くらし☆解説「どうなる?消費税の“軽減税率”」 2015.09.24


生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
きょうは、こちらのテーマです。
消費税の軽減税率を巡って自民党と公明党は2つのまったく異なる案について並行して検討する事態になりました。
担当は今井純子解説委員です。
2つの異なる案があるというのはどういうことなんでしょうか?与党はもともと消費税率が10%に引き上げられるのに合わせて、2017年度にこの軽減税率を導入することを目指して検討を進めてきているんです。
もともと検討してきたのはこうした案です。
例えば消費税率が10%になったときに生活に欠かせない一部の品目を8%の低い税率のまま抑える。
これですと支払いの段階で誰もが低い税率の負担となりますので、それによって増税の痛みを和らげようという仕組みなんです。
こちらはヨーロッパや中国など世界の多くの国で導入されている一般的な軽減税率の形と言っていいと思います。
ですけれども日本では後ほど詳しく説明しますけれどもこうした案ですと、さまざまな問題が残るということで与党の協議が暗礁に乗り上げてしまってそこで財務省が今月になってまったく新しく示したのが日本型軽減税率と呼ばれる案なんです。
どういう案ですか?最大の特徴は後からお金が返ってくるということ。
そしてマイナンバー制度の個人番号カードが必要になるということなんです。
簡単に仕組みを説明しますと軽減税率の対象品目ですけれども酒を除くすべての飲み物と食料品が基本になります。
外食も対象になるんです。
ですけれども税率を8%のままにするといってもお金を払う段階ではいったん10%分を支払うんです。
例えば本体価格1000円のものを買いますと、その段階では消費税10%分の100円を合わせて支払うという具合です。
このとき必要になってくるのがこれから始まるマイナンバー制度の個人番号カードです。
レジでこのカードを読み取り機にかざしますとカードのICチップに対象品目についての消費税2%分この場合ですと20円分のポイントが蓄積されるんです。
一方、お店側はその情報を政府が新たに作るデータセンターに送ります。
そうすると、ここにポイントがたまっていくという形です。
そして一定の期間、あるいは一定のポイントがたまったあと消費者が自宅のパソコンなどから銀行などの口座を登録して申請しますと、その口座にそれまでたまっていたポイント分のお金が振り込まれるという仕組みなんです。
とにかくこのカードがないと返してもらえないわけですね。
還付を受けるには、いくつか条件がありましてそのうちの1つがマイナンバー制度の個人番号カードです。
これを持っていないとポイントをためることも還付を受けることもできないという点です。
このカードは来年1月以降交付されるんですがもらうかどうかは任意なんです。
自分で写真を撮ったりして送り返して申請しないと貰えないカードですね。
任意なんですが、これを持っていないと還付を受けられない。
そしてもう1つの条件は戻ってくるお金に上限があるという点です。
具体的な上限額はこれからの検討課題ですが赤ちゃんを含めて国民1人当たり年間に4000円程度を上限にするという案も出ています。
これは家族で合算することもできるんです。
なぜこういう案が出てきたんですか?もともとは一般的な軽減税率を導入する方向で検討を進めていたんですけれどもこの2つの大きな壁が立ち塞がってこれを乗り越えることができなかったからなんです。
どのような壁かというと1つ目が対象品目の線引きが難しいという点です。
与党は具体的には、この3つのケースを軸に検討を進めてきました。
ですが公明党が推す酒を除くすべての飲食料品を低い税率にしますと2%の増税で増える税収の4分の1にあたる1兆3000億円が入ってこない計算になるんです。
一方、財源が最も少なくて済む精米だけを対象にするとそれでは増税の痛みを和らげるには力不足ですよね。
中間をとって生鮮食料品にすると例えば米は8%だけれどもパンは10%というようにどれが低い税率でどれが高い税率か、消費者にとっては分かりにくく混乱が起きてしまう。
こうしたことからここから絞り込めずにいたんです。
2つ目は経済界の反対があったということですが。
消費税というのは消費者が支払った税金分を企業がいったん預かって納税する形をとるんです。
ここで商品によって税率が違うと事務手続きが複雑になって企業の負担が重すぎるというのが反対の理由なんです。
この2つの壁が障害となって与党の協議が暗礁に乗り上げてしまったんです。
そしてなんとか打開策を検討するように求められた財務省がひねり出したのが今回の新しい案というわけです。
個人番号カードを使うという案ですが、これだとこの課題を解決できるんでしょうか?財務省は、例えばお酒を除くすべての飲食料品を対象にすることで、線引きの難しさを解消できるんだとしていますし払い戻しをする金額に上限を設けることで税収が大幅に減るのを抑えられる。
さらに企業が預かって納税するのはすべて10%分になりますので事務の負担も小さくなる。
課題は解決できるんだとしています。
よく考えられていますけれどもそれでも買い物する側からすると毎回個人番号カードを出さなきゃいけないのはちょっとめんどくさいですね。
企業にとって使い勝手はよくなりますが消費者の目線で見ていくと問題がたくさんありますよね。
例えば支払いの段階で10%の負担をすることですよね。
財務省はレシートに戻ってくる金額が記入されるので増税の痛みが和らぐ効果があるんだとしているんですが実際に財布の中からは10%分出ていきますのでそのたびに痛みは感じますよね。
そして個人番号カードを持ち歩かなければポイントがたまらないという点さらにパソコンなどで、手続きをしないとお金が戻ってこないという点消費者の側からみると本当に面倒です。
さらにいろいろな疑問も浮かんできます。
例えば足が不自由で買い物をほかの人に頼む場合人にカードを預けて大丈夫なのか。
子どもにカードを持たせて大丈夫なのか。
自動販売機で買い物をした場合どうなるのか。
こういった心配が次々と出てきます。
これでは本当に対策が必要な弱い立場の人たちが恩恵を受けられるのかといった疑問も出てきます。
こうしたことから、NHKが今月行った世論調査でもこの案に反対と答えた人が51%に達したんです。
こうした声を受けて公明党などからは反対の声が相次ぎまして従来の軽減税率の案ももう一度テーブルの上に戻して与党で検討を進めていこうということになったんです。
それで今2つの案があるんですね。
今後どうなるんでしょうか?自民党、公明党双方がそれぞれこうした案について修正の案を出してきて検討を進めることになると思います。
ただ財務省の案を土台にするのであれば消費者にとって使い勝手が悪い点を相当改善して多くの国民が納得できる制度を作っていかなくてはいけないですよね。
そう簡単なことではないと思うんです。
一方もともとの軽減税率の案ということになっても、対象品目の絞り込みや企業の事務負担が重いという問題が残っています。
ただこれについては世界の多くの国がそれぞれの工夫で乗り越えてやっているという指摘もあります。
10%への増税は再来年4月に予定されていまして与党はそれに向けて、ことしの年末には具体的な制度をまとめたいとしています。
いずれの案を土台にするにしても政治が責任を持って決断をすること。
そして国民にきちんと丁寧に説明をして理解が得られる制度を作っていくことが必要になると思います。
今井純子解説委員でした。
2015/09/24(木) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「どうなる?消費税の“軽減税率”」[字]

NHK解説委員…今井純子,【司会】岩渕梢

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【出演】NHK解説委員…今井純子,【司会】岩渕梢

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ニュース/報道 – 解説
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情報/ワイドショー – 健康・医療

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