VW不正:4年前に把握か…社内から指摘 独紙報道
毎日新聞 2015年09月27日 22時04分(最終更新 09月28日 00時39分)
【ベルリン中西啓介、ロンドン坂井隆之】ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)による排ガス規制逃れ問題で、2011年にVW社内の技術者が違法なソフトウエアがディーゼルエンジンに搭載されていることを指摘していたと独紙フランクフルター・アルゲマイネが27日報じた。ウィンターコルン前会長兼最高経営責任者(CEO)は「不正を関知していなかった」としているが、DPA通信は、事実なら経営幹部が刑事責任に問われる可能性があると伝えている。
同紙によると、技術者が4年前に不正を指摘していたことは今月25日に開かれたVWの監査役会(取締役会に相当)で報告されたという。だが、当時は社内のどのレベルの社員が事実関係を把握していたかや、どのような対応が取られたかは不明だという。
独紙ビルトも、ソフトを供給した独自動車部品メーカー大手のボッシュが07年、VWに書簡を送り、ソフトはテスト用に開発したもので市販車に装着しないよう警告していたと伝えた。装着した場合は違法になると明示していたという。
◇EUは2年前に…欧州車調査対応せず
この問題に関連して、欧州連合(EU)が13年に公表した欧州のディーゼル車対象の調査で違法ソフトの問題を把握しながら対応を怠っていたことも分かった。企業名は公表されなかったが、状況などからVWの可能性があり、EUの責任も問われそうだ。
EUの欧州委員会共同研究センターの報告書によると、センターが実施した小型ディーゼル乗用車に対する調査で、実際の走行時に排出される有害物質の窒素酸化物(NOx)の量が検査時の数値を大幅に上回る結果が出た。「車両に搭載されたセンサーと電子部品は、検査を感知して排出ガスをコントロールする能力がある」として、屋内の試験場でなく路上で走行させて検査を行うべきだとEUの規制当局に勧告していた。
EUは検査逃れのためのソフトを07年から違法と定めていた。欧州メディアは「(EU当局が)問題をしっかり追及しなかった」(英紙フィナンシャル・タイムズ)と批判している。EUは温室効果ガス削減のため、燃費性能が高く二酸化炭素(CO2)排出量が少ないディーゼル車の普及を後押ししてきた。
この問題を巡っては、米ウェストバージニア大が13年に実施したVW車に対する試験で、検査時と走行時の有害ガス排出量が大幅に異なることを確認し、14年5月に米環境保護局(EPA)に報告。EPAが今月18日、違法ソフトによるVWの規制逃れを発表した。