新国立競技場の整備計画が白紙撤回された問題で25日、下村博文文部科学相が10月上旬の内閣改造で退任することが決まった。文科相は事実上の引責辞任となるが、曖昧な「幕引き」に後味の悪さが残った。
新競技場の整備主体の日本スポーツ振興センター(JSC)の理事長も10月から交代する。ただ、検証委員会の報告書が「プロジェクトに対応できる組織体制を整備できなかった」と批判した2つの組織が、トップの交代で生まれ変われるのかは不透明感が漂う。
「政治家として責任があると考えている」。文科相は25日の閣議後会見で、一連の混乱の責任を取り、安倍晋三首相に辞任を申し出たことを明らかにした。しかし、首相は「内閣改造まではしっかり務めてほしい」と慰留し、文科相はそれを受け入れた。
文科相は自身と前文科事務次官、JSC理事長の3人の給与返納を発表したが、実務担当者らの処分は見送られた。文科相は、3人以外を処分しないことについては「組織的な非違行為や義務履行違反があったのではない」と説明している。
一方、10月からサッカーJリーグ前チェアマンの大東和美氏が就任するJSCは、今回の反省を踏まえ、新競技場の整備計画の推進体制を大幅に変更する。
検証委から「権限関係が曖昧」と指摘されたため、2人いた新競技場の担当幹部を理事に一本化し、「プロジェクト・マネジャー」としての役割を担わせる。今年4月時点で28人体制だった設置本部も他省庁や民間から建築専門家などを迎え、大幅に増員する。
整備費の変遷や工事内容の情報発信については「国民の理解を得るという観点からは体制が不十分だった」(検証委)との指摘を受け、専門知識を持つ広報担当者を設置する。
新競技場の総工費は、2012年にデザインを国際公募した際は1300億円の想定だったが、その後二転三転し、最終的に2651億円まで膨らんだ。このため、政府は今年7月に白紙撤回を決めた。8月に新整備計画が決まり、JSCは今月整備費の上限を1550億円として事業者を公募し、12月に優先交渉権者を決定する。
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