くらし☆解説「どうする?子宮けいがんワクチン」 2015.09.25


生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
ええきょうのテーマはこちらです。
子宮頸がんワクチンの接種後に原因不明の体の痛みなど重い症状の訴えが相次いだ問題で先週追跡調査の結果や今後の対応について厚生労働省の会議が開かれました。
このワクチンとどう向き合えばいいのか土屋敏之解説委員です。
子宮頸がんワクチンそもそもどういうワクチンなんでしょうか。
このワクチンは法律で定められた定期接種と呼ばれるものの1つです。
定期接種というのは費用が公費で補助されまして対象者には接種を受けるように努める努力義務がありまして国がこれを勧める積極的な勧奨というのが行われます。
例えばBCGや、日本脳炎はしかなど誰もが受けたことがあるようなワクチンが含まれています。
子宮頸
(けい)がんは年間3000人が亡くなっている深刻な病気ですけれども原因はHPVというウイルスだと分かっています。
ワクチンはこのHPVの感染を減らす効果があるということで2013年の4月に定期接種に加わりました。
対象は小学6年から高校1年の女子が対象です。
ところが接種をしたあとに全身の痛みやけいれんなどワクチンの影響が疑われるいわゆる副反応の報告が相次いで批判が高まったことで僅か2か月で積極的勧奨を中断したんです。
接種するのをやめたわけではなくて積極的に勧めることをやめたということなんですね。
そうなんです。
今も定期接種のうちにはありますので多くの自治体で無料で受けられる状態なんですが受けたい人は受けてくださいという中途半端な状態になっています。
実態としては今ほとんど接種が行われていないともみられています。
こういう中、先週、国の会議が開かれたということですね。
医療関係者などを集めた合同会議がおよそ1年ぶりに開かれました。
まず副反応が疑われた人のその後の追跡調査を行ったところ1割以上に当たる186人が症状が治っていないと報告されました。
2年以上たっても痛みが続いていたり、歩けないなどの運動障害があったり中には記憶力が極度に低下したなどと、さまざまな症状の報告がありました。
学校に通えなかったり車いすに頼って生活している少女もいるんです。
こうした被害者の救済策についても話し合われました。
これまでは医師の間でも副反応について十分理解されていなくて精神的なものだなどとされてきちんと適切な対応を受けられないケースがあったんです。
たとえワクチンと因果関係が証明されなくても疑いが否定できない場合は医療費を出すさらには生活や通学の支援など救済策を拡充していくということが話し合われました。
もう1つ注目が集まりましたのは先ほどの積極的勧奨が再開されるかどうか、という点でした。
先月、日本産科婦人科学会が早期に積極的勧奨を再開すべきだという声明を出すなど医療関係者の間では早く再開すべきだという意見が主流なんです。
これに対して被害者団体などは強く反対しています。
こうした中、会議では副反応について依然不明な点があることや治療法も確立していないということなどから国民に適切な情報提供するにはさらに検討が必要だとして再開は見送りになりました。
なぜ医療関係者は積極的勧奨を再開すべきだと言っているんでしょうか。
これは世界的にみるとこのワクチンはがんを減らす効果が大きいとして普及が進んでいるからなんです。
WHO世界保健機関も推奨していてワクチン会社のある欧米を中心にすでに8000万人以上が接種を受けたと考えられています。
先進国で消極的なのは日本だけとも言われているんです。
日本のほうが特殊だということですか。
ある意味ではそういえます。
というのは実は子宮頸がんだけではなくて欧米で一般的なワクチン例えばB型肝炎やおたふくかぜといったワクチンが日本では普及していないというケースが多くてワクチンギャップと呼ばれているんです。
私も、長期的には病気を未然に防げるワクチンは普及していくことが望ましいと思います。
ただ、欧米で普及しているから無条件に日本でもやるべきだとは言えない面もあるんです。
なぜかといいますとそもそも医薬品の効果や副作用といったものは人種の違い、具体的に言うと遺伝子のちょっとした型の違いなどによって大きく差が出ることもあるからです。
子宮頸がんワクチンの場合で言いますと重い副反応の発生率を日米で比較すると日本のほうがはるかに多いというデータもあるんです。
慢性の痛みや記憶障害のようなものは欧米では、ほとんど問題として挙げられていません。
これらは診断基準が違うからじゃないかという考え方もできるんですが、何らかの理由で日本人のほうが重い副反応が出やすいという理由があるかもしれない。
それもまだ否定できないんです。
結局のところ、いちばん知りたいところは私たちは接種したほうがいいのか、やめたほうがいいのかというところなんですが。
今は国も個人の判断に任せるとしているので非常に難しいところなんですが個人にとってのメリットとデメリットをなるべくかみ砕いて考えてみたいと思います。
まずメリットなんですが日本人の女性が生涯に子宮頸がんになる確率はおよそ1%なんです。
100人に1人ですか。
これをワクチンによって0.5%以下に減らせるという可能性があります。
一方のデメリットは重い副反応を考えてみますと先月の厚労省の最新の報告数から計算すると大体0.04%という発症率になります。
これを単純に比較できるのかという考え方もあるんですが数字でいえば、重い副反応になる確率よりもがんを減らせるという確率のほうがずっと大きい、それだけ死亡率も減らせるこれが推進している医学界や欧米の主な考え方なんです。
確率的には今もワクチンを打つほうがいいということですか。
ちょっと、それだと釈然としないところもありますね。
これで誰もが納得できるかというと少し難しい気もします。
例えば、ワクチンを接種するにしても今すぐ必要なのかという見方もあるからです。
このワクチンがんというのは発症するまでに10年以上かかるんですがワクチンが世界で発売されたのが2006年のことなので実際にはまだ、がんを減らせたという実績があるわけではないんです。
原因になるウイルスの感染やがんの前段階の変化までは減らせているというそこまでなんです。
もし本当にがんを予防する効果があるのならばあと数年で世界的に子宮頸がん患者が減らせたという結果が報告され始めるはずなんです。
そうした効果が実証されれば、より多くの人が納得できるかもしれません。
次に、副反応について正確な発生率やメカニズム治療法についてまだ確立されていません。
これは今国の研究班が取り組んでいるところなのでこうしたことがはっきりするまで子どもに接種するのは不安だという人もいると思います。
さらに新しいワクチンの存在もあります。
日本で今使われているワクチンは子宮頸がんの原因になるウイルスのうちの主な2種類、大体6割をカバーしているんですが欧米ではすでにより多くのウイルスのタイプをカバーするようなワクチンが発売されていて日本でも7月に承認申請が行われました。
もし副反応が同じくらいであるならばより効果が高いほうが出るのを待ちたいという考え方もあるかもしれません。
もうちょっと様子を見てもいいんじゃないかという気持ちになりますね。
難しい問題ですが接種するにせよもう少し待つにせよ今確実におすすめできるのは子宮頸がん検診を二十歳なったら受けることです。
自治体などで実施されていまして粘膜の細胞を少し取って調べるというもので大体7割ぐらいの確率でがんやその前段階を発見することができます。
早期発見できればほとんどの場合治療が可能ですのでぜひ受けてほしいと思います。
もちろん検診もワクチンも100%ではありませんので将来的には両方が普及することが望ましいですが今の段階ではさらに検診の重要性が高いと思います。
検診は重要ですね定期的に受けたいですね。
国や学会には一刻も早く副反応のメカニズムの解明や治療法の確立を急いで、誰もが納得してワクチンの接種を受けられるような環境を整備してほしいと思います。
土屋敏之解説委員でした。
次回は、早川信夫解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
2015/09/25(金) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「どうする?子宮けいがんワクチン」[字]

NHK解説委員…土屋敏之,【司会】岩渕梢

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【出演】NHK解説委員…土屋敏之,【司会】岩渕梢

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