(椿美穂)「殺しました…!」「私は主人を…殺しました…!」
(美穂)違います!私は…私は…。
(鍋島司)え〜以上弁護人が自白の任意性を争うようなので検事調べで被告人が自白した部分をお見せしました。
(武藤かおり)裁判長。
この証拠については信用性を争う旨をお伝えしました。
(裁判長)では本証拠について弁護人ご意見を。
被告人は警察と検察の取り調べで合計22日間代用監獄いわゆる警察の留置場で拘束されていました。
この映像はその22日目のものです。
つまりそれまで被告人は犯行を否認していたんです。
(鍋島)裁判長。
しかし最終的に被告人は自白しています。
弁護人としてはこの自白は長期拘束の心身疲労によるもので事実ではないと主張します。
(鍋島)裁判長。
ただ今見ていただいた被告人の供述に矛盾はなく自己の意思に反して自白するほど心神喪失状態ではなかったと検察は主張します。
いいえ被告人の供述には矛盾があります。
映像を見ながら順次指摘していきたいと思います。
(鍋島)「ご主人が店で殺された夜あなたが店を出た時間は?」
(美穂)「何度も答えましたけど」
(鍋島)「椿美穂さん何度でも答えてください」
(美穂)「深夜12時です」
(鍋島)「閉店後ですね。
その時ご主人は?」「片付けを…店に残って」
(鍋島)「そのまま家には帰らなかった」
(美穂)「はい」
(鍋島)「そんなご主人をあなたは心配するでもなく翌日の昼過ぎ店に出勤するまで一切の連絡を取っていない」
(鍋島)「それはなぜでしょう?」
(かおり)結局被告人はこの質問に答えませんでした。
それは被害者がすでに死んでいるのを知っていたからとこの後被告人はそう答えていたはずですが?被害者は酔った日は店に泊まり一晩帰らない事はよくありました。
それは店のアルバイト三島陽子さんの供述録取書「弁3号証」にて申請したとおりです。
つまり被害者が一晩帰らない事は日常茶飯事。
当然被告人もそんな被害者の行動に慣れていたはずです。
その夜もそう思って連絡は取らなかった。
しかしそう答えられなかった。
なぜならば被告人はそれほど心身疲労の状態にあったからだと弁護人は主張します。
(鍋島)「あなたは以前の取り調べで店が儲かっていないというのは口癖でそれをほとんどの客が聞いていると供述しています」
(鍋島)「これは事実ですか?」
(美穂)「はい…」
(鍋島)「また金銭の事で夫とはいつもケンカばかり」「役に立たない夫に愛想が尽きていると客に話していたと供述しています。
これは事実ですか?」
(美穂)「はい…」これは検察側が被告人の犯行を保険金目的であるとする根拠です。
そうですね?ええ。
店に来る客を中心に被告人から同様の発言を聞いた人がいる事は先に示したとおりです。
でもどうでしょう?「店が儲からない」「夫とはケンカばかり」「もう愛想が尽きた」…。
こんな発言はスナックのママにとっては営業トークの一種ではないでしょうか。
しかし被告人は長期の勾留でそのような弁解をする気力もなかったと弁護人は主張します。
(鍋島)裁判長先ほどからの…。
(かおり)以上です。
検察官他に取り調べる証拠はありますか?では被告人の店「スナック椿」でパートタイム労働をしていた三島陽子さんの証言映像を。
客の立場でない彼女の証言によって被告人の発言が単なる営業トークだったかどうか見えてくるはずです。
その証拠については弁護人は後日三島陽子さん本人を法廷に呼び尋問する予定です。
(裁判長)はいその申請は受けていますが。
(かおり)では…しかるべく。
(裁判長)検察官どうぞ。
(鍋島)「では検察官より三島陽子さんに質問します」
(三島陽子)「何か怖いですね」
(鍋島)「緊張なさらずに。
ではまず被疑者椿美穂は店に来る客に対し店が儲かっていない旨の発言を…」「え…ママ検事さんにもそんな事言ってるんですか?」
(鍋島)「その事で夫であり被害者の椿友章と争いが絶えなかったと取り調べで供述しているんですが」
(陽子)「そうすっごいケンカするんですよ」「客がいないともう止められないぐらい…」
(陽子)「あっ…ダメですよね?タバコ」
(鍋島)「は?」
(陽子)「やっぱり緊張しちゃって…タバコダメですよね吸っちゃ」
(鍋島)「それで緊張がほぐれるなら構いません」
(陽子)「ありがとうございます。
すいません」
(伊丹憲一)何かで殴られてるな。
致命傷か?
(米沢守)ええ。
死亡推定時刻は昨夜の10時から12時です。
凶器は?今のところこの周辺からは見つかってません。
(芹沢慶二)ガイシャですが三田に住む三島陽子さんです。
(米沢)あどうも。
(杉下右京)よろしいですか?はい。
これをお返しに。
志ん生の貴重なエアチェック堪能させていただきました。
あわざわざご丁寧に。
恐縮です。
(亀山薫)お忙しそうですね。
今朝若い女性の他殺死体が発見されまして…。
犯人は不明です。
「スナック椿」…?近所のスナックでアルバイトをしていたようです。
そのスナック以前にも殺人事件がありましたね?ええ。
店でマスターが殺されています。
それも奥さんに。
で今度はアルバイトの女性が…。
…気になりますねぇ。
(亀山美和子)あ…ごめんね。
すいません。
お待たせしました。
悪いな。
すみませんね。
今裁判中の…約2か月前の事件です。
「殺されたのは東京都港区田町の『スナック椿』を経営する椿友章さん」「第一発見者は妻の椿美穂さん」「同スナックに出勤したところ友章さんの刺殺死体を発見」
(美穂)あっ…!?「凶器は同スナックにあった包丁である事が判明」「逮捕送検された第一発見者の椿美穂が犯行を自白」でも裁判で奥さんは自白を翻してます。
奥さんのアリバイは?夫の死亡時刻父親と電話で話をしてたみたいです。
「実父との電話アリバイ工作か?」しかし被疑者の奥さんが携帯電話だったためアリバイにはならなかったようですねぇ。
(美和子)まあ携帯なら殺害現場からでもかけられますからね。
殺害現場から電話をしたのだとすれば自分が殺した夫の死体のそばで電話をしていたという事になりますねぇ。
ですね。
平静を装って。
ええ平静を装って。
夫の死体のそばで実の父親とどんな話をしたのでしょうねぇ。
(堀添博)確かにあの夜娘からは電話がありました。
かなりの深夜ですが電話はよく?その頃私の体調が悪かったもんですから店から家に帰ってすぐ電話をくれたんです。
でも携帯だったので家からかどうかはわからないという事でしたよね?警察はそう言いますがね美穂は人を殺せるような子じゃないんです。
なのに警察は無理やり美穂を犯人にして…。
弁護士の先生から聞きましたよ。
あげくに良くしてやってたバイトの子にも裏切られて。
バイトの子に裏切られた…?あ…。
(堀添)そうですこの子です。
三島陽子さんに会われた事があるんですね?いえありませんけど。
ではなぜ彼女の顔をご存じなんでしょう?昨日見ましたから裁判で流れた映像で。
裁判で流れた映像…。
あ昨日の公判で彼女が事件について証言した映像が流されたわけですね?
(堀添)はい…。
最近検察が始めたやつですね。
ええ。
つまりその証言映像は検察官が撮影したものですね。
それを見て驚きました。
(堀添の声)あの女まるで美穂が友章君を殺す動機があるような事をペラペラと…。
(堀添の声)どうしてあんな事が言えるんですか?店で良くしてもらってた美穂を陥れるような事を…。
それも店のライターでタバコを吸いながら。
え…検察でタバコ吸っていいんすか?被疑者の場合は利益誘導になりますがま参考人ですからねぇ。
(堀添)警察も検察も証人までみんながみんな美穂を犯人にしたがって…。
でも私は娘を信じています。
おかげさまで優秀な弁護士が付いてくれる事になりまして。
優秀な弁護士…?武藤かおり先生です。
お久しぶりです。
ホントいつ以来でしたっけ?ご無沙汰してます。
ご用件は?スナック店主殺害事件の裁判について少々お話を。
公判中の事件についてお話しできません。
大体警察が一度送検した事件を調べるのはルール違反ですよ。
いえまだ送検前の事件を調べています。
…は?三島陽子さんが殺されました。
殺された…!?今朝遺体が見つかりました。
間もなく発表されます。
彼女の証言が昨日法廷で流れたそうですねぇ。
その夜に殺害された…。
さすがに気になりましてね。
その証言がどのようなものだったのか教えていただけませんか?もちろん傍聴人の知りえる範囲で結構です。
それならば弁護士の倫理違反にはならないと思いますが。
ご用件はわかりました。
では早速見せていただけませんか。
見せる?検察が提出した証拠はすべて複製をお持ちですよね?わかりました。
「やっぱり緊張しちゃって…タバコダメですよね吸っちゃ」
(鍋島)「それで緊張がほぐれるなら構いません」「ありがとうございます。
すいません」
(鍋島)「それで椿美穂が夫と争いが絶えなかった原因は?」「あのお店『スナック椿』の事ですけど儲かってなかったんです。
赤字の月も多くって」
(鍋島)「なのにあなたにアルバイトをさせていた」
(陽子)「週末だけですけど。
少しは忙しくなるんで」「一度辞めるって言ったら女の子はいてほしいってママに言われて」「でも店を閉めようなんて話も出てました」「大ゲンカしてる時は決まって客のいない時です」
(陽子)「あんなケンカお客には見せられないですよ」「だって警察に通報されちゃう。
それだけひどいんです」「一度なんてマママスターに思い切り突き飛ばされて肩脱臼しちゃった事あったんですよ」「あれには私も怒りましたけど」
(鍋島)「椿友章は椿美穂に対して日常的に暴力をふるっていたんですか」
(陽子)「ええ」これだけです。
検察から提出された証人の映像は。
証言の印象としては被告人が経済的に困っていた事と夫婦仲がひどく悪かったという事ですね。
(かおり)証言者にはそのつもりはなかったようですけど。
といいますと?彼女は美穂さんの無実を主張するために検察の聴取に応じたんだって私にはっきり言いましたから。
大丈夫よ先生。
私ママの容疑を晴らすために検察行くんだから。
お願いね。
でもあなたの証人申請が検察とかち合っちゃうなんて。
彼女は弁護側の証人でもあった…。
じゃこの証言について当然彼女と話してますよね?ええ昨日。
これが法廷で流れた後電話で話したわ。
検察に証言を強要された可能性を確かめるために。
証言の強要ですか…。
でもそんなふうには見えませんでしたよ。
ええ。
彼女も証言の強要はなかったって言ってた。
それで後日彼女を法廷に呼びこの映像に反論なさるおつもりだったんですね?その打ち合わせを今日する予定だったんですけど…。
三島陽子は椿美穂の無実を主張するために検察で証言したはずなのに逆に彼女を陥れるような事を言った。
その証言映像は事実でしょうか?え…だって現に彼女が映ってしゃべってましたよ。
映ってしゃべっていれば事実でしょうか?まさか台本があったとか?台本というよりも編集でしょう。
編集…?椿美穂は22日間勾留された後にやっと自白をしました。
ええ。
でその映像を検察が法廷で流した。
犯行を否認し続けた20日間あまりの映像は流さずに。
はい。
それも編集ではありませんか?なるほどそんな事をする検事なら三島陽子の証言も被告に有利な部分をカットしかねないって事ですか?もし仮に椿美穂に有利な証言をした三島陽子が昨日武藤弁護士から…。
え…?この証言は検事に強要されたものではないかなどという電話をもらったらどうするでしょうねぇ。
きっと何の事だろうと思いますよね。
思いますね。
そして電話の後つまり昨日の夜証言をした検事に会いに行ったとしても何の不思議もありませんねぇ。
昨日の夜…死亡推定時刻。
(裁判長)前回証人として申請された三島陽子さんの取り調べですが。
(かおり)証人死亡のため証拠調べは不可能になりました。
(裁判長)それでは次回期日の予定ですが…。
編集ではありません。
自白した部分を提出しただけです。
なるほど。
では三島陽子さんの証言については?それも必要な部分だけを抜粋して提出したまでです。
抜粋ですか。
ものは言いようですねぇ。
あなた編集編集と言いますが取り調べのどこを撮影してどこを提出するか我々検事に任されてるんですよ。
存じております。
時間短縮の意味もあります。
違法行為のように言われては困りますね。
でも便利なシステムですよねぇ。
何がです?自白や証言を検察が有利に編集できるなんて。
取り調べを録画録音するシステムすらない警察にそんな事言われたくありませんね。
確かにその点は警察が遅れていますねぇ。
もういいですか。
次の公判がありますから。
三島陽子の証言を法廷で流した日彼女から抗議は?そんなものありませんよ。
その夜三島陽子に会ったりは…?してません!鍋島検事最後に1つだけ。
もういい加減にしてもらえますか!三島陽子はバッグをどこに置いていましたか?バッグ?検事の抜粋された三島陽子の映像我々も拝見しました。
彼女はバッグを持っていました。
検事の聴取の間それはどこに置かれていたのでしょう?覚えてませんよ。
膝の上か足元にでも置いたんでしょう。
聴取の前に彼女の所持品の検査は?
(鍋島)被疑者でもあるまいし参考人にそんな事しませんよ。
なるほど。
だから彼女がタバコを吸うのを許可された。
タバコでリラックスする事で構えず聴取に応じてくれる場合もあります。
何なんですか?右京さんさっきの。
さっきのとは?いやバッグの置き場所とか所持品検査したかとか。
それをちょっと確認しましょう。
被害者のバッグでしたら…。
この中にボイスレコーダーのようなものは?ボイスレコーダーですか…いえありませんでしたが。
彼女の自宅から押収した私物の中には?いえありませんでした。
そうですか。
あの…なぜボイスレコーダーなんですか?いや昨日被害者が検察で証言してる映像を見たんですけどね。
それはまた珍しいものを。
その時彼女は証言しながらしばしば下に視線を落として何かを確認していました。
その仕草をタバコを吸う事でごまかしていた。
なおかつ彼女は意識的にバッグに向かって話をしていた。
僕にはそのように見えました。
だからこのバッグの中にボイスレコーダーでもあったんじゃないかって言うんですけどね。
それがここにないという事は犯人が持ち去ったという事でしょうか?そうかもしれませんし僕の考えすぎかもしれません。
(ため息)先輩ここじゃないみたいですね。
チッ…クッソー。
じゃどこなんだよ。
伊丹刑事。
(伊丹)はい。
殺害場所をお探しですか?余計なお世話です。
ルミノール反応で血痕を探してらっしゃる。
おい殺害場所って死体発見現場じゃねえのか?それが違うみたいなんですよね。
何で違うって言える?すいません…言えません。
おおよそ遺体発見現場に残された血痕の量とその飛び散り方さらに現場付近で被害者の声などを聞いた者が出なかった事実などを考慮し捜査本部は遺体発見現場が殺害場所ではないと結論付けたのでしょう。
エスパーだ。
(ため息)もう用がないならお引き取りください。
殺害場所が遺体発見現場でも彼女のこの家でもないとしたらアルバイトをしていたスナックはどうでしょう?そのスナックなら主が殺されてからずっと閉まってますよ。
鍵預かってきました。
すみませんね。
(鍵を開ける音)えっと明かりは…?
(米沢)棚の横にあります。
棚の横…はい。
よっ…。
店主が殺された時の鑑識写真です。
この写真からは何も動いていないはずですね?ええ。
あれ?右京さん店のマッチがありますよ。
確か三島陽子は店のライター持ってましたよね?ええ持っていました。
珍しいですねマッチもライターも作るスナックなんて。
普通どっちかですよね?まあ今時はライターが多いようですね。
でもライターの在庫はないみたいですね。
もう大方配られてしまったんでしょうなぁ。
角度が違います。
(米沢)ん…?あちらのスピーカーは写真と同じなのになぜでしょう?あ…向こうは…。
えぇ…あっこうか…。
(カラオケ)うわっ!ビックリした。
(カラオケ)聞こえますか?そちらのスピーカー。
(カラオケ)いやこっちからは何も聞こえませんが。
亀山君歌ってみてください。
えっ!?あ…いや歌えないです。
知らない曲ですからこれ。
僭越ながら私が。
はぁ。
『浪曲子守唄』「逃ーげた女房にゃ…」「未練…」あれ?もう結構です。
(ため息)やはりマイクの音も聞こえませんね。
このスピーカーが壊れてるって事ですか?血液反応が出るかどうか調べていただけますか?わかりました。
あっ…!?前調べた時はこんな血液反応ありませんでした。
つまりこの血液はこの店の店主が殺害され店を閉めた後に付着したものという事になりますね。
じゃあ三島陽子はここで殺された…?かもしれません。
至急誰の血液か調べてみます。
(米沢)間違いありません。
被害者三島陽子の血液でした。
って事は犯人はあの店で三島陽子を殺しあの死体発見現場に運んだ。
スピーカーは犯人と揉めた拍子に三島陽子の頭部に当たったという事かもしれませんねぇ。
あそれとですね杉下警部がボイスレコーダーにこだわってたんでもしやと思って調べてみたらですね…。
(鍋島)「では検察官より三島陽子さんに質問します」
(陽子)「何か怖いですね」
(鍋島)「緊張なさらずに」
(陽子)「やっぱり緊張しちゃってタバコダメですよね吸っちゃ」
(鍋島)「それで緊張がほぐれるなら構いません」
(陽子)「ありがとうございます。
すいません」
(ライターの音)タバコに火をつけました。
ええこの辺は武藤先生んとこで見ましたね。
ええ。
(陽子)「あのお店『スナック椿』の事ですけど儲かってなかったんです。
赤字の月も多くって」
(鍋島)「なのにあなたにアルバイトをさせていた」
(陽子)「週末だけですけど。
少しは忙しくなるんで」「一度辞めるって言ったら女の子はいてほしいってママに言われて」この辺も先生んとこで見ましたねぇ。
(鍋島)「閉店を考えるくらい経済的に困窮していたんですか?」
(陽子)「まさかそれほどじゃありません」「そんな話をした後には必ずここまでやってきたお店だから絶対にやり遂げようって2人で誓い合って終わるんです。
仲いいですよ」仲がいいって…こんな会話なかったですよ。
(陽子)「ケンカするほど仲がいいって言うじゃないですか」「それってきっとママとマスターの事です」
(鍋島)「話を戻しましょう。
2人はどんな時にケンカを?」
(陽子)「大ゲンカしてる時は決まって客のいない時です」「あんなケンカお客には見せられないですよ」「だって警察に通報されちゃう。
それだけひどいんです」
(鍋島)「椿友章は椿美穂に対して日常的に暴力をふるっていたんですか?」
(陽子)「ええ。
日常的にじゃないですけど」
(陽子)「それで私ママに別れちゃえばって言ったんです」「そしたらまだ愛してるから期待してるんだって」「だから怒るんだって言うんですよ」「あげくにあなたも早くそういう人を見つけろって」「笑っちゃうでしょ?そんなママがマスターを殺すはずないですよ検事さん」全然違いますよ…。
法廷で流された証言とは全然印象が違う。
これ明らかに椿美穂に有利な証言ですよ。
だからカットしたのでしょうかねぇ。
こんな編集された事をもし武藤先生の電話で三島陽子が知ったら絶対会いに行きますよ鍋島検事に。
だってこんな証拠まで持ってたんですから。
検事だって言い逃れできないはずです。
(陽子)「笑っちゃうでしょ?そんなママがマスターを殺すはずないですよ検事さん」まさか録音されていたとはね…。
これを聞く限り検事が証拠提出された映像は被告人に有利な証言がすべてカットされていますねぇ。
当然でしょう。
え…?検察官は被告を訴追する立場です。
弁護人ならきっとその逆の事をしたでしょう。
裁判はその二者の戦いなんですよ。
しかし映像を事実として公表する以上編集には最低限の良識が必要だと思いますがねぇ。
違法行為をしたつもりはありません。
でもこの録音が弁護側に渡ったりましてマスコミなんかに流れたりしたらあなたのダメージは大きいんじゃないですかね?どうでしょう。
え…?違法に取得した証拠に法的な証拠能力はありませんよ。
(陽子)「そんなママがマスターを殺すはずないですよ検事さん」鍋島検事やっぱり都合のいい部分だけを出したのね。
カットした部分は絶対検事が持ってますよ。
その部分だけを提出させられませんか?え…?我々の捜査にもあなたの弁護にも必要だと思いますが。
それは…それができれば公判をひっくり返せるとは思いますけど。
弁護側の武藤さんならば検察側に証拠開示請求ができますよね?
(かおり)ええ。
でも証拠映像の内容を把握しているのは担当検事だけなの。
確かに。
撮影していないと言われればそれまでですねぇ。
でなければ当たり障りのない部分だけを提出してくるでしょうね。
(舌打ち)それよりも杉下さん警察が検察から押収する事はできません?検察から押収?うん…。
警察は今三島陽子さんが殺された事件を調べている。
その被害者の生前の映像を検察が持っている。
それだけでも押収理由になると思うんだけど。
そうですよ右京さんその手がありましたよ!それは僕も考えました。
できないんですか?いえ。
しかし裁判所から捜索差押令状を取るには押収範囲を具体的に示さなければなりません。
確かに検察が持っている証言映像を全部というのは難しいかもしれませんね。
その上検察が三島陽子の証言映像のどの部分を抜いてしまったのか我々には判断できませんからね。
いやだからこの録音の彼女が被告人に有利な証言をしてる部分を押収範囲に指定して…。
これは違法な証拠です。
裁判所に提示する事はできません。
あ〜もう!あぁやっぱり無理なんすかね。
いつもこういうところでお飲みですか?ここの味母を思い出すんです。
あぁありがとうございます。
ご趣味じゃなかったですか?いえいえ。
ご主人それは吟醸ですか?
(おでん屋の主人)はい。
では日向燗でください。
(主人)はい。
日向燗?30度前後の非常にぬるいお燗です。
(主人)恐れ入りますが洗い物をしたいのであとはお手盛りで…。
よろしく。
(かおり)あはい。
それで僕をお呼びになったのは?あの録音は捜査上の証拠物件でしょ?それを関係者の弁護人に聞かせるなんて。
そうでした。
僕とした事が迂闊でした。
まあ確信犯でしょうけど。
聞いてない事にしておくわ。
お心遣い感謝します。
少し悔しいけど。
…はい?被告人に有利な証言を自ら握りつぶすなんて。
しかし法廷に出せない証拠は証拠ではないのでは?そうね。
だから検察官も弁護人も自分の都合のいい証拠しか出さない。
裁判とはそういうものだと鍋島検事もおっしゃっていました。
鍋島検事に会ったの?お会いして検事の編集はあまりにも露骨なのではないかと苦言を申し上げました。
(笑い)そんな事言ったら検察は取り調べの一部可視化なんてしなくなるわよ。
しかしなぜ全部ではなくて一部なのでしょう?え…?取り調べの可視化は自白や証言が裁判で争点にならないようにするためのものではないでしょうか。
裁判員制度を念頭に置いてるからでしょうね。
しかし自白や証言の一部だけを事実だと見せられて一般の人が正しい判決を下せると思いますか?やはり鍋島検事に未提出の映像を出させましょう。
検察から押収してもどのみち当たり障りのない部分しか出てこない…昼間結論出た話でしょ。
ですから差し障りのない部分を提出してもらいましょう。
…え?「任意提出書」…?差し押さえの請求書じゃないんですか?ええ。
でもどっちみち俺たちの名前でこれ持ってったら鍋島検事は警戒しますよ。
ですから…。
はい。
え…!?僕たちがこれを?捜査一課のどなたかのお名前で。
お断りしますよ警部殿。
お前は持ちつ持たれつって言葉知らないのか?何の事だよ?三島陽子の殺害現場教えてやったろ!
(中園照生)あっ部長!おはようございます。
(内村完爾)犯人の目星はついたのか?あすいませんまだ…。
お前たちはここで何をしてるんだ?犯人の目星をつけようと思いまして。
地検の検事につきまとってるそうだな?その検事に…こちらを。
任意提出…?何をだ?三島陽子が検察官聴取でタバコを吸っている映像すべてです。
そんなものを見て彼女を殺した犯人がわかるのか?わかるかもしれません。
その検事に持ってけ。
しかし部長…。
これ以上こいつらが検事につきまとっては困る。
ありがとうございます。
「大ゲンカしてる時は決まって客のいない時です」「あんなケンカお客には見せられないですよ」「ええ何度かアルバイト代も遅れましたけど」
(芹沢)以上ですけど…検察から提出された映像。
本当にタバコ吸ってるとこだけしかなかったな…。
フッ…ずいぶん時間を無駄にさせてくれたなおい。
右京さん…。
何度見ても一緒ですよ。
残念ですけど確かに被告に有利な証言をしてる映像はありませんでした。
ライターがはっきり映っている映像もありませんでしたねぇ。
え…?
(中園)ライターって…これの事か?ええ。
(芹沢)そのスナックのライターがどうかしたんですか?今これをスナックのライターと言いましたね?ええ…。
なぜスナックのライターだとわかりました?だって彼女の遺留品にありましたから。
あああった。
勝手に遺留品見てんじゃねえよお前。
しかしこれにはライターははっきり映っていませんでしたよ。
(芹沢)え…あ…同じ色で同じ形だし…。
だからスナックのライターだと思った…。
(芹沢)ええ…。
なるほど…。
いかがでしたか?椿美穂さんの様子は。
三島陽子さんが殺された事で憔悴しています。
美穂さんは何と言っていますか?マッチがあるのにライターを作ったのはマッチが客に不評だったから切り替えようとしたそうです。
ライターに切り替えたのはいつでしょう?いえ切り替える前にご主人が殺されて。
あでも三島陽子の遺留品にありましたよ。
デザインの確認のためサンプルが1本だけ店に…。
あ…1本だけ…?それがいつお店に届いたのかお訊きになりましたか?10月29日の月曜日。
10月29日月曜日…?ええ。
それじゃ。
どうもありがとうございました。
でも日にちまでよく覚えてましたね。
その日の深夜ご主人が殺されています。
ああだからか…あ…?…あっ!?このお店が閉まっていてもあなたなら鍵を開けられますね?ええ。
でも開けられるのは私だけでは…。
しかしあなたはこのライターを知っていました。
え…?ええ。
我々が初めてお会いした時あなたはこうおっしゃいましたねぇ。
店で良くしてもらってた美穂を陥れるような事をそれも店のライターでタバコを吸いながら。
三島陽子さんがこのライターを持っている事をなぜご存じだったのでしょうか?それはだから法廷で映像が流れて…。
ええ確かに彼女はその映像でこれと似たようなライターを使っていました。
でも彼女はライターをこう持ってたんで店の名前まではわからなかったはずなんですよ。
にもかかわらずそれがお店のライターだとなぜあなたは断言できたのでしょう?それはこのライターを三島陽子さんが持っているのを見ていたからです。
しかしあなたは我々にこうおっしゃった。
三島陽子さんに会われた事があるんですね?いえありませんけど。
なぜ会った事を隠さなければならなかったのか。
それはこの店で三島陽子さんと会ったからですね?それも彼女の証言映像が法廷で流れた日の夜に…。
何があったのでしょう?すべて話していただけますか。
(堀添)娘は…美穂はやってない。
友章君を殺してはいない!
(堀添の声)だからどんな事をしても無実の娘を罪人にしてはならない…その思いだけで裁判を見守っていました。
(堀添の声)でもあの日あの女が美穂を犯人扱いしているような映像を見て美穂に世話になっていたくせにそんな証言をして絶対に許せないそう思いました。
(堀添の声)それであの女を呼び出して問い詰めました。
あなたの証言を裁判の映像で見ました。
(陽子)あああの映像流れたそうですね。
あなたの証言で美穂はどうなると思いますか?でもあれを見て裁判所に判断してもらうしかないですよね。
でも私ママの事ちょっと悪く言い過ぎちゃったかも。
もしそうだったらごめんなさいね。
ふざけるなー!
(陽子)あ…ああ…。
殺すつもりなんてなかった…。
三島陽子さんもあなたにそんな目に遭わされるとは思っていなかったでしょうねぇ。
(陽子)「ここまでやってきたお店だから絶対にやり遂げようって2人で誓い合って終わるんです」「仲いいですよ」「ケンカするほど仲がいいって言うじゃないですか」「それってきっとママとマスターの事です」これは…!?
(陽子)「まだ愛してるから期待してるんだって」「だから怒るんだって言うんですよ」「あげくにあなたも早くそういう人を見つけろって」「笑っちゃうでしょ?そんなママがマスターを殺すはずないですよ検事さん」彼女もまた美穂さんの無実を訴えていたんです。
そんな…。
私は…とんでもない事を…!驚きましたね…。
あなたが三島陽子の証言を編集した事で無実の被告人の父親が犯罪者になってしまいました。
無実の被告人…?何を言ってるんですか?椿友章を殺したのは椿美穂である事に…。
いいえ。
椿美穂さんは犯人ではありません。
三島陽子の遺留品です。
お店のオリジナルだそうですよ。
実はこれ椿友章が殺された月曜店に届けられたサンプルだったんですよ。
しかも1本だけ。
でその翌日から店はずっと閉まってます。
では彼女はいつこれを手にしたのでしょう?椿友章が殺された月曜の夜…。
ええそうとしか考えられませんよねぇ。
でも彼女はその日出勤日じゃない。
(鍋島)「なのにあなたにアルバイトをさせていた」「週末だけですけど」検事の聴取でも週末だけだって言ってましたよね。
勤務日でもない夜にそれも閉店した後友章さんに呼び出されたのでしょうか。
彼女は店に行ったんです。
その時すでに友章さんが殺されていたのなら第一発見者は三島陽子でなければつじつまは合わないんです!でもそうじゃない。
という事は椿友章さんを殺害した犯人は三島陽子である可能性が極めて高い。
そんな…。
動機は?男女のもつれ金…いろいろ推測できますが真相はわかりません。
警察と検察がそれをわからなくしてしまった…。
誤認逮捕に誤認起訴。
それさえなければ真犯人が殺される事も動機が不明になる事もなかったんです。
まるで警察と検察が事件を勝手に編集し動機の部分をカットしてしまったかのようですねぇ。
もともとは…お前ら警察が悪いんじゃないか。
こっちは警察の尻拭いをしてやったんだ。
警察の取り調べこそ録画録音すべきなんだよ!おっしゃるとおりでしょうね。
ただしその際は捜査側に都合のいい部分だけを公表してはいけない。
それを見聞きした人に大いなる誤解を与え新たなる犯行を起こさせないためにも。
了解しました。
では明日…はい失礼します。
鍋島検事からよ。
美穂さんの起訴を取り下げて事件を警察に戻したいのでその相談を私としたいそうです。
あ…じゃあこれは?もう私には必要ない。
警察の再捜査に役立てて。
はい。
恐らく三島陽子は検察で余計な供述をしていないかどうかを確かめるために録音していたのでしょうね。
だからその録音を私にも聞かせなかった。
でも美穂さんに罪を着せるような証言はしなかった。
そんな証言をすればかえって怪しまれる可能性が出る…そう思ったんでしょう。
録音するほど慎重だった彼女がかえって怪しまれるような真似をするとは思えません。
(泣き声)お話しになったのですね?彼女の父親が三島陽子を…。
彼女の味方である弁護人から言うべきだと思いました。
取り調べをした警察官と検事を訴えるおつもりですか?彼女の名誉回復のために警察官も検事も法廷に呼びます。
わかってるわ。
その手の裁判で取調担当官を法廷に呼ぶのがどんなに難しいか。
でもやりますよね武藤さんなら。
忙しくなるからこれで失礼するわ。
失礼します。
2015/09/24(木) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒 season6[再][字]
相棒シーズン6! 今回のゲストは松下由樹&石橋保!杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)の名コンビがあらゆる難事件に挑む!
詳細情報
◇番組内容
第9話「編集された殺人」
◇出演者
水谷豊・寺脇康文・鈴木砂羽
松下由樹・石橋保
川原和久・大谷亮介・山中崇史・山西惇・六角精児
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0x0818)
EventID:38915(0x9803)