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何ですかこれは。 作者:鼻炎ラビット
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皇太子様に婚約破棄されたよ!!

有間(ありま)愛璃是(エリゼ)!!お前との婚約破棄をする!!」

 学校帰りの私をいきなり呼び出した七三分けの豚――…ではなく癒し系のマシュマロ系男子、皇太子様のありがたいお言葉に私は「はあ…」と頷く。

「やっぱり女の子は9歳までだね!!2桁になると駄目だよ、ババアだババア!」
「はあ…?」
「昨夜私は自分の想いに気付いてしまったんだ…!――私が本当に愛しているのは『恋妹☆シスターズ』の恋歌(レンカ)ちゃんだと言う事に!!悪いけど、エリゼ、私の事は諦めてくれ、ごめんね!!」
「はあ…」

―――ありがたい皇太子様のお言葉に私は頷く。

 しかし彼は私のその反応が気に喰わなかったらしい。

 それから皇太子様はまだ12歳の私の事をババアババアと罵り、劣化した、気持ち悪い、ブスと喚きまくった。
 私よりも私の父と年齢が近い皇太子様のそのありがたいお言葉に、私はポカンとした表情を浮かべる事しか出来なかった。
 私がババアなら私よりも30歳年上のこの人はジジイどころの話ではない様な気がする。
 そんな事を考えている間にも皇太子様の暴言は続いていた。
 私、なんだかさっきからこの人にクラスの男子にも言われた事のない様な酷い事を言われている様な気がする。
 でも正直、その皇太子様の暴言が悲しいとか彼の大きな声が怖いとかそういう感情よりも、いつもニヤニヤしながら私のお尻やおっぱいを触って来ようとしていたこの人が今日は気持ち悪くない事の方が嬉しいと言う感情の方が私の中で勝っていた。

「浮気だよ、浮気!!君がこんな軽薄な女だとは思わなかった!!」
「はあ…?」

 怒髪天を突く皇太子様がバッ!と床にぶちまけた写真を私は拾う。

「これは…、」

 写真は主に私の学校生活の写真だった。

(また宮内庁の人に隠し撮りさせたのね、この馬鹿皇子…。)

 思わず私の目が半眼になる。

 私が隣の席の男子に教科書を見せて貰っている写真――…これは私が教科書を忘れた日、隣の席の子に教科書を見せて貰っていた時の物だろう。
 去年の秋、高原学校で長野の行った時に登山中へこたれた私の手をクラスの男子が引いている写真やら、地元の福祉施設の訪問に行きおじいちゃんおばあちゃんとお話している時の写真やら何やら色々あった。

「こんなに男とベトベトしてなんていやらしいんだ!!君がこんなふしだらな女だったなんて!!……何も知らない様なその顔に、私はすっかり騙されてしまったよ!!」
「宮様、誤解です。これはただ授業を受けているだけで…」 
「言い訳するのか!?このビッチ!!非処女!!どうせもうお前なんか貫通済みなんだろう!?そんな顔をしてる!!」
「えっと、…………え?」

(非処女って何だろう?)

 助けを求める様に皇太子様の後に控える人達に目をやると、彼等もしろどもろとして目を泳がせている。

「この私の純情を裏切った報いはちゃんと受けて貰うからな!!覚悟しておけ!!」
「はあ…?」

 皇太子様の運転手に家に送って貰った私は、しばらく家で呆然としていた。

(あれ……これって、もしかしてあの人と結婚しなくて良いって事よね…?)

「や、――…やったぁ!!」

 それに気が付いた時、口から歓声が飛び出した。

「やったやったやったあああああああああ!!これで私、アガット様と結婚出来るっ!!」

 壁に貼った絶賛人気モデルアガット様のポスターにスリスリと頬摺りしていると、これから大学に行くらしいお兄ちゃんがひょこっと私の部屋に顔を覗かせる。

「どうしたの、エリー」
「お兄ちゃん!聞いて!!私自由の身になったの!!皇太子様に婚約破棄されたのー!!!!」
「な、なんだって!?それは本当なのエリー!!」
「本当だよお兄ちゃん!!」

 その日我が家では赤飯が炊かれ、夕飯は盛大なお祝いディナーとなった。

 実は昔、父が趣味で書いていた小説がたまたまヒットして園遊会に招かれた事があったのだが、その時、幼い私をあの場に連れて行った事を父は長年後悔していたそうだ。
 父もまさか当時5歳の娘が35歳の皇太子に見初められ、婚約を迫られる事になるとは夢にも思いはしなかったらしい。その後、国家権力の力で年が30も上の男の許婚にされてしまった娘の事を父も不憫に思っていたそうだ。

「でも、大丈夫かな?――…宮様、私が帰る時に『覚悟しとけよ!』って言ってたんだけど」

 私の言葉に家族は顔を見合わせる。

「まあ、宮内庁にはまともな人もいるし大丈夫だとは思うが…」
「だってどう考えても逆恨みでしょう?宮様が何か変な事をなさろうとしても皆さん、お止めになられるでしょう」
「天皇皇后両陛下はまともな方だし大丈夫だろ。それにいくらあの馬鹿皇子だってそこまでしないって」
「こらこら、お兄ちゃん。皇太子様相手に不敬だぞ」
「あっはっは」

 その日は楽しい家族団欒で幕を閉じた。

―――しかし、私達一家はあの皇太子様と国家権力と言う奴をナメていたらしい。

 あの時の皇子様の宣言通り、私の身には次々と恐ろしい事が襲い掛かる事となる。

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