。
NHKの者です。
(取材者)ここから2キロですか?その寺は集落から更に2キロも山道を登った所にあるという。
およそ1,400年の歴史を持つといわれる由緒ある寺。
高野山より古いんですか?あっそうなんですね。
1,400年前といえば仏教が日本に伝わって間もない頃。
以来地元の人たちの信仰の場となってきた。
このお堂の中に問題の仏像があるというのだが…。
(取材者)失礼します。
現れた仏像は確かにカラフル。
修験道の開祖である役行者の像だというのだが…。
男性に以前撮った写真を見せてもらうと…。
歴史を感じさせる像は500年ほど前に作られたという。
それがなぜ突然カラフルに?すると!聞けばこのレプリカ地元の工業高校に依頼して3Dプリンターで作ってもらったもの。
色はオリジナルが作られた当時を推測して塗ったという。
だったらなぜレプリカを置いているのか?すると男性は隣の祭壇を見せてくれた。
レプリカを作ったきっかけ。
それは4年前に起きたある盗難事件だった。
この寺は住職のいないいわゆる無住寺。
そこを狙われ長年大切にしてきた仏像2体が盗まれてしまったというのだ。
盗難事件の際お堂の隅にあったこの役行者の像は被害を免れた。
もう盗まれないようにと本物は別の場所に移し3Dプリンターで作ったレプリカを拝む事にしたのだという。
これが突然カラフルになった仏像の真相だった。
山あいの小さな村を震かんさせた仏像盗難事件。
盗まれた仏像はその後どうなってしまったのか。
事件の捜査の指揮を執った刑事課長に話を聞いてみると…。
仏像を盗んだ犯人は既に逮捕。
被害はあの寺だけではなかった。
なんと盗まれた仏像は和歌山県内80の寺から合計170体。
どれも地元の人たちが昔から大切に受け継いできたものばかりだったという。
ベテラン刑事課長も驚いた事件。
170体もの仏像を盗んだのは一体…。
聞けば仏像を大量に盗んでいたのは50代と40代の一組の男女。
女が見張りをし男が実行犯。
車上生活をしながら仏像の盗難を繰り返し大阪の古物商に売りさばいていたという。
和歌山県には高野山金剛峯寺をはじめ1,600以上の寺があり山間部に建てられたものも多い。
その中で主に住職がいない寺が狙われたため目撃者もおらず捜査は難航したという。
事態が急展開したのはある古美術商からの情報提供がきっかけだった。
盗まれたものと似た仏像1体が大阪で売られていたというのだ。
この情報を基に警察は容疑者を特定。
夜間に犯行を繰り返す男女を逮捕した。
盗まれたのは仏像170体や仏具など合わせて260点。
そのうち警察が押収できたのは130点だったという。
押収できなかった130点は行方知れずに。
その中にはあのお堂から盗まれた仏像も含まれている。
一体どこへ消えたのか?こんにちは。
消えた仏像の行方を追って犯人逮捕に協力した古美術商に話を聞いた。
誇らしげに事件を振り返る男性。
犯人逮捕のきっかけとなった仏像は一体どこで売られていたのか。
仏像の競り市?一体どんな所なのか?すると男性がちょうどこの日開かれていた競り市に案内してくれるという。
会場は老舗の古美術店だった。
ここで専門の業者が互いに持ち寄った焼き物や掛け軸などを競りにかけるのだという。
どうぞいきましょう。
はいいいですか?この日の競りに出品されていた仏像は3体。
あっという間に最低落札価格の倍以上の金額で競り落とされた。
業者によれば仏像は人気が高いという。
警察に情報を提供した古美術商によれば和歌山の事件で盗まれた仏像が売られていたのは専門の業者だけでなく誰でも参加できる競り市。
盗まれた仏像の多くはそうした競り市で繰り返し転売されてしまったのではないかという。
もしもし。
消えた仏像の行方をたどる手だてはもうないのか。
諦めかけたその時思わぬ情報が寄せられた。
ネット上に公開された誰でも参加できるオークションのカタログ。
そこにあの事件から2年後消えた仏像3体が出品されたというのだ。
オークションを主催した会社に尋ねてみると…そこで…。
あっこんにちは。
仏像を取り戻した寺を訪ねると檀家の代表が出迎えてくれた。
この寺ではあの事件で11体もの仏像が盗まれてしまったという。
仏像がオークションで売られている事を聞いた檀家がお金を出し合い取り戻したという。
するとここで檀家から衝撃の言葉が飛び出した。
これは実はね…えっ!?これもレプリカ?聞けばこのレプリカもあのカラフルな仏像と同じく地元の高校生に3Dプリンターで作ってもらったのだという。
何だか誇らしげな男性。
でも本物の仏像は今どこにあるのか?このあと本物の仏像が保管されていたある場所に潜入。
そこでディレクターが見たのは盗難事件が浮き彫りにした仏像を取り巻く悲しい現実。
一体どういう事だ?仏像の人気が高いんですね。
ああいうところで…。
ただそれ持ってたところは歴史ごととられちゃった訳だからっていうね。
町の人が大事にしてきたものが。
一度事件の概要を整理します。
こちらです。
今回の事件で被害を受けたお寺は和歌山県内にある80ものお寺です。
その多くには共通点がありまして無住寺。
ご住職が住んでないんですよ。
全部で260点が盗まれまして警察が取り戻す事に成功したのは半分の130点。
実は半分押収できたっていうのは相当多い方なんだそうです。
さあスタジオには今日も専門家の皆さんにお越し頂いています。
この仏像の盗難についてご意見のある方。
はい!あるんだ。
あるの?
(久保田)では牛窪さん。
はい。
今の盗難で出てきた無住寺っていうこれ非常に大きな問題なんですね実は。
日本全国にお寺の数ってどれぐらいか。
今8万ぐらいあるっていわれてるんですけれどもそのうち2万ぐらいが無住寺で住職さんがいないという人もいるぐらいなんですね。
4つに1つはいないの?
(牛窪)そのぐらいに。
やっぱりそうなると盗まれる危険性っていうのは当然出てくるんですね。
ああ〜くくっちゃうみたいな事ですか?長年地域で受け継がれてきたこういった文化財がね盗難に遭うっていう事例はほかの国でも大きな問題になっているんですね。
例えばこれは…へえ〜。
写真っていうのは実は一つのキーワード。
日本でもこれは使える手なんだそうです。
VTRに出てきた刑事課長によると写真や記録を残しておく事というのは大事なんだそうです。
今回の事件でも和歌山の古美術商の人が写真を見て届け出てくれたので検挙につながった訳ですよね。
まあ入られなくて盗まれないのが一番いい事なんですけど。
だからあれなんじゃないですか?入り口に書いといた方がいいんじゃないですか?「仕掛けがしてあります」。
(笑い声)「とろうとすると穴に落ちます」。
「必ずけがをします」。
さあ所さん所さん謎がまだ1つ解けておりませんよ。
こちらですよ。
VTRの最後に出てきたこの愛染明王立像ってありましたね。
レプリカだっつってた…。
そう。
取り戻せたのにレプリカを飾っている。
じゃあ本物はどこに置いてあるんですかとスタッフ取材するとこの答えでした。
博物館。
…で博物館に我々取材に行ったのですが悲劇の仏像という言葉の本当の意味が見えてきます。
まいります。
所さん!もっと大変ですよ。
本物の仏像があるという和歌山県の博物館を訪れたディレクター。
よろしくお願い致します。
お願いします。
どこに展示されているのか。
すると学芸員に案内されたのはなぜかバックヤード。
何重もの扉を通り抜けると…。
あった!盗難後オークションで売られていたあの仏像のオリジナルだ。
公開される事なくここで保管されているのだという。
更に!博物館で預かっているのはこれだけではないという。
こちらに…これはあの3Dプリンターで作られたカラフルな仏像のオリジナルじゃないか!学芸員によれば過疎化や高齢化で十分な盗難対策をとれないと檀家たちがやむをえず預けたのだという。
実は同じ理由で寺から博物館に預けられる仏像は年々増加。
今やその数およそ60体に上るという。
更に学芸員は意外な言葉を口にした。
一体何の事だ?そこに置かれていたのは全て4年前に起きた事件で警察が取り戻した仏像。
そのままずっと博物館が保管し続けているという。
一体なぜ?
(取材者)取り残された?はい。
つまり警察が押収したのにいくら待っても持ち主が現れないという事のようだ。
その数なんと…中には1,000年ほど前の平安時代に作られたという貴重な仏像まであった。
一体なぜ持ち主は引き取りに来ないのか?帰りたくても帰れないまさに悲劇の仏像。
盗難事件から4年。
今も博物館は仏像が置かれていた寺を捜し続けている。
そっか。
盗まれた事すら気付いてないんだ。
博物館に保管してもらうのは確かに盗まれなくて安全なんだけど…いい方法はないのかな?そうじゃないの?何で?脳にとっては…そうそう。
ああレプリカを。
あれ地元の高校生が1年かけて地域のために…。
偉い!じゃあまんざらレプリカ悪くないって事ですね。
私的にはそう思いますよ。
脳科学的には。
今防犯のために仏像を預けたっていう事なんですけど実はそれ以外の理由でも博物館にいろんなものが今預けられているんですね。
例えばこちらちょっとご覧下さい。
これ秋田県の博物館なんですけれどもここにコレクターの方が高齢化して預けたのが貝殻なんですね。
こういうちっちゃ〜いものから結構カラフルなものからこんな大きなものまでいろんなものがあるんですがこの数がなんと1万9,000個で段ボールにして100箱分と。
集めたねこれまた。
(牛窪)その整理にかかるだけで3年間かかると。
寄贈は断れないの?博物館も。
なかなかやっぱり地元のもの地域のものをなるべく預かろうっていうのがあって。
大変なんだな博物館。
でも何か現代の一端が見えてくるというかお寺もそうですし…。
無住寺に盗みやすいからって入ってそれをネットで売ったりとか市場で売ったりとか。
何なんでしょうね?自分の人生を振り返った時に本当に何か死に際に悲しくなるでしょうね。
怖い話だったな今日は。
2015/09/24(木) 22:55〜23:20
NHK総合1・神戸
所さん!大変ですよ「170体が消えた!?史上最悪の仏像盗難事件」[字]
関西地方の寺で檀家が驚く事件が勃発。仏像が、ある日突然カラフルに変貌したのだ。この出来事には四年前の盗難事件が深く関係しているのだが…。その驚きの真相とは。
詳細情報
番組内容
関西地方の寺で驚きの事件が起きた。500年前からある仏像が、ある日突然カラフルに変貌したというのだ。事件の真相は、盗難対策。4年前に和歌山で起きた史上最悪の仏像盗難事件の余波で、残された仏像を守るため、オリジナルは博物館に、寺にはレプリカを置くケースが増えているというのだ。驚きの仏像事情。
出演者
【司会】所ジョージ,久保田祐佳,徳永圭一,【ゲスト】澤口俊之,牛窪恵,モーリー・ロバ−トソン,【語り】吉田鋼太郎
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ニュース/報道 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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