生字幕放送でお伝えします
大阪・寝屋川。
秋の連休も終わり、昼間のけん騒とは打って変わって、行き交う車も少なくなってきています。
今からちょうど6週間前の同じ木曜日。
中学1年生が、夜の街で過ごす中で、事件に巻き込まれ、その後、遺体で発見されました。
この時間、2人の少年と少女は、スマートフォンのLINEで、友達に、家に泊めてほしいと何度も頼んでいました。
あの夜、寝屋川は突然の大雨に見舞われていました。
それでも、自宅には帰ろうとしていませんでした。
地元の中学校に通う平田奈津美さん。
吹奏楽部の部活を頑張る、活発な女の子でした。
そして同級生の星野凌斗さん。
将来の夢を、人を助ける人になりたいと書く、優しい男の子でした。
あの夜、2人はこの2時間前、自宅から数百メートル離れた、このコンビニエンスストアの前にいました。
星野さんは、コンビニの入り口の辺りを行ったり来たりしていました。
平田さんは、ごみ箱の横の辺りで、遅い夕食なのか、カップラーメンを1本ずつすすっていました。
2人はその後、ここから1キロほど離れた、駅前の商店街に向かいます。
今、子どもたちの世界に何が起きているのか。
VTRと事件のあった夜と同時刻の生中継で見つめます。
事件について考え続けている人がいます。
ネットやスマホなど子どもたちの世界を見つめてきた竹内和雄さん。
事件が起きた寝屋川で20年間中学校の教師を務めてきました。
東京・渋谷で、子どもたちを支援する活動をしてきた女性もなぜ事件を防げなかったのか考え続けています。
NPO法人代表の橘ジュンさんです。
事件のあとも深夜に街をさまよう子どもたちに毎日のように出会います。
2人の模索を通して探る子どもたちの今。
そして、大人たちは子どもとどう向き合っていけばいいのか。
悲劇を繰り返さないために。
事件から1か月近くたった今月10日。
竹内和雄さんは亡くなった2人が通っていた中学校に向かっていました。
兵庫県立大学で子どもたちの心の問題を研究する竹内さん。
動揺している生徒たちに話をしてほしいと学校から依頼があったのです。
竹内さんは、10年前からネットやスマホに居場所を見つけるようになった子どもたちの世界を研究してきました。
これまで2万人以上の子どもたちと対話を続けてきた竹内さん。
今回の事件に、これまでにない衝撃を受けていました。
寝屋川で中学教師をしていた竹内さんは2人がいた夜の商店街を何度も歩いたことがありました。
なぜ、誰もいない夜の街をさまよっていたのか。
子どもの世界に大きな変化を感じるといいます。
大人から見えにくくなった子どもたち。
夜の渋谷で子どもたちを支援する活動を行うNPO代表の橘ジュンさんです。
街に死角がないかくまなく回る橘さん。
非行歴のない子どもが、夜の街をさまよう中で起きた事件に危機感を募らせています。
この夜橘さんが最初に声をかけたのは一見普通に見える女の子。
まだ中学2年生でした。
家族との折り合いが悪く深夜、1人で出歩くことが増えているといいます。
橘さんは連絡先を渡し何かあったらすぐに相談するよう伝えました。
高校時代夜の街で過ごすことが多かったという橘さん。
その経験から子どもたちの悩みや本音を伝えるフリーペーパーを10年前から作り始めました。
以前は深夜に、はいかいする子どもは髪型や服装で一目瞭然でした。
しかし今は、一見普通に見える子どもたちと夜の街で出くわすことが増えてきたといいます。
橘さんが最近出会った子どもたちの声です。
共働きや母子家庭の増加による家族の形の変化が子どもたちに影響しているのではないか。
橘さんは、悩みに寄り添っていきたいと、子どもたちを支援する活動を始めたのです。
この夜、橘さんは家に帰りたくないと相談してきた高校1年生の女子生徒と待ち合わせをしていました。
しかし、約束の時間になっても彼女の姿が見当たりません。
10分後。
約束とは違う場所で女子生徒が見つかりました。
知らない大人の男性に連れ去られそうになっていたといいます。
橘さんはこの女子生徒を一時的に事務所で保護することにしました。
橘さんと居場所のない子どもたちのいつもと変わらない夜です。
午前0時20分過ぎ、橘さんのNPOの事務所です。
毎週この時間は夜の10時から朝の4時まで、子どもたちからの電話の相談を受け付けています。
電話相談が始まって2時間余り。
すでに150件以上の着信が来ています。
メールからの相談も合わせますと、月に延べ2000件以上の相談が寄せられるといいます。
橘さん、具体的にどのような相談が、子どもたちから寄せられているんでしょうか?
そうですね。
いろいろなんですけれども、眠れないとか、夜が怖いとか、いろいろなんですけれども、いろいろ、本当に深刻な内容もあって、例えばこんな感じですね。
例えばどのような?
こうやって、今もまだホテルから出られないし、できないっていう、なんか、今すぐどうにかしなきゃっていう状況の女の子からだったりとか、あとは無理やり、車の中で、男の人に、傷つけられた様子の画像を送られてきたりですとか。
最近、どうして、子どもたちがこのような深刻なトラブルに巻き込まれやすいんでしょうか?
そうですね、家に居場所がない女の子たちっていうのは、自分がいられる場所っていうのを探してるんですね。
今、みんなスマホ持っていて、アプリとかも利用していて、例えば、こういうやつですね。
こういうアプリを利用して、身近な人、合いそうな人とつながってしまうんですね。
寝屋川で事件に巻き込まれた2人の中学生。
2人も夜の街で友達とスマホのLINEでやり取りしながら過ごしていました。
スマホに居場所を求める子どもたち。
この日、橘さんが話を聞くことになった女子生徒はスマホを巡ってトラブルに巻き込まれていました。
高校1年生の女子生徒は父親と2人暮らし。
父親は仕事で深夜帰宅が多く食事を一緒にとることもほとんどないといいます。
かわいそう。
どうしたらいいかな。
自分に構ってほしいと短い家出や深夜の、はいかいを繰り返しましたが忙しい父親から心配されることはありませんでした。
そのとき女子生徒が救いを求めたのがスマホでした。
よく利用するというアプリ。
GPS機能で自分の近くにいる人が自動的に顔写真付きで表示されます。
女子生徒のもとにはすぐに多くの人からメッセージが寄せられました。
見ず知らずの人との会話でも心が癒やされたといいます。
しかし、知り合った男性から性的な関係を強要されたことが何度もありました。
夜の街やスマホに居場所を求める子どもたち。
平田さんと星野さんの2人は、事件当日のこの時刻、大雨が降る中、先ほどのコンビニから、ここ、京阪電車寝屋川市駅前の商店街に来ていました。
あの夜もきょうと同じように、ほとんど人通りはありませんでした。
2人の姿は、ちょうどあの防犯カメラに記録されていました。
午前1時8分、傘を持って自転車に乗った平田さんの姿が映されています。
その3分後、平田さんと星野さんの2人の姿が記録されています。
平田さんは、地面に座り、何かをのぞき込んでいるように見えます。
さらに、別の所でも、何かをのぞき込むような姿が記録されています。
平田さんがのぞき込んでいたのは、電源のコンセントでした。
友達とのLINEで使っていたスマホを充電したかったのか、電源を必死に探していたように見られます。
当日午前5時、2人は、このベンチで傘を差し、うつむいて座っていたところを複数の人に目撃されています。
しかし、家に帰るよう促す人はいませんでした。
そして2人は、事件に巻き込まれたと見られています。
兵庫県立大学准教授の竹内和雄さんです。
事件のあと全国各地で講演を行い、大人の子どもに対する責任について問いかけ続けています。
なぜ、竹内さんは今回の事件に打ちのめされているのか。
竹内さんは寝屋川市で中学校の教師をしていた10年前ある事件に直面していました。
2005年市内の小学校に侵入した男が教師3人を殺傷するという事件。
犯人は…中学時代、決して非行に走っていたわけではなかったという少年。
ゲームやネットに依存する中で不登校になっていました。
少年の悩みに気付けなかったという悔い。
竹内さんは殺傷事件の2年後教師を辞めました。
そして当時普及し始めたスマホと子どもたちの世界の関係を調査し始めました。
子どもの悩みを聞くとスマホにまつわることが多くを占めていました。
子どもの世界を知れば知るほどこれまでの考え方では悲劇を防ぐことができないと痛感しています。
どうすれば見えにくくなった子どもたちに寄り添えるのか。
今、NPO代表の橘ジュンさんは新たな居場所作りに力を入れ始めています。
ことしからNPOに相談を寄せた子どもたちを集めた合宿を毎月、行っています。
この日参加したのは3人。
皆、家出や、はいかいをしたことがあるといいます。
母子家庭で育ったというこの女子生徒は、母親が忙しくふだんはキャベツだけで空腹をしのぐこともあるといいます。
いいんじゃない、それで。
もう、やだ、だめだ。
上手だよ。
いただきます。
家族で当たり前に食卓を囲むことがなくなった今の子どもたち。
うまい、うまい。
どう?
バイバイ、元気でね。
どうすれば子どもたちにとって安全で安心して過ごせる居場所を作れるのか。
バイバイ。
ああ、見える。
かわいい。
橘さんは試行錯誤を続けたいと考えています。
中学生が巻き込まれた今回の事件。
今、兵庫県立大学の竹内さんは活動の場を広げなければならないと考えています。
この日、竹内さんが訪れたのは神戸市内の小学校。
スマホの危険性などを子どもたちと一緒に考える出前授業です。
小学生の4割近くが、スマホや携帯電話を所持しているという今。
もっと小さな子どもたちに働きかけなければいけないという思いを強くしています。
子どもたちの未来が奪われないために何をしていくべきなのか。
ここやな、ここから入る。
教え子が殺傷事件を起こした寝屋川の小学校を訪れる竹内さん。
答えは出なくても、考え続けていきたいと決意しています。
それぐらいやわ、ごめん。
ごめんこれぐらいしか言われへんわ。
♪〜
(マイケル)
これは極東の国日本を訪れた2015/09/24(木) 00:10〜00:40
NHK総合1・神戸
NEXT 未来のために「シリーズ大阪中1殺害事件(1)子どもたちの世界に何が」[字]
先月、大阪で起きた中学一年生が殺害される事件。いま子どもたちの世界に何が起きているのか。VTRと生中継によるドキュメントで、悲劇を繰り返さないための道筋を探る。
詳細情報
番組内容
先月、大阪で起きた中学一年生が殺害された事件。2人の少年少女は、夜の街で過ごす中で、事件に巻き込まれた。子どもたちの世界に何が起きているのか。2人と同じ寝屋川市で暮らす元教師、そして渋谷で子どもたちの見守りを続けるNPOの代表、2人の活動を通して、悲劇を繰り返させないための道筋を探る。VTRと生中継を交互に折りまぜて、これまでにないドキュメンタリー。
出演者
【リポーター】登坂淳一
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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