歴史秘話ヒストリア「きっと会える!大好きな人に〜渋谷とハチ公 真実の物語」 2015.09.23


渋谷のシンボル忠犬ハチ公像。
ハチは今からおよそ80年前日本中をとりこにしました。
主人の死後もその帰りを待ち続けた物語はあまりに有名。
人々はけなげな姿に心を打たれます。
やがて渋谷の町でわき起こる…当時の関係者の証言からハチ公像誕生の秘密に迫ります。
太平洋戦争が始まると武器の材料にするため日本中の銅像が供出されました。
それはついにハチ公像にも…。
ハチを失った渋谷の町。
しかし戦争が終わると人々は立ち上がります。
俺たちのハチ公像を再建しよう!制作に名乗りを上げたのはハチの無二の親友。
そういう気持ちでいっぱいでしたね。
80年間渋谷で愛されてきた忠犬ハチ公をめぐる真実の物語です。
秋田県北部の町大館。
ハチの生まれ故郷です。
秋田・大館の駅前です。
犬がいるんですよほら忠犬ハチ公。
え〜!この大館にもハチ公像ってあるんですね。
すっくとして何か見据えている。
これはかなり精悍な感じがしますよ。
渋谷駅の銅像よりも若い頃のハチをモチーフにしたものなんだそうです。
バスの名前は「ハチ公号」。
「ハチ公神社」なるものまで。
おさい銭を入れると…。
ここにも犬ハチ公。
これもハチ公ですよ。
なんと公衆トイレもハチ公。
本当に愛されてますね。
市内には今もハチの生家があると聞き訪ねました。
(鳴き声)はるか。
何歳ですか?「秋田犬」とはその名のとおり秋田原産の日本犬です。
特徴は…そして…一度懐くとどこまでも飼い主に忠実だと言われています。
おめえ東京さ行けっぞ。
帝国大学のお偉い先生がおめえをもらってくれるんだど。
よがったなあ。
(汽笛)ハチは汽車に乗せられふるさとを遠く離れた地へ旅立ちます。
お邪魔いたします!おっ。
こんにちは。
先生かねてお頼みのあった小犬1匹お届けにまいりやした。
どれどれ?この人は上野英三郎博士。
東京帝国大学の教授でハチの新しいご主人様です。
(上野)まずは名前だな。
そうだわ。
ハチ…「ハチ」って名前よろしくなくって?
(上野)ハチ…。
そうかお前の名前はハチだ。
どうだ気に入ったか?よ〜しよしよし。
上野家でのハチの暮らしがどのようなものだったのか。
それを知る手がかりが残されています。
(松井)こちらが「忠犬ハチ公物語」という本になります。
ハチと同時代に出版された小説。
関係者への詳細な取材に基づいて書かれた一級の資料です。
「忠犬ハチ公物語」にはこんな記述があります。
あなた!どうしたんです?こんな夜中に。
ハチ大丈夫か?今寝かせてやるからな。
まあハチを布団に寝かせたりして!幼い頃のハチは体が弱く頻繁に熱を出したりおなかを壊したりしました。
上野先生はその度に徹夜で看病します。
(上野)ハチこれでもう大丈夫だぞ。
ハチどこ行った?あっいたいた!上野先生の愛情をたっぷり受けハチはすくすくと成長していきました。
程なくハチに大事な仕事ができます。
それは…その時に利用したのが最寄りの渋谷駅です。
ハチありがとう。
じゃあ行ってくるよ。
朝渋谷駅に先生を送ったハチ。
このあと一旦家に戻ります。
そして夕方になると…。
再び駅でお出迎えです。
ハチ。
今日も行儀よくして待ってたか?そうかそうか。
よしよし。
ハチへのご褒美が駅前の屋台の焼き鳥。
ずっと待ってたからおなかがすいたろう。
さあお食べ。
うまいか?この犬いつも先生をお迎えに来てますね。
まったく利口な子だ。
そうだろ?犬っていうより私の自慢の息子だ。
なあハチ。
ハチにとって渋谷駅は大好きな上野先生と過ごす大切な場所になっていきました。
しかし幸せな時は突如終わりを告げます。
先生!先生!先生…。
先生!上野先生が仕事中脳内出血で倒れ帰らぬ人になってしまったのです。
ハチは住みなれた上野家を追い出されます。
上野先生と妻の八重子は駆け落ち同然で一緒になったため…ハチごめんなさいね。
もう私たちはこの家にはいられないのよ…。
その後…しかしこの家からハチは度々姿を消すようになりました。
心の声ハチ?ハチが現れたのはそう渋谷駅です。
ハチ!またここにいたの?いくら連れ帰ってもハチは駅に舞い戻ったといいます。
ここでいくら待っていてもあの人はもうお帰りにならないのよ。
やがて八重子はある決断をします。
駅に通うハチの負担を少しでも減らしてやりたいと考えたからです。
この日からハチは雨の日も風の日も朝夕2回渋谷駅に通い続けます。
時には大変な目にも…。
(犬の吠え声)野犬に襲われ耳に大けがを負ってしまいます。
その傷がもとでまっすぐに立っていた左耳が垂れ下がってしまいました。
更に命を落としかける事すらありました。
野良犬と間違えられ捕まってしまったのです。
この時はたまたまハチを知る近所の巡査が見つけすんでのところで助け出されました。
ハチを預かっていた家の娘丹生ヨシ子さん。
当時のハチの様子をよく覚えています。
結構皮膚病がひどかったからね皮膚病にいいとかっていって…大好きな上野先生に会いたい。
JR渋谷駅前です。
ハチが上野先生を待っていたのはこちら。
現在のハチ公改札の辺りです。
今渋谷では百貨店などでハチ公グッズが売られるほどの大人気。
誰もが知っている存在です。
しかしここで待ち始めた頃のハチは野良犬と勘違いされ追い払われる事もあったようです。
ところがある事をきっかけにハチの運命が変わります。
昭和7年秋。
ハチに転機が訪れます。
これをきっかけに渋谷駅のハチは一躍「時の犬」になります。
お前ご主人をずっと待ってるんだってな。
偉いなあ。
俺たちも何かハチの手助けをしてやりたいなあ。
主人の帰りをずっと待ち続けるハチの姿は人々の心を動かします。
子供の頃駅前でハチを見たと言います。
今や渋谷にとって欠かせない存在となったハチ。
人々はハチの姿を後世に残そうとある計画を考えます。
制作を担当したのは彫刻家の安藤照。
安藤ゆかりのアトリエ。
銅像のモデルになるためアトリエにやって来たハチの世話をしていました。
ハチ大丈夫?ちゃんと立てる?士。
ハチはもうおじいちゃんなんだから辛抱して待つ事にしよう。
照は制作にあたって…ハチ。
そんなある日の事。
突然すっくと立ち上がったハチ。
どうした?ハチ急に。
その姿はまさに力あふれるりりしいものだったといいます。
ごめんください。
(照)あぁこんにちは。
現れたのは上野先生の妻八重子でした。
皆様大変お待たせしました。
今からハチ公像の除幕式を行います!
(歓声と拍手)
(歓声と拍手)新しい渋谷のシンボルの誕生です。
ハチ公像を一目見ようと何百という人が詰めかけ会場は身動き一つできないほど。
実は…自分の像を不思議そうに見上げるハチ。
一体何を思っていたのでしょうか。
人間でいうとかなりの高齢。
自宅に戻る事すらままならなくなっていました。
ハチのやつ最近元気ねえな。
どっか具合でも悪いんじゃないか?もう結構な年だろうしなあ。
年老いたハチを心配した町の人々はハチに助けの手を差し伸べます。
「忠犬ハチ公記録」。
渋谷駅の職員が記したものです。
渋谷駅では駅員の中からハチ担当の世話役が選ばれました。
ハチ寒かったろう。
すぐに暖かくなるからな。
「ハチ公記録」にはハチが急病で倒れた時の様子が記されています。
ハチ?ハチ?どうした?苦しいのか?ちょっと待ってろ。
すぐ医者呼んできてやる。
呼ばれた獣医の適切な処置のおかげでハチは一命を取り留めました。
この時の獣医の息子大浦敬一さんです。
この写真が…大浦豊さんはハチの治療のため何度も渋谷駅に通いました。
ハチの近況は新聞で報じられ全国から応援の手紙が寄せられます。
「新聞にハチ公はもう長くもたないと書いてありました。
どうかハチ公を大切にしてやって下さい」。
「これは僕等の今日のおやつだいですがこれでハチ公におくすりを買ってあげて下さい」。
周囲の温かい助けに支えられながらハチは渋谷駅で上野先生の帰りを待ち続けたのです。
・ハチ…。
・ハチ…。
この日ハチはいつもと違う時間真夜中に駅の改札へ向かいました。
ハチ…。
ハチ…。
そしてついに力尽きその場に倒れます。
ハチ…。
随分待たせたね。
本当に悪かった。
さあおいで。
一緒に帰ろう。
安らかに息を引き取ったハチ。
愛する人を待ち続けた10年間でした。
ハチの主人上野英三郎博士のお墓があります。
そのすぐそばにハチも大好きな先生と一緒に眠っています。
しかしハチのお話はこれで終わりではありません。
「歴史秘話ヒストリア」。
渋谷の人たちとハチの知られざる物語です。
ハチが死んだ昭和10年に使われ始めた小学校の教科書です。
ここにはハチの事が取り上げられています。
「10年たっても飼い主を探している年を取ったハチの姿が毎日駅の前に見られました」。
表題は…ハチは主人から受けた恩を決して忘れず死ぬまで主人に尽くした「忠犬」として描かれています。
(砲声)ハチが生きた昭和初期は日本が戦争へ傾きつつあった時代でした。
昭和6年満州事変が勃発。
日本は戦いの道をひた走る事になります。
こうした中叫ばれたのが国家への忠誠心です。
動物と社会の関係を歴史的に研究する溝口元さんはハチの話は子供たちに国への忠誠心を教えるための格好の題材だったと考えています。
ハチの死から2年後の昭和12年。
日中戦争が勃発。
武器などの生産に必要な金属資源を確保するため金属類回収令が公布されます。
東京・丸の内にあった徳川家康像や仙台の伊達政宗像も回収され溶かされてしまいます。
そうした中ついに渋谷のハチ公像も回収される事になります。
なんとかしてハチを守りたい。
人々は国に訴えました。
必要な分の銅は他の方法で集めます。
どうかハチ公の像だけはご容赦下さい。
しかし駅前のあれだけ目立つ場所にある銅像をこのまま捨て置いては皆に示しがつかんだろう。
ハチ公像は特別なものなんです。
訴えの結果ある妥協案がまとまります。
ハチ公像の回収に合わせ盛大な式典が開かれます。
像には日の丸の旗が巻きつけられ多くの人が見送る中渋谷駅から去っていきました。
この時の様子は新聞各紙に取り上げられ日本中に宣伝されます。
「『ハチ公』誉れの出陣」。
日頃のハチの姿を実際に見てきた人たちの胸の内は複雑でした。
このあとハチ公像には悲しい結末が待っていました。
こうして人々に愛されてきたハチ公像は失われました。
(玉音放送)渋谷の町も空襲で焼け野原になりました。
全てを失い悲嘆に暮れる人々。
その中から声があがります。
商店街の人たちが中心となって…新しいハチ公像を自分の手でつくりたいと名乗りを上げた人がいます。
安藤士さん。
初代ハチ公像をつくった安藤照の長男です。
彫刻家となっていました。
空襲で命を落とした父・照に代わり自らが2代目ハチ公像を手がけたいと考えたのです。
ハチ大丈夫?士さんの脳裏に浮かんだもの。
それは少年の頃一緒に過ごしたハチとの思い出でした。
士さんが新たなハチ公像に込めようとしたのは「忠犬」という言葉では語り尽くせないハチの本当の姿です。
「真実」っていうのは本当のですね…制作は順調に進み原型の粘土像が完成。
あとは型を取って銅を流し込むだけというところで…このままでは再建を諦めなければならない。
士さんは苦渋の決断をします。
心の声おやじあれを使わせてもらうよ。
ハチ公像再建の切り札それは父・照が残した作品でした。
供出を免れて家にあった父の形見とも言える銅像の大作です。
この像を溶かしハチ公像をつくる事にしたのです。
そういう気持ちもありましたから。
終戦からちょうど3年がたったこの日。
2代目ハチ公像の除幕式が行われました。
4年ぶりに渋谷駅に戻ったハチを人々は笑顔で迎えました。
2代目ハチ公像。
どこか穏やかな優しさに満ちあふれた表情でハチは今も大好きな人を待ち続けています。
今宵の「歴史秘話ヒストリア」。
最後は…そんなお話でお別れです。
それではどうぞ!東京大学のハチ公像。
ハチと上野先生が渋谷駅で出会う瞬間を表したものです。
優しくほほ笑みかける上野先生。
その先にはうれしそうなハチの姿があります。
これが上野先生とハチとの絆を表しているんですごく心温まる場面だというふうにも。
上野先生を待ち続けて90年。
ようやく大好きな先生に会う事ができました。
渋谷駅のハチ公像。
67年間駅前で町の発展を見守ってきました。
ハチ公像をつくった彫刻家の安藤士さん。
像にある工夫をしたと言います。
それは台座の高さです。
なでられてツルツルになった前足。
ハチが渋谷の人たちと共に在り続けた証しです。
もうなくてはならないものだと思います。
シンボルですよね渋谷の。
もうシンボルですよね。
私も前学生時代からここで待ち合わせをしたりとかそういう思い出があるので何か渋谷というとハチ公。
愛する人を待ち続けたハチ。
今その像は待ち合わせ場所として多くの人に親しまれています。
ここに来れば大好きな人にきっと会える。
ハチは今日も渋谷の駅前でそう語りかけています。
2015/09/23(水) 22:00〜22:45
NHK総合1・神戸
歴史秘話ヒストリア「きっと会える!大好きな人に〜渋谷とハチ公 真実の物語」[解][字]

渋谷駅のシンボル忠犬ハチ公像。ハチは本当に忠犬だったのか?ハチ没後80年の今年、関係者の証言などから“本当のハチ公物語”を送る。人と犬の垣根を越えた感動秘話。

詳細情報
番組内容
渋谷駅のシンボル忠犬ハチ公像。今年はハチの没後80年。主人の死後もその恩を忘れず、駅前で帰りを待ち続けた忠犬物語はあまりにも有名だ。しかし当時の関係者たちが語る“本当の”ハチ公物語には、単なる“忠犬”という言葉では語り尽くせない物語の続きがあった。ハチを必死で支えた町の人々の愛、そしてその死後も、町のシンボルとしてハチ公像を守りぬこうとした人々の熱い思い。あなたの知らない本当のハチ公物語。
出演者
【キャスター】渡邊あゆみ

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
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