課外授業 ようこそ先輩「野鳥が喜ぶ町をつくろう〜生物学者 池田清彦〜」 2015.09.25


今日の先輩は…地球に生命が誕生してから現在に至るまで生き物たちがどのように進化してきたのか研究しています。
最近気がかりなのはスズメを町で見かけなくなった事。
なぜスズメは姿を消したのでしょうか?丁寧に生き物の生態を観察するといろいろな事が見えてきます。
僕らが小さい時と今じゃやっぱり環境が変わっちゃって生物の種類も数も全部変わっちゃってそれがどうしてかっていう事を子どもさんたちに考えてもらって「生物と人間の共生を図ろう」というそういう大きなテーマを最終的に持っていきたいと思ってるんですけどね。
今日の舞台は…向かったのは6年1組の教室。
よろしくお願いします。
(一同)よろしくお願いします。
授業を始める前にまずは自己紹介から。
僕はこの学校にいた頃から虫とか魚が好きで将来生物学者になろうって小学校6年生の時から思ってた。
それで運よくなれたんで。
生物学って何を研究するか分かるかな?分かんない?誰か分かる人…何か好きな事言っていいよ。
あのさ生物学っていうのはものすごく大きいのね。
うんと小さいのは細胞というのは知ってるよね。
僕らの体って細胞で出来ててその細胞を研究するっていう小さな分野の学問からそれからもっと大きなどうして最近この鳥が減ってきてこの鳥が増えてきてるとかあるいは山と森とか湖とかあってその中の生物の関係がどうなってるかとか何が何に食べられるとかそういうふうな事を研究する大きな分野までいっぱいあって僕は外に出て虫を見たりするのが好きだったからそういう大きな分野の研究をずっとしてたんだよね。
はいこうだいくん。
池田さんが子どもの頃はどんな事をして遊んでいたんですか?とにかく昆虫好き。
それが高じて生物学の道へ進むようになりました。
池田さんが今夢中になっているのがカミキリムシの採集。
世界中を旅して集めたものです。
その数ざっと1,000種類余り。
カミキリムシは種類や性質がさまざまで謎も多くそれを解き明かしていくのが魅力なんだって。
そんな池田さんが用意した授業は意外にも昆虫に関わるものではありませんでした。
これ見た事ある人いる?授業のテーマに選んだのはスズメ。
スズメ捕りに夢中だった子ども時代の思い出話から授業を始めました。
籠をこういうふうにしてここの所でつっかえ棒してここに糸を結んでこの辺に隠れててこの下に米をまいてスズメが来るじゃんね。
そしたらこれをこっちからピンッと引くと籠がパタッと落ちて大抵スズメはパッと逃げちゃうんだけどドジなスズメが1匹か2匹は捕まって捕まえて喜んでいた事があったけどね。
ものを捕るのが面白かったね。
僕たちの頃はスズメがムチャクチャたくさんいたんだよ。
どのぐらいいたかというとこれぐらいいたの。
すごい!すごいだろ。
鈴なりになってにぎやかに鳴いていたスズメたち。
最近姿さえ見かけなくなった原因を突き止めるのが最初の課題です。
今日は僕が小さい時と比べて随分と種類と数が変わってきてるからその辺の事を観察してもらって研究してもらおうというふうに思っているんだけれどもね。
早速教室を飛び出してスズメの観察へ出かけました。
池田さんの後について上へ下へと目を配りながらスズメを探します。
(鳥の鳴き声)住宅街にある小さな公園にさしかかった所で鳥のさえずりが聞こえてきました。
でもその姿は見えません。
しばらくすると小鳥が飛んできました。
そこにいて一生懸命食べてる。
3匹いるよ。
果たしてスズメでしょうか?何だか体全体が灰色がかっていますが…。
双眼鏡でよく見てみると黄色い足が特徴のムクドリでした。
スズメはどこにいるのでしょう?学校を出てかれこれ40分が経過。
まだスズメは見つかっていません。
…とその時電線に止まっているスズメを発見!池田さんは電柱に設置されたトランスと呼ばれる変圧器に注目しました。
あそこのちょうどトランスがあるじゃない。
分かる?電信柱の所にトランスみたいなのがあってその上に今スズメが2羽いるじゃん。
あの下の所に…トランスの中がどうもスズメの巣みたいで。
ちょっと見てあれ2匹いるじゃん。
たぶんあれペアなんだよ恐らくな。
籠みたいなやつの中にそこに巣を作ったみたい。
本当だ。
スズメは大きな鳥の攻撃から身を守るためこの小さな穴の中に巣を作りひなを育てていたのです。
恐らくスズメが減ってきたのは巣を作る場所が無くなってきちゃったから。
昔は自分のうちってみんなスズメの巣が1個か2個あったんだけど今君たちのうちもスズメの巣が自分のうちにあるなんてうちはあまりないでしょ。
だからしょうがなくてああいう所に巣を作っているんだよね。
以前は人家の屋根の下の隙間がスズメたちの巣を作る場所でした。
でも都会ではそうした場所がめっきり少なくなりスズメの数が減ったのです。
家の屋根の上とかに作ってると思って電信柱とか身近なのにそういう所に巣が作ってあってびっくりしました。
それじゃ向こう側に渡るからね。
池田さん続いてこの地域で手つかずの自然が残る場所へと移動。
やって来たのは室町時代に建てられたお寺。
境内には大きなケヤキの木がありました。
大きな木っていうのは大事なんだよ。
なぜかって大きな木というのは穴が開いてたりとかそれからすごい木がいっぱい生えてるでしょ。
だからこういう木が残っているという事はこの木に依存してこの木を住みかにしてるような動物や植物が生きてるっていう事なのね。
この木を住みかにしている生き物とは?その時でした。
(男子)あの穴から鳥が出てきた。
(女子)どこどこ?ほらそこ。
そこにいる。
穴から飛んでいった鳥は何だったのでしょうか?
(男子)出ていったんだよ。
だからもう一回戻ってくるんじゃない?鳥をおびき寄せるためパンくずをまいてみました。
やって来たのはムクドリでした。
そして…。
(歓声)入ったか?入った入った!すごい!あ〜出た。
すごい!初めて見た。
多くの子どもたちにとってこんなに近くで野鳥を見たのは初めて。
野鳥を守ろうという気持ちが芽生えてきます。
一回自分で見てこういう事をやると面白いって事が分かる。
興味を抱かなければ実際保護しようという気も起こらなくなる。
興味があるからその虫をいなくなっちゃかわいそうだからとか鳥も大事だって気になる。
学校に戻って授業再開。
池田さんスズメが減った原因は餌にもある事を話し始めました。
足立区で昔捕れたチョウを持ってきたんで…。
取り出したのは池田さんが少年時代に学校の近くで捕ったチョウの標本。
全部で23種類。
カラスアゲハなど非常に珍しいチョウもあります。
実はチョウの幼虫が鳥の餌の一つでもあるのです。
池田さんが幼い頃豊かな田園が広がるこの地域でたくさんのチョウが舞う姿が見られました。
しかし田園が少しずつ消えていく中でチョウの姿も見られなくなっていきました。
餌になるチョウの幼虫が少なくなった事がスズメの数の減少につながっていたのです。
これかわいくない?
(女子)かわいいわ〜。
こいつらの幼虫は鳥の餌です。
鳥が生きるためには虫がいる必要があって虫が生きるためには植物が生えている必要があってだからそうやって生物はみんな関係している訳だ。
こういうのを生態系っていうんだけど…。
全てのものは不思議なつながりを持って生きている。
まず植物が作った葉や実を昆虫が食べる。
その昆虫を餌として鳥が食べる。
今度は小さな鳥が大きな鳥の餌となる。
そして死んだ鳥は土に返りやがて植物の養分となる。
こうして循環の輪が出来ます。
人間もこの大きな自然の輪と無関係ではないのです。
だから人間もそういう意味じゃ自然の一部なんだよね。
だから僕たちは自然よりも偉いって思わないでほかの生物を大事にして自分も大事にしてっていうふうにしないとどっかでおかしくなっちゃう訳ね。
(一同)ありがとうございました。
地球に存在するあらゆる生物が直接的に間接的に支え合って生きている。
その共生という考えを伝える事が池田さんの研究テーマの一つです。
共生しなくたって人間は食い物とエネルギーさえあれば生きていけるんだけど何にも生物がいなくて何にもないコンクリートの生物が全くいない空間だけで例えば5年暮らすと人間はちょっとおかしくなると思うんだよね。
そういう点で生き物がいるって事は大事な事だから別に役に立たなくたっていい訳で役に立つ事だけが大事だっていうのはやっぱり現代人の悪い考えで…。
窓から外を眺めるとそこに緑があって鳥が飛んでてチョウチョが時々飛んできてっていうのをそういう環境で生きてるっていうのが人間にとって大切な事だよね。
午前5時東京の夜明けです。
2日目の授業は学校の屋上から始める事に。
ちょっと周りを見て。
梅小の周りってどんなふうになってる?ほとんどビルに囲まれてるよね。
これを君たちがどういうふうに町をつくって今ある建物は無視してこの周りをどんなふうな環境にしたら鳥が増えて虫が増えるかという事を考えてほしいんだよね。
富士山はあの辺にあるかな。
みんなが住んでいるこの町をどう変えれば生き物たちとうまく共生できるのか。
大きな課題が出されました。
双眼鏡を使って町の環境を隅々まで調査。
次に班ごとに話し合って意見をまとめます。
この班ではおのおの問題点の洗い出しから始まりました。
(女子)あっ!
(鳥の鳴き声)その時窓の向こうに鳥の影。
(女子)あっすごいすごい!ねえねえすごいすごい!オナガだオナガ。
(女子)よしやるか。
白熱した話し合いの結果がこちら。
「動物を虐待しない」。
「コンクリートを減らし緑を増やす」。
「鳥が止まれる木を増やす」など5つの項目にまとめました。
うんなかなかユニークでいいじゃん。
すばらしい。
午後には各班の発表会が予定されています。
発表会で自分たちの意見がみんなに分かりやすく伝わるよう頭の中にあるイメージをイラストにしていきます。
子どもたちが思い描く未来の町づくり。
一体どんな町が出来るのでしょうか?いよいよ発表会。
お隣の6年2組の仲間たちも応援に駆けつけてくれました。
生き物とどうやってうまく共生するかという題で君たちに発表をしてもらおうと思って…。
さあ60人の仲間たちを前にして未来の町の発表です。
私の理想の町は生き物と共に生きられる町です。
例えば瓦屋根や木の家を造れば鳥が巣を作りやすくなるので人も鳥も住めていいと思います。
それにビオトープを作れば魚が住めるし水飲み場や花壇を作れば虫や鳥も生きられるのでそういう町をつくれば生き物と共に生きられると思います。
マンションの屋上に庭園を造る事です。
鳥や昆虫が暮らせるように花木を植える事です。
今日屋上を見てみたらマンションだらけでうちだらけで屋根だらけだからひょっと見ると地べたより屋根の方が見えるから屋根を緑化しちゃおうっていう発想が君たちみんな考えたっていうのは分かる気がするね。
テーマは「鳥だけでなく人も住みやすい町づくり」です。
環状七号線の中央分離帯を川にしたり歩道の部分に大きな木を植えたりします。
あと川や木などに魚や鳥などが来るようにします。
私のテーマは「鳥が住める町」です。
私は巣箱をランドセルにしました。
帰り道に鳥が来られるようにしました。
木につけるだけじゃなくてランドセルにしても大丈夫です。
これすごい。
ユニークだと思わない?鳥が自分のランドセルの中に巣を作って鳥と共に学校に来るってね。
すごい。
鳥はそうすると…授業をやっている時は外で遊んでて帰る時にランドセルをしょってくると鳥がまた飛んできてここに入って一緒に帰るとかそれってすげえユニークなアイデアだね。
君はすごいよ。
これ僕はすごい気に入って…。
環七の中央分離帯を川にしちゃうってすげえユニークなアイデアだと思うんだけどな。
そうするとこの川に魚がいっぱい住んでこういう所を人が通ればなかなか楽しいからね。
僕釣り好きだからここで釣って晩のおかずにするとかヤマメか何か放してもらいたい。
最後の発表ははなえちゃん。
なんとあのスカイツリーを大変身させたんだって。
植物を植えたりして道路には大きな木を植えます。
スカイツリーには木を植えて小さい虫や鳥などが来るようにしたいと思います。
これすごいな。
こういうのができたらカッコイイと思うけどな。
こういうのも将来何か高い塔を建てる時にそこだけが人間が住んでるんじゃなくてそれを利用して生物も一緒に住めるような環境にするっていう考えは面白いかもね。
どうもありがとう。
(拍手)発表会は終わりました。
自分の身の回りでできる事があるでしょ。
だから自分のうちは駐車場にしようと思うんだけどコンクリにしないで砂利敷いてて下の生き物も大事にしようとかそれからちょっとした空き地には草花植えようとかそれからなるべくチョウチョが来るような花を生けておこうとかそういう事はできるからまず共生の思想というのを頭にたたき込んでうまく生きられるような大人になってくれたらうれしいなというふうに僕は思っています。
(女子)ありがとうございました。
はいどうも。
(一同)ありがとうございました。
最初普通のおじいちゃんかなと思っちゃったんですけど話を聞いてたらすごい人だなと思った。
私たちの周りにはほとんど家ばっかりで自然とかなかったけど自然があると鳥も人間も過ごしやすいので自然があった方がいいという事は分かりました。
うちもちょっと虫が苦手だったんですぐに殺しちゃうというところがあったんですけどでも命も一人一人あってちゃんと大切にしなくちゃいけないと思いました。
それじゃあどうもさようなら。
バイバイ。
2015/09/25(金) 19:25〜19:50
NHKEテレ1大阪
課外授業 ようこそ先輩「野鳥が喜ぶ町をつくろう〜生物学者 池田清彦〜」[解][字]

今回の先輩は生物学者の池田清彦。伝えたいのは、すべての生きものは支え合って生きていること。子どもたちは「人間と野鳥が共に暮らす未来の町づくり」に挑戦する。

詳細情報
番組内容
今回の先輩は、テレビでも人気の生物学者・池田清彦さん。最近、気がかりなのは町でスズメを見かけなくなったこと。なぜスズメは姿を消したのか?教室を飛び出し、双眼鏡を手に野鳥を観察する授業が始まる。子どもたちに伝えたいのは、すべての生きものは支え合って生きていること。そこで、“人間と生きものが共に暮らせる未来の町づくりを考えてみよう”という課題が出された。いったいどんな町が生まれるのだろうか。
出演者
【出演】生物学者…池田清彦,【語り】宮川一朗太

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
趣味/教育 – その他
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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