(花村乃里子)
最近車内で乗客同士のトラブルが増えている
そんな報告を受け私達がパトロールを強化していた矢先の出来事だった
かったるくて付き合ってられないの。
だから勝手にフケてきちゃった。
(井口勲)君電車の中は通話禁止だよ。
うるさいなぁ。
放っといてよ。
ううん何でもない。
っていうか今どこ?私も行くからさ。
ねえ君迷惑だから次の駅で降りてから話せよ。
なっ?ちょっと何すんのよ!?ちょっとみんな聞いて!この人痴漢だよ痴漢!痴漢!痴漢!痴漢だよ痴漢!痴漢!
(女子高生)触ったじゃんか。
キモい手つきでよ。
(井口)何をバカな…。
デタラメ言うな!
(久我達也)ちょっといい加減にしてくださいよ。
(望月春樹)今から調書を作りますから冷静に…。
(倉田剛)おいおい…一体何の真似だ?あっ課長。
構内をパトロールしてたらこの2人がホームでもめてまして…。
聞いてよおじさん。
こいつ電車の中で私の胸触ったんだよ。
嘘ですよ。
彼女に携帯を注意したら逆ギレして痴漢だって騒ぎ出したんです。
まあまあ2人共落ち着いて。
今からゆっくり話聞きますから。
さあさあ座って。
ねっ座って。
落ち着いて。
(三崎真弓)ただいま!何かあったの?廊下まで声が聞こえてますよ。
乃里ちゃんじゃない!井口君…!いいところで会ったよ。
君ならきっと僕の言うこと信じてくれるよね?花村君知り合いなのか?ええまあ…。
一体どうしたの?ああ…ちょっとした行き違いなんだよ。
まず君から説明しろよな。
一から十まで詳しく。
本当のことを話してくれるわよね?もういい!私帰る!おいおい…お前失敬だな。
勝ち目がないと読んだんでしょう。
じゃあ結構ですよ。
あっ…。
ふふ…。
お陰で助かったよ。
乃里ちゃんがいてくれなければとんでもない濡れ衣を着せられるところだった。
それにしてもしばらくぶりね。
もう10年になる?石橋教授の還暦祝いを兼ねた同窓会以来だからもっとになるかも…。
乃里ちゃん全然変わらないね。
井口君だって。
今も同じ出版社に勤めてるの?いや。
5年前に独立して仲間と経済雑誌を創刊してね…。
すごい。
一国一城の主じゃない。
それがさあっという間に倒産しちゃってさ。
今じゃフリーの経営コンサルタント。
まあ独り身だから何とか食えてるけどね。
結婚しなかったの?うん…どうも女性は苦手でね。
昔乃里ちゃんにふられた後遺症かな。
あらそんなことあったかしら。
ふふふ…。
そのうち食事でもしながらゆっくり話そうよ。
うん。
それじゃあね。
ありがとう。
再会の約束はしたがまさか次の日にそれも殺人事件絡みで顔を合わせることになるとは思いもよらなかった
(電話)はい鉄道捜査隊。
わかりました。
ただちに急行します。
おはようございます。
主任早いっすねぇ。
井の原公園近くの線路際で女性の遺体発見。
行くわよ!はい…はいはい!ご苦労さまです。
鉄道捜査隊の花村です。
久我です。
(森本警部)杉並南署の森本です。
どうも。
遺体はここの小川のところで発見されました。
事故ですか?いや我々も初めはそう思ったんですが…。
ちょっとこれを見てください。
絞殺…。
凶器はひも状のもの。
死体の硬直状態から見て死亡推定時刻は昨夜の9時から11時。
あれ?靴がありませんね。
それとバッグも。
今捜させます。
つまり他の場所で殺されてここに遺棄された可能性が高いということですね。
(小林刑事)警部ダメです。
靴もバッグもみつかりません。
ああそれはいい。
それよりガイシャの身元だ。
手分けして付近を聞き込め。
(2人)はい!
(パトカーのサイレン)
被害者の身元はほどなくわかった
現場近くに住む会社員橋爪亜希さん28歳
うわっすげぇなこのマンションの景色!俺の部屋なんかあれですよ。
窓開けたら壁がもうすぐあるって感じですよ。
彼女一人暮らしだったわよね?そうっすね。
来客ありですね…。
凶器はこれで決まりだな。
犯行現場はここということになるな。
顔見知りの犯行…。
男女関係のもつれかも。
警部。
うん?ガイシャのバッグです。
おっ。
現金は手付かずだな…。
被害者は先週山形へ行ったみたいですね。
ガイシャは友達少ないのかな。
ここ1週間で1回だけですよ。
電話してるの。
1回だけ?はい。
ええと井口勲って男に…。
井口勲…?井口!?その男の名刺がここに。
あれ?この顔…。
昨日女子高生に言いがかりつけられてた主任の友達じゃないすか?井口君…。
その日のうちに井口君は重要参考人として呼び出され事情聴取されることになった
(森本)あんた橋爪亜希という女を知ってるね?橋爪亜希…?ええ知ってますけどあの人が何か?殺されたよ。
首を絞められてね。
そんな…まさか!彼女の部屋からあんたの名刺が出てきた。
携帯電話にはあんたの写真が大事そうに保存されていた。
だから僕が犯人だとでも…?いやそれは違う。
違いますよ。
僕は関係ない。
しらばっくれても無駄だ。
あんたが殺ったんだろうこの女を!
(井口)誰です?これ。
何?まさかこれが橋爪さんだって言うんじゃ…。
いや違いますよ。
これはあの人じゃない。
何をバカな…。
ふざけたことを言うんじゃない!この写真の女性は別の人だってこと?そう。
そうなんだ。
僕が知ってる橋爪亜希さんはこんな顔じゃない。
ヘアスタイルも違うし。
本当だよ。
乃里ちゃん信じてくれよ!どうでしょう。
写真だけでは不確かですから直接遺体を確認してもらっては。
どうだね?やっぱり違います。
この人は僕が旅先で会った橋爪亜希さんではありません。
旅先で会ったってどういうこと?実は先週の木曜日講演の仕事で山形に行ったんですが…。
(井口の声)翌日の金曜日は予定がなかったので観光名所の山寺を見て帰ることにしたんです。
(井口の声)駅を出たところで景色に見とれていたら…。
きれいですねぇ。
あの一番上までどのくらいかかるんでしょうね?
(井口の声)それがきっかけで一緒に奥の院まで上ることになりました。
あの…名前何て呼んでいいか…。
ああ…。
僕経営コンサルタントやってます井口勲っていいます。
(井口の声)名刺を渡したのはその時です。
彼女は自分の名前は橋爪亜希で東京の人材派遣会社に勤めていると言っていました。
大丈夫?ええ。
もうちょっと…。
おっ!こっちこっち!こっちですか?すごいよ!見てみて。
えっ?うわぁすごいな〜!きれいですね。
(井口)写真撮ろうよ。
いくよ〜いくよ。
(カメラのシャッター音)
(乃里子の声)その後はどうしたの?
(井口の声)まだたっぷり時間があったから山形に戻って市内観光を…。
それから早めの夕食をとって2人で一緒に新幹線で東京へ戻ってきたんだ。
それだけだよ。
彼女との関係は。
お互い恋愛感情のようなものはなかったのか?それはないですね。
少なくとも僕のほうには。
昨日のお昼頃彼女から電話があったはずなんだがどんな用件だったのかね?それは…。
井口君正直に言って。
彼女相談したいことがあるから今夜部屋に来てって…。
本人の声だったのか?ええ。
たぶん…。
それで行ったの?行かないよ。
雑誌の原稿の締め切りが迫ってたんで悪いけどって断ったんだ。
原稿の締め切りね…。
何だか都合のいい言い訳にしか聞こえないんだけどな。
刑事さん…。
本当はあんた彼女のマンションへ行ったんじゃないのか?ねえこれ見てよ。
(橋爪亜希)大きい!大きいよねこれ。
ねえ。
いろんなのがあるんだ。
へえ〜。
(森本の声)そして話を聞くふりをしながら隙を見て彼女をベッドに連れ込もうとした。
(井口の声)違う!僕はそんなことはしてない!大体僕が知っている橋爪亜希さんは別の人だって…。
まったく何回繰り返したらわかってくれるんですか!井口君落ち着いて。
だったら何かそれを証明できるものはない?証明できるもの…?そうだ…携帯!携帯がどうしたの?カメラの画像を見てよ。
そこに僕が山寺で写してやった彼女自身の写真が残っているはずだから。
はい。
ないわ。
画像は消えてしまったというのか。
井口君は犯人が削除したんじゃないかと。
本当にいるんですかねぇ?そんな女。
井口さんの作り話じゃないんですか?でもそれにしてはひねりすぎだし。
かといって事実だという裏付けもないでしょ…。
それともう1つ引っかかることが…。
なぜ死体は動かされたかだな?はい。
ここが被害者のマンション。
ここが線路下の小川の死体遺棄現場です。
2点間の距離は…およそ150メートルですね。
夜になると人通りが少なくなる住宅地なんですけど死体を運ぶとなると目撃される危険性は十分あります。
なのにホシは死体を移動させている…。
確かに意図不明だなこれは。
(手塚真理絵)皆さん随分お久しぶりねぇ。
うふふふ…。
はいこれは花村さん。
こっちは久我さん。
いつも課長にお願いしてるんですけどね連れてってくださいって。
でも頭っから無視されちゃうんですよ。
あらどうして?決まってるじゃないですか。
課長は1人で来たいんですよ。
ママに惚れてるから。
まあ!えっそうなの?知らなかったわ。
ママ変わってますよね。
おっとりしてるというか育ちがいいというか…。
そこが魅力的なんですか?課長。
課長?うん?何か言ったか?ちょっと…聞いてなかったんですか?悪い悪い。
で井口という君の友達だが人に恨みを買うようなことあったのか?いいえ。
そんなことは…。
ただ昔から正義感が強い人でしたから逆恨みされることはあるかもしれません。
逆恨みか…。
あるいはその線かもしれんな。
まさか誰かが犯人に仕立て上げようとしてるっていうんじゃ…。
うん…その可能性は十分あるな。
よし。
徹底的に調べてみよう。
はい。
手始めに被害者の人間関係から洗ってみます。
被害者が勤めていたのはスタッフSAWADAという会社
この会社はイベント企画をはじめパーティーのコンパニオンや司会者選挙のうぐいす嬢などの派遣を業務としている
(沢田文子)どうもお待たせ。
社長の沢田です。
お忙しいところすみません。
鉄道捜査隊の花村です。
三崎です。
ご用件は橋爪亜希のことね?はい。
突然のことで驚かれたでしょう。
正直言ってかなりショックだわ。
昨日から仕事が手につかないくらい…。
殺害された原因について何かお心当たりはありませんか?いいえ全然。
見当もつかないわ。
橋爪さんはイベントマネージャーという役職に就いていたそうですけど最近何かトラブルに巻き込まれていたような様子は…。
別に何もなかったわよ。
あの橋爪さんはどういう経路でこの会社に?あの子はね私の死んだ夫の姉の娘なの。
つまり縁故採用ってことね。
かなり贅沢な暮らしをしていたようですけどお給料はどれくらい?はっきりした数字は覚えてないけどボーナス込みで1200〜1300万ってところかしら。
えっ!?そんなに…?イベントマネージャーというのはそんなに重要な仕事なんですか?仕事がどうこういうよりあの子は身内だったから…。
まあ年齢にしてみれば確かに高給すぎたかもね。
他になければこの後が詰まってますので。
あっもう1つだけ。
橋爪さんは先週山形へ行きませんでしたか?あらよくご存じね。
ええ行きましたよ出張で。
その際観光名所の山寺に立ち寄ったということは?さあそこまでは私も…。
一緒に山形に行った上司にでも訊いてみたら?あの…。
(真弓)なんてタカビーなおばさん。
(中本祐次)じゃあ後はよろしく頼みます。
お疲れさま。
(一同)お疲れさまでした。
営業部長の中本さんですね?ええ。
ああ残念だったね。
もう時間切れなんだよ。
別に面接受けに来たわけじゃないわ。
私達こういう者です。
ええ確かに先週の木曜日橋爪君と一緒に山形に出張しましたが。
どういうお仕事で?今週行われる予定のパーティーの打ち合わせです。
それ以上のことは企業秘密なので。
翌日の金曜日もお2人ご一緒に行動を?いえ別行動です。
私は午前中の新幹線で帰りましたが橋爪君はどこかへ寄り道したみたいで…。
山寺へ行くと言ってませんでした?いえ行き先は知りません。
何しろ私が朝起きた時には勝手にチェックアウトしていなくなってたんですから。
よくあったんですか?そういうこと。
まあね。
社長の身内だから悪口は言いたくないけど無断欠勤は日常茶飯事。
アポは平気でドタキャンするし…。
とにかく組織には向かない子でしたよ。
職場での橋爪亜希の評判はあまり芳しくないのか。
ええ。
直属の上司が言ってるぐらいですから。
営業部長の中本祐次か…。
どういう経歴なんだ?この男は。
はい。
もとは大手広告代理店の営業マンだったそうです。
その手腕を買われて沢田社長にヘッドハンティングされたとか…。
でもそれは表向きの話で実は前の職場で営業費を使い込んでその穴埋めを沢田社長にしてもらったらしいです。
うん…この被害者の橋爪亜希の交友関係は洗ってあるのか?もちろん。
彼女は相当奔放な性格だったようですね。
奔放な性格?はっきり言えば男好き。
いつも複数の彼氏がいたそうです。
最近の相手はタレントの若杉慶と会社の同僚の木村寛。
うん…こんなタレント俺見たことないな。
まあタレントって言ってもピンキリみたいですから。
キャー!キャー!キャー!
(監督)カット!カットカットカット!いやぁお疲れちゃん。
お疲れちゃん。
あっよいしょ。
なかなかよかったよ。
大変ですね。
俳優さんって毎日こんなことしてるの?
(若杉慶)あんた達は?ちょっとお話伺いたいんですけど。
彼女のプライベートなんて俺ほとんど知らないよ。
でも付き合ってたんでしょ?ああ。
ゴージャスにね。
ゴージャス?ああ勘定はあっち持ちだ。
そう。
プラチナカードで。
最後に会われたのはいつですか?うーん…1か月ぐらい前かな。
1か月…。
結構ご無沙汰ですよね?あいつむらっ気のある女でさ俺と寝たくなった時だけ思い出したように電話かけてくるんだよ。
まあ単なる遊び相手ですね。
でこの木村って男はどうなんだ?
(望月)こっちは若杉と正反対の絵に描いたようなまじめ社員でして…。
寛これもお願い。
(木村寛)そのかわり今晩いいでしょう?悪いけど約束が…。
(望月の声)同僚の話によれば亜希は語学もコンピューターもからっきしで大事な仕事は木村の手を借りなければできなかったそうです。
うん…つまり自分の体と引き換えに木村の能力を利用していたってわけだな。
それで年収1000万以上だなんてありえない!2人のアリバイは曖昧ですがもう少し詳しく調べますか?いやいやそれより問題なのはな…。
これは井口勲の証言をもとに作った似顔絵だが彼が本当に山寺で出会ったのはこの女なのか?それとも…被害者の橋爪亜希なのか…。
それを確かめるためにはとりあえず現地に行く必要がある。
そういうことですね?よしいいだろう。
翌日私と久我君は山形新幹線で東京を出発
JR山形駅で仙山線電車に乗り換え…
新緑が美しい景色の中を走ること20分あまり
目的地山寺駅に到着した
うわぁすごっ!よくあんなところに造ったなぁ。
あれが山寺ね。
はい…。
久我君。
遊びに来たんじゃないのよ。
わかってますってわかってます。
山寺の名前で知られている宝珠山立石寺は山全体が霊場になっていて県内屈指の観光名所である
この方達なんですけど…。
先週の金曜日なんですけど…。
さあ…。
この季節お客さんが多いですからね。
申し訳ございません。
あっすいません!あのですねこのどちらかの女性を見たことってありませんか?いやあいにくですけども…。
ちょっとわかりませんね。
ありがとうございました。
いやいやお役に立てませんで。
いえいえどうも。
ありがとうございます。
主任どうでした?ダメ。
上まで上ってみなくちゃならないわね。
じゃあ上っちゃいましょうよ。
急な石段1000段以上あるのよ。
問題ないですよ。
行きましょう。
「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」…。
ほう…あれが有名な芭蕉の俳句ですね。
そろそろ行きましょうか。
もうですか!?ひゃー!わかりましたよ。
ああもう…。
あのこういう者ですが先週の金曜日観光でこの山寺にこのぐらいの時間に来てたこの方に見覚えはありませんか?いや覚えてませんね。
すいません。
いいえ。
こちらこそお仕事中すいませんでした。
やっと追いついた。
主任ちょっと休憩しましょうよ。
悪いけどまだ先があるのよ。
はい…。
はい。
タフですねぇホントに。
ちょっと…走るの!?主任ちょっと待ってくださいよもう…。
すばらしい景色ね。
久我君見ないの?はあ〜。
骨折り損のくたびれもうけ。
主任結局何の収穫もありませんでしたね。
いいえまだ望みはあるわ。
えっ?井口君達はこの後山形市内の名所旧跡を回ったの。
そっちで目撃者がいるかもしれないわ。
ああ…なるほど。
じゃあ次の電車で山形へ戻りましょう。
次の電車!?だって主任あと30分しかありませんよ?急いで行けば間に合うわ。
いやもう…。
早く早く!ああもうわかりました。
再び仙山線で山形市に戻った私達は井口君が市内観光をした場所をたどってみた
さあ覚えてませんねぇ。
そうですか。
ありがとうございました。
いいえどういたしまして。
見たことないですね。
そうですか。
お仕事中すみません。
いえ。
市内観光の後に井口君とその女性はこのお店で早めの夕食を食べたそうだ
ちょうど今頃の時間で何でも土蔵のお部屋だったそうなんですけど…。
ああそうですか。
じゃあうちの係の者を呼びますのでこちらのほうでどうぞお待ちください。
恐れ入ります。
はい。
主任…俺腹減ったんですけど。
えっ?さっきお昼食べたじゃない。
でも山寺で過激な運動しちゃったんで…。
何か注文してもいいですよね?しょうがないわね。
あっすいませんメニューください。
(佐藤晴美)失礼します。
何かお訊きになりたいことがあるとか…。
ええ。
早速ですけどこの人に見覚えはありませんか?あの…先週の金曜日の午後5時ちょっと前にここで飯を食ってたはずなんですけどね。
ああそういえば…。
思い出しました?はい。
確かにいらっしゃいました。
その時女性が一緒だったはずですけどこの人でした?それともこの人?どっち…?こっち?こっち?頼むから思い出してください。
あなたのひと言で彼の運命が決まるんです。
あの…。
思い出しました?すいません。
あの時は忙しかったので…。
失礼します。
お待たせしました。
来た!待ってました!僕です僕です!うわうまそう主任!いも煮ですよ山形のいも煮。
私達はその日井口君が出張で泊まったという上山温泉日本の宿古窯に宿泊することにした
いらっしゃいませ。
お荷物お持ちいたします。
あっ結構です。
かしこまりました。
(館内の音楽)あれ…?お待たせ。
主任あれを見てください。
(文子)チェックインだけお願い。
(中本)かしこまりました。
さあさあさあさあじゃあみんな…。
東京から出稼ぎですかね?中本部長が今週パーティーがあると言ってたけどこれだったのね。
こんにちは。
刑事さん…。
こんな遠くまでお仕事でいらっしゃるなんてよっぽど大切なクライアントなんでしょうね。
ええまあ…。
それより刑事さんはどうして?出張です。
橋爪亜希さんが殺害された事件の関連で。
でもあの事件は経営コンサルタントの井口っていう人が犯人だとか。
よくご存じですね。
参考人の名前は発表されてないのに。
そうなんですか?私はマスコミの方に伺ったんですけど…。
ごめんなさい。
これからミーティングがあるので。
何か隠してる感じですねあの女社長さん。
当分目を離すな。
(2人)はい!
(電話)はいもしもし井口ですが。
(女の声)「あなた警察に疑われてるんでしょ?」君誰…?私あなたが山形で一緒だった女が誰だか知ってるんですよ。
何だって?「ふふ…ふふふ…ふふふふ…」ああ山形の酒はうまい!もう料理も最高!ホントによく食べるわね。
さっきも食べたのに。
いやあれ別腹ですよ。
ほんのおやつっすから。
うまい!お待たせいたしました。
どうぞ。
今日大きなパーティーがあるようですね?はい。
関口先生を励ます会です。
関口先生って…?地元県会議員の関口文武先生。
今度国会議員にも立候補なされるそうですよ。
ああなるほど。
資金集めね…。
でも東京からコンパニオンを呼んでるなんて豪勢ですよね。
お姉さんがなさっていることですから。
お姉さん…。
もしかしてスタッフSAWADAの沢田社長のことですか?ええ。
あの方と関口先生はご姉弟なんですよ。
(関口文武)あっ先生ありがとうございます。
どうもありがとうございます。
ありがとうございます。
よかった…。
すごい汗よ。
水分取りすぎよ。
あの2人まるで夫婦みたいですね。
奥さんいないのかしら。
あの関口先生の奥さんってどこですか?あちらにいらっしゃいますが。
あの受付の着物の方?はいさようでございますが。
ありがとうございます。
行きましょう。
すいません。
ちょっとよろしいですか?
(関口君子)はい。
ちょっとお話を聞かせていただけますか?東京の刑事さんが私に何か?ご主人のお姉さんのご親戚で橋爪亜希さんという女性をご存じですか?ええ。
もちろん存じてます。
先週もこのホテルでお会いしましたから。
今日のパーティーの打ち合わせですね?その時営業部長の中本さんもご一緒だったはずですが…。
ええ。
仕事のお話はほとんど中本さんがなさいました。
次の日亜希さんがどこへ行かれたか知りませんか?次の日ですか?確かお昼頃東京へ戻られたと思います。
中本さんとご一緒に。
何しろ私が朝起きた時には勝手にチェックアウトしていなくなってたんですから。
あの今のお話ですけど…。
すいませんが私そろそろ戻らないといけませんので。
奥さんなのに随分控えめな人ですね。
何か人前に出たくない事情があるのかも。
何だか妙なファミリーだな…。
(電話)はいはいちょっと待って。
はい。
たった今井口から連絡があった。
正体不明の女に電話で金をゆすられたそうだ。
お金を?山形で一緒だった女の正体を教えてほしければ300万出せと言ってきたらしい。
取引は明日午前11時15分。
「山形鉄道赤湯駅のホーム」女性は目印に黒い帽子をかぶってくるそうだ。
でも井口君はまだ容疑が晴れてないから山形へ行かすわけにはいかない。
代わりに君達が行ってくれって…。
何者なんですかね?その女。
さあ井口君も見当がつかないって言ってるみたい。
でも明日現場を押さえればわかるんですけどね。
ところであの家族のことで何かわかった?はい。
関口姉弟の家は昔からの資産家で父親も県会議員をしてたらしいんです。
県会議員を…。
母親は早くに病死。
代わりに文子が弟の文武を育て上げたって。
地元ではかなりの美談らしいです。
奥さんが裏方に徹しているのは義理のお義姉さんに遠慮してるから?いやあの奥さんには表に出られない理由があるんです。
どういうこと?彼女は交通事故を起こしたんですよ。
無謀運転で。
5年前夜の県道だったそうです。
キャー!あっ!運転していた奥さんともう1人の同乗者は無事だったんですがはねられた女性は即死だったそうです。
であの奥さんは交通刑務所へ?いえ。
旦那が雇った敏腕弁護士のお陰で示談が成立し実刑は免れたようです。
だけど世間体もあって今でも表立った席は控えてるみたいですね。
そういえば亜希さんがスタッフSAWADAに入社したのも5年前。
これって単なる偶然かしら?
翌朝私達は赤湯駅へ向かった
井口君にゆすりの電話をかけた女性の身柄を確保して詳しい事情を聞くためである
JR赤湯駅と線路を挟んで反対側にあるこのかわいい駅が山形鉄道フラワー長井線の赤湯駅である
フラワー長井線は全長30.5キロ
赤湯駅から終点の荒砥駅まで1時間弱で結んでいる
11時14分の列車があります。
それに乗ってくるんじゃないですか?私は1両目久我君は2両目。
いいわね?はい。
(アナウンス)「間もなく電車がまいります」「危ないですから白線の内側へお下がりください」
(警笛)
(倉田の声)女性は目印に黒い帽子をかぶってくるそうだ。
(車掌)ああ…!
(車掌)どうかしましたか?お客さん!お客さん!警察です。
警察?どうしました?そっそれが…!もしもし?この人は…。
すいません。
あの時は忙しかったので…。
毒殺ですか?
(三浦刑事)はい。
それも即効性の…。
それをジュースか何かに混ぜて?いや…これを見てください。
これ鍼灸用の…。
(三浦)被害者の座席の下に落ちていたものです。
先端からは被害者の死因と同じ毒物が検出されました。
つまり犯人はこの針を被害者の体に突き刺して?
(監察医)刺されたのは恐らくここですね。
毒物が血液に入ってから15分ないし20分で全身がマヒ。
その後死に至ったもようです。
どうやったらこんなところに針を刺すことが?そうね…。
あら?土ですか?ええ。
どこでついたのかしら?
毒殺された佐藤晴美の家は終着駅荒砥の近くにあった
彼女はいつも通勤のために荒砥駅10時21分発の列車を利用していたという
私達は翌日同じ時刻のフラワー長井線に乗ってみることにした
事件の起きた電車に乗務していた車掌さんに車内の状況を聞くためである
この窓内側からは開閉できますが外からはできない仕組みですね?はい。
全車両そうなっています。
俺達が被害者を発見した時窓は閉まっていました。
…となると犯人は車内にいたってことになるのかなぁ?まさか。
あの時お客さんはほとんど地元の方で怪しい人は見かけませんでしたよ。
被害者の佐藤晴美さんとも顔見知りだったんですか?ええ。
あの人は高校生の頃から利用されてましたから。
昨日の朝何か変わった様子は?いつもと同じでしたよ。
この先のあやめ公園駅あたりで顔が合った時も…。
おはようございます。
おはようございます。
いつもと変わりなくあいさつしてくれましたね。
少なくともその時までは生きてたってことですよね?ええ。
それは間違いありません。
その後彼女の姿を見たのは?JRと接続する今泉駅を発車した直後です。
あっそういえばあの時…。
あの人は窓にもたれてぐったりしてました。
ええとあやめ公園と今泉の間にある駅は…。
長井南長井時庭…この3つです。
毒が効き目を表すまで15分から20分。
今泉までそれだけの時間がかかる駅といえば?この長井駅です。
つまり彼女が毒針で刺されたのはこの長井駅と考えていいんじゃないですかね?
問題の上り列車は10時42分にこの長井駅に到着
10時43分に発車している
その1分の間に犯行が行われた可能性が高い
もしかしたら…。
あのカメラが何かを見ていたかもしれないわ。
押切さん。
佐藤晴美が殺された列車ってこれですよね?
(押切)これだな。
(ため息)どうです?何かわかりましたか?いや何も…。
ああ…。
あっお茶でもどうぞ。
まあまあまあ…。
すいません。
ありがとうございました。
ありがとうございました。
結局何の収穫もなく私達は東京へ帰った
(井口)乃里ちゃんここ!公園で話そう。
山形の漬物屋?覚えてるでしょ?あなたが問題の女性と行ったお店。
もちろん。
だけどあそこの従業員が僕をゆするなんて…。
一体どんな奴?佐藤晴美さんていうんだけど…。
ああ思い出した。
そういえばあの時…。
あれ?英子ちゃんじゃない?えっ?川上英子ちゃんでしょ?違います。
私そんな名前じゃ…。
人違いです。
そうですか。
それっきり忘れてたんだけど…。
じゃあこの女が言ったことは正しかったんだ。
私井口君の写真を持って聞き込みに行ったの。
それで彼女は井口君に殺人の容疑がかかっていることを知りお金をゆすることを思いついたんだわ。
とんでもない女だなまったく。
1つわからないことが…。
どうして彼女井口君の電話番号を知ってたのかしら?僕は雑誌の取材で前にもあの店へ行ったことあるからね。
その晴美って女その時の名刺持ってたんじゃないかな。
彼女井口君の連れの女性を英子って呼んだのね?うん。
確か川上英子…。
それが山寺の駅で僕に声かけてきた女の本名に間違いないよ。
その人誰かに頼まれてあなたをハメようとしたらしいけど心当たりはない?ないよ。
だって人に恨まれるような真似してないもん。
ちょっと失礼。
私は早速課長に連絡して川上英子という名前の女性を捜してもらうことにした
川上英子27歳。
本庁と山形県警の調査によると佐藤晴美の高校の後輩で東京の短大を卒業後スタッフSAWADAにコンパニオン登録したそうだ。
またスタッフSAWADAですか。
(真弓)この事件の裏には沢田社長と中本部長がいるみたいね。
居どころはわかっているんですか?残念ながらまだつかめていない。
スタッフSAWADAも半年前に辞めたことになってる。
怪しいですねぇ。
連中がかくまってるんじゃないですか?もう締め上げてみますか?あの2人。
いやそいつはまずいんだ。
下手をするとこの佐藤晴美の二の舞だ。
口を封じられる恐れがある。
しばらく内偵を続けるんだ。
(一同)はい。
だから亜希のことなら何も知らないって言ったはずですよ。
でもどうして破格の給料をもらっていたかの見当はつきませんか?おばさんが社長だからじゃないの。
それだけじゃないと思うけどね…。
他に何が?おばさんの弱味を握っていたとか。
ははは…。
あなた彼女が交通事故に遭ったって話聞いたことは?そういえばあいつ5年くらい前に田舎で事故に巻き込まれたことがあるって言ってたな。
マジ?マジで。
ちょっと後遺症もあって仕事をサボる口実にしてたみたいだけどね。
じゃあその時の同乗者は橋爪亜希だったのか。
はい。
念のために事故の記録を取り寄せたところやっぱり間違いありませんでした。
うーん…。
その頃彼女は何をやってたんだ?関口議員の事務所でアルバイトを…。
事故から半年後にスタッフSAWADAに就職したようです。
うーん…。
さあ倉田さんの大好きな揚げだし豆腐です。
ありがとうありがとう。
あれ?あっ…。
まあ!ごめんなさいねぇ。
ああ器が汚れてたんだわ。
大丈夫大丈夫。
もう本当ごめんなさいね。
はいはい。
いらっしゃーい!ママこの人私のお友達。
まあ!いい男。
ごめんね遅くなっちゃって。
ううん。
急に呼び出してごめんなさい。
さあさあどうぞ座って。
はい。
あっコップ…。
はいどうぞ。
まずは一杯。
ありがとうございます。
その事故のことなら僕も聞いてますよ。
仕事で山形に何度も行ってるうちにいろんな情報が耳に入ってきますからね。
あっそういえば最近も妙な噂を聞きましたよ。
妙な噂?あの事故では運転していたという関口君子と女性の同乗者の他にもう1人車に乗っていた人間がいたらしいっていうんです。
つまり同乗者は2人いたってこと?そう。
しかもそいつは事故の直後に徒歩で現場を立ち去ったらしいんだ。
何でも中年の男で酔っていたのか足取りがフラフラしてたって話だよ。
いやぁ聞き捨てならん話だな!実際に運転していたのはその男かも…。
あの奥さんがかばっているとすれば当然ご主人が…。
だとすると今度の事件にも関係ありそうだな。
課長。
私もう一度山形へ行ってみます。
じゃあ頼んだわよ。
はい。
ごめんくださーい。
刑事さん?どうぞお構いなく。
すぐに失礼しますから。
どうぞ。
すいません。
それで私にお話というのは?5年前に奥さんが起こしたという事故のことなんですが…。
運転していたのは本当に奥さんだったんですか?何のことでしょう?私にはさっぱり…。
あなたは誰かの罪をかぶっているということです。
自ら進んでその人をかばっているのかそれとも強制されたのかはわかりませんが…。
違います!あの事故は私が…。
私が運転して起こしたんです!奥さんどうか本当のことを言ってください。
その時ハンドルを握っていたのはご主人なんでしょう?いいえ主人は関係ありません!あの時運転していたのはこの私…。
ですから一生をかけて罪の償いをするつもりです。
奥さん…。
どうかもうお帰りください。
お話することはもう何もありませんので。
どうかお帰りを…。
じゃあやっぱりあの奥さんは嘘を…?口では否定してるけど間違いないわね。
酔っ払って死亡事故を起こしたとなれば間違いなく交通刑務所行き。
もちろん議員の資格は失う。
だから奥さんに罪を押しつけた。
同じ車に乗っていた橋爪亜希さんも口裏を合わせることに同意したはずよ。
だからこそ彼女は破格な待遇でスタッフSAWADAに雇ってもらえたんだわ。
だけどいくら奥さんでも事故の責任まで引き受けるかしら?彼女にはご主人に逆らえない理由があるのよ。
私ここに来る途中で彼女の幼なじみに話を聞いてきたんだけど…。
(高橋澄江)君ちゃんの実家も大きな果物農家でした。
ところが君ちゃんが東京でお勤めしてた時にお父さんが病気で亡くなって後には農園を拡大するために使った多額の借金が残ったんです。
もしかしてそのお金を貸していたのは…。
関口議員のお父さんでした。
えっ?前から君ちゃんに好意を持っていた文武さんはお父さんば説得して君ちゃんが自分と結婚してくれたら借金を棒引きにするという提案ば。
周りの人は玉の輿だなんてもてはやしてましたけど君ちゃんには当時結婚を約束した恋人がおったんです。
それを思うと彼女がかわいそうで…。
その恋人ってどんな方だったんですか?さあそこまでは私も聞いてませんので…。
借金のカタに結婚ですか…。
まるで時代劇の世界みたいっすね。
ところであなた達のほうは何かわかった?一応川上英子の実家や親戚昔の友達に当たってみたんですが…。
誰も彼もが口をそろえてここ1年以上顔見てないって…。
そう…。
ところがですよ実家の近所を徹底的に聞き込みしたら出たんです。
英子の顔を見たって話がチラホラ。
つまり家族は口止めされてるってこと?フラワー長井線の鮎貝という駅の近くに彼女のお兄さんの家があるんですって。
もしかしたらそこに隠れているのかも…。
明日当たってみるつもりです。
主任はどうします?もちろん付き合うわ。
(電話)もしもし?あっ文武。
どうしたの?えっ?東京から女の刑事が…?君子のところに来てさ5年前の事故のことを根掘り葉掘り聞いていったそうなんだよ。
それで君子は?まさか余計なことしゃべったりしなかっただろうね?うん。
とりあえずうまくごまかしたみたいなんだけどさ。
どうしたらいいんだよ姉ちゃん。
今度俺のところに来たらさ俺どうしていいかわかんないよ。
バカ!男のくせにビクビクするんじゃないの!「あんたと君子の他にあのことを知ってる人間はもう誰もいないんだから」とにかく絶対に口を割るんじゃないよ。
君子にもよーく言っておきなさい。
わかったね!?
(ため息)あの女刑事また山形に?そうなの。
まったくしつこいったらありゃしない。
まずいな。
もし英子に接触したら面倒なことになる。
山形鉄道フラワー長井線と並んで走るかのように一筋の川が流れている
芭蕉の俳句で有名な最上川である
川上英子のお兄さんはその最上川で獲れる鮎を干物に加工する仕事をしているという
じゃあ自分こっち…。
あのすいません。
作業中すいません。
川上和雄さんという方はいらっしゃいますか?
(川上和雄)俺がそうですけど何か用ですかね?実は妹さんを捜してまして…。
ちょっと…!お前らに渡すわけにいかねぇんだよ。
ちょっと待って!何か誤解があるみたい。
私達こういう者ですけど…。
警察…?見せなかったの?すいません。
すいません。
てっきりホストクラブのアンちゃんだと…。
ホストクラブ!?ストーカーみたいにつきまとわれてるって英子が言ってたから…。
なめられたもんだなぁ俺も。
それで英子さんは今どこに?さっき出かけたよ。
誰かに電話で呼び出されて。
確か次の電車で赤湯まで行くって言ってたな。
もしかしたら佐藤晴美を殺した犯人が…。
主任急ぎましょう!
(ノック)
(川上英子)あっ…。
すみませんがこれ開けてもらえませんか?私手が汚れてしまって…。
ああはい…。
お願いします。
やめなさい!あなたは彼女の身柄を確保して!はい!あきらめなさい!もうどこへも逃げられないわよ。
やっぱりあなただったのね。
中本さん。
佐藤晴美を殺した時も同じ手口使ったろう!ちくしょう…何でわかったんだ!缶を開けてもらう口実に使ったその手の汚れ。
それがヒントになったのよ。
あれ?あっ…。
(真理絵)まあ!佐藤晴美さんの手にもつくはずのない泥がついていた。
犯人は何かを渡すふりをして毒針を刺したということだわ。
それに監視カメラに映っている保線区員は1人だけだ。
普通はな保線区員は1人で行動しないんだよ。
当日の記録を調べてもらったらやっぱり長井駅で作業してた保線区員は偽者だってわかるんだよ。
あんた勉強不足なんだよ!中本祐次殺人未遂の現行犯で緊急逮捕します。
私達はとりあえず中本祐次と川上英子を山形県警本部に連行し取り調べを行った
それじゃ橋爪亜希を装って井口さんに接近したことは認めるのね?だからそう言ってるでしょ。
一体何のために…?目的は金か?それもあるけど私亜希が嫌いだったの。
どうして?私と亜希は同じ頃スタッフSAWADAに入社したの。
だけど待遇は全然違った。
あっちは最初から年収1000万以上の管理職候補。
こっちはアルバイトのコンパニオン…。
あの子それを鼻にかけていつも私達を見下して嫌な仕事いっぱいさせられたわ。
橋爪亜希の身代わりになることを依頼したのは沢田社長ね?あの子近頃ますますふしだらになって…。
放っておくと会社のためにもならないわ。
だからきつーくお灸を据えてやろうと思って。
でもどうやって…?うちのライバル会社で経営コンサルタントをやってる井口勲って男がいるの。
すごい嫌な奴だからこの際その男とスキャンダル事件を起こさせてやるの。
細かい筋書きはもうできてるわ。
あとはあなたの気持ち次第…。
協力してくれたらボーナスとして100万円あげるけど…。
(真弓の声)その筋書きの始まりは偶然を装って井口さんに接近することだった。
あの人のあとをつけて山寺へ…。
駅を出たところで声をかけたわ。
あの一番上までどのくらいかかるんでしょうね?
(英子の声)彼私の誘いにうまく引っ掛かって一緒に上まで上ったの。
前もって社長から渡された亜希の携帯で写真も撮ったわ。
私達本当に仲良くなってその後山形の市内観光もしたくらいよ。
で食事に行ったお店で思わぬハプニングがあったでしょ?ええ。
確かにあれは予想外だったわ。
あれ?英子ちゃんじゃない?えっ?川上英子ちゃんでしょ?違います。
私そんな名前じゃ…。
人違いです。
そうですか。
(英子の声)でもその場は何とかごまかして東京に帰って…。
別れ際には井口さんに亜希の住所を教えるのも忘れなかったわ。
それから何日かして…。
井口さん?私亜希です。
急いでご相談したいことがあるので今夜私の部屋に来てもらえますか?じゃあ。
(英子の声)私の役目はそこまでの約束だった。
あとは携帯を社長に返してボーナスの100万が振り込まれるのを待つだけ…。
自分のしたことが橋爪亜希の殺害につながるとは考えなかったの?全然…夢にも思わなかったわ。
だからニュースで見た時は驚いたのなんのって。
だまされたって気分よ。
もう嫌ですこんなことになるって聞いてません!別にだましたわけじゃないのよ。
ただこっちにも都合があって…。
でも大丈夫。
あなたには迷惑かけないから。
冗談じゃないわ!私は殺人の片棒を担がされたんですよ。
下手したら警察に捕まっちゃうじゃないですか!じゃあどうしろっていうの?お金をください。
現金で2000万。
それだけあれば当分外国で暮らせますから。
いいわ2000万円ね。
ただし今すぐは無理。
とりあえずこれを持ってどっかに身を隠しててちょうだい。
お金の用意ができたらこちらから連絡するわ。
今朝そのお金が用意できたって電話があって電車に乗って受け取りに行ったら途中で殺されそうになった…。
私が知ってるのはこれで全部よ。
お願いだから少し休ませて。
次に橋爪亜希さんを殺害した時のもようを話してくれませんか?あの夜…確か9時半頃だったと思いますが私は彼女のマンションへ…。
その30分ほど前に急いで見てもらいたい書類があると電話を入れておいたんです。
1人で寂しく飲んでたとこなの。
付き合ってくれるでしょ?はい。
いやいや…せっかくだけど。
君の意見を聞いてこいって社長が…。
とにかく目を通してくれよ。
へえ…社長が。
珍しいこともあるものね。
なっ何するの!?それじゃあなたは遺体を残して現場をあとにしたと…?ええ。
だから翌日死体が線路際で発見されたと聞いて驚きましたよ。
まさか自分で歩いて行くわけがないでしょうからね。
井口という人に罪をなすりつけようとしたのはどうしてだね?社長に指示されたからですよ。
中本の自白を受けて東京では沢田文子が逮捕された
もういい加減に吐いたらどうだ?あんたが主犯だってことはわかってるんだから。
おい聞いてるのか!?何とか言え!完全黙秘を…?うん…まるで貝のように口を閉ざしているそうだ。
何かしゃべって弟に迷惑がかかるのを恐れているんじゃないでしょうか。
たぶんな。
そこで考えたんだがな沢田文子の泣きどころは弟の文武だ。
例の交通事故の件で文武を追及してみたらどうかな?わかりました。
こちらの協力をお願いしてみましょう。
うん。
頼む。
それじゃいってきます。
お願いします。
あれからいろいろ考えてやっぱり本当のことをお話ししたほうがいいのではと思いまして…。
5年前の事故の真相をお話しくださるのですか?
(君子の声)あの時運転していたのはおっしゃるとおり主人だったんです。
へへへへ…。
(君子の声)主人は出先でお酒をごちそうになって相当酔っていました。
怖い!先生スピード出しすぎ!あなた運転代わりましょう。
うるさい黙ってろ!大丈夫だ!あなた気をつけて!わあーっ!!私はしばらくの間気を失っていたようです。
気がついて外へ出てみると…。
姉ちゃん姉ちゃん…。
そうなんだよ…動かないんだよ。
うん…警察は呼んだよ。
ひょっとしたらさ死んでるかもしれない。
姉ちゃん姉ちゃん…俺どうしたらいいんだよ…。
うん?うん…。
姉ちゃんがかわれって。
もしもし君子ですが…。
(文子)「いい?君子」「その車を運転してたのはあんただからね!」えっ?それはどういう…。
「だから事故を起こしたのはあんたなんだよ!」「警察じゃそう言ってちょうだい」そんな…私にはそんなことは…。
あんたね…文武が酔って事故を起こしたりしたらどうなると思う?議員の資格を失うだけじゃない。
二度と選挙に出れなくなって応援してくれる大勢の人達に迷惑がかかるんだよ。
「昔倒産したあんたの家を助けてやったのは誰だったか覚えてるだろうね?」それを思うと私の頼みが聞けないわけはない。
そうだろう?お義姉様…。
お願いだよ君子!文武を助けてやって!
(パトカーのサイレン)
(君子の声)私は主人の身代わりになってこの5年の間世間をあざむいてきたんです。
やってもいない罪を背負うなんて…。
苦しかったでしょうねさぞ。
ええ。
でもこうして思い切って花村さんに打ち明けることができて気持ちがすっきりしました。
それじゃ私はこれで…。
(携帯メールの受信音)
その時私は疑問を感じた
なぜ君子さんは急に告白する気になったのだろう?
それに今のメールの送り主は…
彼女はまだ何かを隠しているのではないだろうか
(ため息)ああ…。
ありがとう。
(パトカーのサイレン)こんにちは!こんにちは〜!留守かな?おかしいなぁ。
事務所の人は家にいるはずだって…。
居留守かなぁ?やべぇ!あっ!!裏回ろう!
(2人)はいっ!私はここから!裏回って裏!
(2人)はい!こっちですこっちです!ダメだ死んでる。
温かい…。
まだ30分も経ってない。
ここにこんなものが…。
関口文武邸に大至急鑑識回してくれ。
アーモンド臭…青酸カリ…。
関口文武の死は青酸カリによる服毒死と鑑定された
無類のコーヒー好きだった文武は淹れたてのコーヒーで毒を飲み下したらしい
「遺書」「この世に頂いた命を自ら絶つ事をお許し下さい」
遺書には5年前の事故が飲酒運転によるものだったことを告白し支持者達に対する謝罪の言葉が記されていたという
文武が自殺を…?弟さんはあんたが自分のために罪を重ねることに耐えられなかったんだろうな。
(嗚咽)
(泣き声)文武…。
(文子の泣き声)
(泣き声)結果が出ました!私が中本に頼んで亜希を殺させました。
彼女は5年前の事故の真相を知っていた。
だから口をふさぎその罪を井口になすりつけたんだな?はい…。
動機は?次の選挙で弟を勝たせるためか?ええ。
あの子を代議士にするのが私の一生の仕事でした。
それなのに…。
その罪を井口に押し付けたのはなぜだ?それは…。
あの人が事故のことをいろいろと嗅ぎ回っていたからですよ。
嗅ぎ回っていた…?ええ。
まるで私達を狙い撃ちするみたいに。
もう1人の同乗者がいたっていう噂もあの人自身が流したに違いありません。
もしそれが本当だとしたら井口は最初からこの事件の渦中にいたことになる。
一体何が目的で…?
(井口)この景色あの頃とまったく変わらないね。
10年前私達が出会った場所。
そして別れを告げた場所…。
長い回り道をしたけどこれからはずっと一緒だよ。
うれしい…。
残念だけどそれは無理だわ。
乃里ちゃん!君子さん。
あなたには昔家の借金を返すために泣く泣く別れた恋人がいた。
それは井口君…あなただったのね?ああそうだよ。
貧乏サラリーマンだった僕は君子が資産家の家に嫁ぐと聞いた時身を引いたんだ。
それが君子のためになるならと思ってね。
だけどその後の君子さんは幸せじゃなかった。
今から半年前仕事で山形に来た僕は偶然君子に再会したんだ。
(関口)あはは…おいしかったね!
(舞妓一同)はい。
じゃあ次行こう次行こう!はい乗んなさい乗んなさい!
(関口)よしよしさあさあ…。
はい気をつけてね。
はい閉めるよ。
あはは…。
あなたお願いですから家に帰ってください。
何だ妬いてるのか?違います。
選挙を間近に控えてくれぐれもスキャンダルには気をつけなさいってお義姉様が…。
いい加減にしろっ!はい出して!
(井口の声)まったく驚いたよ。
幸せに暮らしていると信じていた君子はすっかりやつれていてかつてのはつらつとした美しさは見る影もなかったんだから…。
僕は無理やり事情を聞き出して5年前の事故を知った。
そしてあの時君子をあきらめたことをどれほど後悔したか…。
あなたは君子さんを苦境から救い出そうと決めたのね?まず計画の始めは5年前の事故の真相を噂としてバラまくこと。
真実が広まれば関口議員は選挙には出られなくなる。
ところが姉の文子さんは噂の出どころがあなたということを突きとめ罠を仕掛けてきた。
橋爪亜希といいます。
よろしくお願いします。
橋爪亜希を名乗る英子さんから話しかけられた時あなたはすぐにピンときたはずよ。
事故の真相を調べていたあなたは当然その時本物の亜希さんの顔を知ったんですもの。
だからあなたは自分に向けられた罠を逆に利用することにした…。
井口さん?私亜希です。
急いでご相談したいことがあるので今夜私の部屋に来てもらえますか?亜希を名乗る英子さんから今夜会いたいと電話があった時あなたは勝負の時が来たと思ったでしょうね。
そしてその時間より早くマンションに行って…。
あなたは亜希さんの遺体を線路下の小川に運んだのよ。
(井口の声)バカな。
一体何のためにそんな危ない真似を…?私を事件に巻き込むためよ。
線路下の小川で遺体が見つかれば鉄道捜査隊に通報され友人の私が捜査に加わる。
あなたは私を通して情報を流し捜査の行方をコントロールしていたんだわ。
あの痴漢騒ぎも私の信用を得るためにあなたが仕組んだこと。
あの女子高生にはお金を渡して一芝居打ってもらったんでしょ?そのうえあなたは川上英子さんと一緒のところを佐藤晴美さんに目撃されたことを隠していた。
私がそのことを調べてくることを初めから計算してたんでしょう?かなわないなぁ乃里ちゃんには。
でも僕達は大した罪は犯してない。
誰ひとり傷つけちゃいないんだからね。
いいえ。
殺したじゃない。
君子さんのご主人を。
何言ってんの?あれは自殺だろ?あなたが計画を立て君子さんが実行した偽装自殺よ。
バカな…。
そんなことできるわけがない。
大体僕達はその時刻には山形鉄道の電車の中に…。
それは乃里ちゃん君も見たはずだ。
ええそのとおりよ。
あれもあなたが仕組んだ筋書き…。
アリバイ作りが目当てだったのよね。
関口さんが亡くなった部屋の床に転がっていた青酸カリの瓶は見せかけで本当はダイエット甘味料のほうに毒が入っていた。
それが今回のトリックのミソだった。
もちろんその袋は後で回収するつもりだった。
でも警察の到着が早かったためにできなかったのね。
関口さんはいつも同じ時間に淹れたてのコーヒーを飲む習慣があった。
そのことを利用したこれは一種の遠隔殺人…。
そんなことができる人間は君子さんあなたしかいないわ。
井口君には前の仕事で負った莫大な借金がある。
そのことを清算して新しい生活を始めるためにはまずは君子さんに関口家の遺産を相続させる必要があった。
だから5年前の交通事故の真相を暴いて関口議員を破滅させ自殺に見せかけて殺す必要があったのよ。
この人は関係ないんだ。
やったのは全部僕だ!彼女は見逃してくれ。
頼む!勲さん!友達だろ?井口君。
友達だからこそ見逃せないの。
どうか2人で自首して。
乃里ちゃん!もうやめて勲さん!私達の負けよ。
確かにあなたの言うとおり私が主人を殺しました。
でもそれは誰のためでもない。
私が私自身の人生をリセットしたかったんです。
その気持ちはわからないでもないわ。
でも違う道があったんじゃない?違う道…?例えば身ひとつでもいいからご主人の家を抜け出して井口君と新しい人生を始めるような…。
(泣き声)そろそろ行きましょうか…。
井口と君子が送検されたそうですよ。
2人共いい人だったのに何か悲しいですね。
ほらほら無駄口たたいてる暇はないぞ!お前達がな山形に行ってる間に仕事が山のように山のように残ってるんだよな!課長素敵なシャレです。
おもしろいシャレだろ?なあ!わかりました!パトロール行ってきます!山形ってのは花の県なんですよ。
行くわよ!はい!「花の山形」「花の山形」「ヤッショウ」…。
あれっ?誰もいないんだ。
「ヤッショウマカショ」シャンシャンシャン…。
花言葉は「長すぎた春」!ふふ。
乃里ちゃん!いやぁ…ノリピー!2015/09/26(土) 12:00〜13:55
ABCテレビ1
西村京太郎サスペンス[再][解][字]
死体が線路際を歩いた!?山形鉄道フラワー長井線、狙われた終着駅!密室列車内の泥だらけ毒殺トリック
詳細情報
◇番組内容
死体が線路際を歩いた!?山形鉄道フラワー長井線、狙われた終着駅!密室列車内の泥だらけ毒殺トリック!大好評「鉄道捜査官シリーズ」第8弾!山寺・かみのやま温泉・蔵王お釜・鮎のやな場など、山形が誇る名所の数々でロケーション敢行!!
◇出演者
沢口靖子、地井武男、今村恵子、野村祐人、長谷川朝晴、山村紅葉、松村雄基、小沢真珠、根本りつ子、萩原流行
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
福祉 – 音声解説
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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