(伝助)よう。
あんたと会うのも今日で最後だな。
立てこもり男は事情があって自分を首にした女を呼び出した。
(伝助)ところが女には女の事情があった。
それだけじゃねえ。
キリコにもキリコの事情があったんだよ。
こりゃ最後まで目が離せねえぞ。
(キリコ)人の首を切った報いは自分自身に返ってくるってことだよね。
妙子さん。
(後藤)ええ。
私はコストカッター。
女子高生にバイト料握らせて「この人痴漢です」なんて冤罪でっち上げてでも人員を整理する仕掛け人。
(谷下田)お前そんなことまで?
(後藤)いい気になってた。
でも…。
因果は巡りに巡って最後は自分?
(後藤)そう。
大学出たばっかりの後輩に私自身が追い出された。
請負先の人事部長と不倫してるって噂流されて。
瞬く間に契約解除になっちまった。
まあよくある話ではあるわね。
あっ。
忘れてた。
これ。
課長さん。
あんたのリクエストで幻味堂の清ちゃんが作った氷枕。
ごめんね。
だいぶ解けちゃったんだけどさ。
いる?
(谷下田)せっかくだから頂こう。
うん。
フフフ。
(谷下田)あっ。
課長さん。
今がチャンスだったのよ。
あんたを取り押さえるなら。
でも私はそうはしない。
力ずくで相手をねじ伏せても物事の本質は何ら解決しないもん。
(・『異邦人』)私さ昔ムショ医だったんだよね。
(キララ)ムショ医って?刑務所の医者兼セラピスト。
相談しに来る囚人の女性たちに学校で習った文字面だけの心理学を親身になったふりしてくっちゃべってた。
若いくせしていい気になってた。
でも…。
結果生涯の親友を裏切って死に追いやってしまった。
私は逃げた。
現実から逃げた。
遠くへ遠くへ。
放浪の旅。
東京に舞い戻ってきてこの町を歩いてコーヒーのいい匂いがして吸い寄せられるように入ったのがこの店だった。
5年前にね。
そのときオーナーが黙ってかけてくれたのがこの曲だった。
私泣いた。
知らない人の前で大声で泣いた。
涙が枯れちゃってやっと泣きやんで顔を上げたらオーナーがほほ笑んでた。
「この店がお前の癒やしになるならしばらくいろよ」って。
それから私はこの店の居候。
そのオーナーが年で引退するからこの店譲るって。
ちゅうちょした。
何度も断った。
だけどさ「苦しみぬいたやつにこの店譲るって心に決めてたんだ」って。
「当面ここをお前の居場所にしろ」「傷ついた羽はまだ癒やされてないだろ」って。
でそのオーナーはそのまま一人旅に出ちまった。
私一人ここに残して。
それで私は今はこの店のオーナーさんだよ。
課長さん。
みんな一時期はいい目見る。
でもそれって決して長続きはしない。
一番心を痛めるのは人の裏切り。
でもどこかでそれを許さないと不幸を永遠に背負ってしまうことになる。
ねえ?そうじゃないかな?
(キララ)課長さんさ。
今さこの妙子って人カリンっていう名前で私と一緒にキャバクラで働いてるんだ。
毎晩毎晩あんたみたいなおっさんを相手にして。
本当か?
(後藤)刺されたんです。
あなたとおんなじように私に首を切られた人に夜道待ち伏せされてナイフで胸を刺された。
意識がもうろうとしてお花畑が見えた。
「ああ。
私死ぬんだな」って思った。
でも神様が私に生きろって言ったの。
生きて苦しめって。
(谷下田)君もしょせんは使い捨ての歯車だったんだな。
ゲームオーバーだ。
おい君。
私の膝の上で一生過ごすつもりか?まあ私はそれでもいいがね。
(栞)あっ。
失礼しました。
(谷下田)冷房がだいぶ効いてきた。
(谷下田)涼しくなったね。
(平瀬)死体はまだか?死体はまだか?
(清助)ああ!?
(千香)しばらくこのままでいて。
(清助)えっ?
(千香)何だったら一生このままでもいいよ。
清ちゃん。
(清助)千香。
(千香)あんたをマザコン地獄から救い出してあげたい。
(富子)清助のやついつまで油売ってんだ?あんた。
私もう一遍昭和堂に行ってくるから。
(太郎)見とけよ清助。
こうしてこうやって幻味堂の猫まんじゅうは作るんだ。
(富子)あんた。
(太郎)見とけよ清助。
(富子)あんた。
(太郎)これだ。
(富子)あんた!
(谷下田)お騒がせしました。
(平瀬)うん。
ちょっと待った。
この課長さん。
前科負わせたら余計働き口なくなっちゃうよ。
(平瀬)犯罪は犯罪だ。
あっそう。
なら私お巡りさんを器物破損で訴えちゃうけど。
(平瀬)えっ?無残にぶち壊したっしょ?地下室の壁。
(平瀬)いや。
あっ。
あれは。
本官は閉じ込められたんだ。
で仕方なく脱出口を切り開こうと…。
そう?清ちゃん。
(清助)いやいや。
(清助)「死体はまだか?死体はまだか?」ってそりゃもう恐ろしい形相でな?
(千香)うん。
それでも課長さんを逮捕する?それともみんなに慕われるいいお巡りさんとして生き続ける?
(平瀬)ちょっ。
あっ。
あっ?本官はどうして手錠なんか持ってるんだ?いや。
これは不思議だ。
どうにも不思議だ。
では本官は失礼する。
2人とも。
しっかり生きろよ。
うん。
(谷下田)はい。
あの2人。
やっと本心ぶつけ合ったか。
(富子)清助。
清助。
ああ。
清助。
(清助)ごめん母ちゃん。
色々あって戻れなくてさ。
(富子)ったく。
肝心なときにいないんだからお前は。
(清助)うん?
(富子)父ちゃん。
ぼけちまったんだよ。
(一同)えっ!?
(富子)しばらく入院だって。
これから幻味堂はお前が。
(清助)ああ。
僕は大丈夫だ。
(敦也)嫁もくるしな。
(清助)入道!
(富子)嫁?
(千香)それは私です。
(富子)何!?よりによって洋菓子屋のじゃじゃ馬を。
あたしゃ絶対に許さない。
(清助)僕は千香と一緒に店守る。
(敦也)よっ!
(清助)だからさ母ちゃんはずっと父ちゃんのそばにいてやってくれよ。
なっ?
(千香)私清ちゃんと2人で新しい和菓子作りに精を出します。
母ちゃん。
頑張ります。
(敦也)よっ!あんたに母ちゃんと言われる筋合いはない。
離れろ。
(敦也)おめでとう。
おめでとう。
(清助・千香)母ちゃん。
(カッキー)ただいまただいまただいま!
(一同)カッキー。
ああ。
おかえり。
おかえり。
(カッキー)皆さん。
お変わりない?色々あったから変わりまくりだよ。
珍しいね。
涼君がビール飲むなんて。
(涼)バイク置いてきたから。
フッ。
で話って?
(涼)うん。
うん。
俺さキリコさんとあんなことになるまで毎晩毎晩母さんの夢ばっか見てた。
顔なんか分かんない。
のっぺらぼう。
でも優しい声で俺の名前呼んでくれてた。
(涼)それがさ最近は夢にも出てこなくなって文字通りのっぺらぼう。
見る夢といったら…。
(涼)キリコさん。
あなたの…。
あなたの…。
「魂は優しき仮面により花のにおいを嗅ぎながら若い私の恋人は心のうちにいかなる秘密を燃やすのか?」ポオル・ヴァレリィ。
私は私のせいで自らの命を絶ってしまったあなたのお母さんの親友だよ。
私はあんたが大人になるまでしっかり見届けなきゃなんない。
それがあんたのお母さんとの約束。
私はただそれだけの女。
ただそれだけの存在。
キリコさん…。
涼君。
あんた自分の居場所しっかりつかみ取りなさい。
いつかキリコさん言ったよね?「若者は自分の居場所を探しに旅に出る」って。
うん。
それには続きがあるの。
聞きたい?うん。
「若者は自分の居場所を探しに旅に出る」「だが居場所を捨ててもう一度旅に出る大人もいる」「本当の夢を見つけるために」誰の言葉?さあ?誰かしら?あした長距離便じゃなかったっけ?えっ?ああ。
うん。
早く帰って寝た方がいいよ。
そうだね。
おやすみ。
おやすみ。
・
(ドアの開く音)
(涼)おやすみなさい。
うん。
あっ。
涼君。
いい夢見なよ。
カッキー。
(カッキー)はい。
久々の銭湯どうよ?
(カッキー)気持ちよかった。
やっぱり私は日本人なんだなって実感しましたよ。
(カッキー)それとね千香ちゃんと清助さんが結婚するってもうすっかり噂になってて。
私も色々聞かれたりして。
すぐに井戸端会議に参加するのも日本人。
カッキー。
はい。
新しいビール。
私も飲もっかな。
どうぞどうぞ。
自腹でね。
はい。
(カッキー)そっか。
大変だったんですね。
今日一日。
大変だったのは今日一日だけじゃないよ。
昨日もおとといもその前の日も大変だった。
私のいなかった1週間。
ううん。
過去。
私の過去。
未来もかな?キリコさん?ねえ?私の座右の銘っちゅうの特別にカッキーに教えてあげよっか?ええ。
ぜひ。
「白だ黒だとケンカはおよし。
白という字も墨で書く」名もない市井の人が作った江戸時代の都々逸。
「白だ黒だとケンカはおよし。
白という字も墨で書く」・
(足音)「消える。
店譲る。
キリコ」・
(涼)カッキー。
キリコさんは?
(涼)起きたらブルゾンのポケットに。
「ためてたおさい銭。
好きに使いな。
涼君の天敵より」
(涼)あの人きっともう…。
(カッキー)そうね。
戻ってこない。
(カッキー)「あ」
(カッキー)「り」
(カッキー)「が」
(カッキー)「と」
(カッキー)「う」キリコさん。
(伝助)キリコは昭和堂を出ていった。
亡くなった親友との約束を果たして新しい人生を歩きだしたんだ。
若者は自分の居場所を探しに旅に出る。
だが居場所を捨ててもう一度旅に出る大人もいる。
ホントの夢を見つけるためにな。
キリコは旅をしてどんな夢を見つけるんだろうな?それじゃあ俺もそろそろ行くわ。
じゃあな。
2015/09/25(金) 13:25〜13:55
関西テレビ1
[終]癒し屋キリコの約束 #40[字][デ]【もう一度旅に出る大人】
ついに最終週!キリコ(遼河はるひ)の店にサラリーマン風男性・谷下田(ドランクドラゴン・塚地武雅)やナゾの女性・小島(南海キャンディーズ・山崎静代)らが続々登場!
詳細情報
番組内容
谷下田(ドランクドラゴン・塚地武雅)は、前の勤務先で自分をリストラ対象にした妙子(佐藤みゆき)に怒りをぶつける。谷下田の言うことを大人しく聞く妙子。しかし実は、これまでコストカッターとしてリストラを進めていた彼女もまた、後輩に足元をすくわれ、自身がリストラされてしまっていたのだった。
番組内容2
キリコ(遼河はるひ)はふたりを始め、その場にいる癒し屋の仲間たちに対して、自分が純喫茶・昭和堂に初めてやって来た日のことを語り始める。女子刑務所での勤務医時代、生涯の親友である涼(戸塚祥太)の母親を死に追いやってしまったと苦しんでいたこと、そんな中、吸い寄せられるようにして入った昭和堂で、前のオーナーから励まされ、救われたこと…。
番組内容3
なぜ人を傷つけてまでキリコは悩んだ人を癒そうとするのか、キリコが“癒し屋”になった理由とは?さらに、時には金に汚いと思われるまで、がめつく貯め込んだお賽銭の使い道とは…!?
出演者
有村霧子:遼河はるひ
柿崎照美:前田亜季
上山 涼:戸塚祥太(A.B.C−Z)
小出清助:長谷川朝晴
都幾川敦也:小林正寛
キララ:中山来未
本城 栞:吉原茉依香
小笠原千香:月船さらら ほか
スタッフ
【原作】
森沢明夫『癒し屋キリコの約束』(幻冬舎文庫)
【脚本】
佐伯俊道
【演出】
星田良子
【プロデュース】
市野直親(東海テレビ)
高橋萬彦(共同テレビ)
【音楽】
森英治
【主題歌】
「Thank You For The Music」ラストヒロイン(中山来未)(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
【制作・著作】
共同テレビ
【制作】
東海テレビ
ご案内
【公式サイトURL】
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【昼ドラ公式ツイッターアカウント】
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ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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