なるほど。
自分好みに置き換えてアレンジ楽しめそうですね。
次回は定番サラダに飽きたら是非!人気のエスニックサラダをご紹介します
「斜陽」の作者太宰治は多くの作家が沈黙した戦時中も多彩な作品を発表し続けました。
戦争の時代に書かれたとは思えないユーモアにあふれた作品。
まるでコントのようでいてなぜか心に残る物語。
笑えるけどハッともするし何だこれはっていう。
「斜陽」第4回又吉直樹さんと共に太宰文学の魅力を語り合います。
(テーマ音楽)「100分de名著」司会の…さあ太宰治の「斜陽」読んでおります。
前回の「だめんず」も面白かったですがとうとう最終回に来てしまいました。
なっちゃいましたね。
講師の先生は作家の高橋源一郎さんです。
どうぞよろしくお願いいたします。
そして今回はもう一方。
太宰治をこよなく愛するスペシャルゲストをお招きいたしました。
又吉直樹さんです。
どうぞ。
ようこそお越し下さいました。
(伊集院)おめでとうございます。
とりあえずそれを言わないと。
ありがとうございます。
これ別に芥川賞受賞の前に決まってたんですよね。
そうですそうです。
予約してた物件の値段が上がってこっちは相当ありがたいんですけど。
太宰治の大ファンでらっしゃるという事を公言してらっしゃいますもんね。
はい。
なかなか太宰を好きと言うのは本好きの間では割と勇気が要る事なんですけど。
ちょっとベタすぎてって事?そうですそうです。
サッカーむちゃくちゃ詳しいですよとか言いながら一番好きな選手マラドーナって言うみたいな。
なるほど。
お笑いコンビピースとして活躍。
あっ僕金属アレルギーだから。
あっそうか要らないか。
そのかたわらで執筆した初の長編小説「火花」で芥川賞を受賞しました。
そんな又吉さんが敬愛するのが太宰治。
その出会いは中学生の時に読んだ「人間失格」だったといいます。
又吉さんに「斜陽」はどう映ったのでしょうか?正直一番最初読んだ時は難しいって感じたんですよね。
というのも「人間失格」の主人公の大庭葉蔵ってそのまま太宰と雰囲気が重なるんで太宰の言葉として声として読めるんですけど女性のその独白体になった途端にどう読んだらいいか分からんようになってしまって。
それに出てくる直治いますよね。
あそこにすごい共感当時したんですよね。
だめんず。
だめんず1。
やっぱり直治っていうのは高橋さんの言葉も借りてばっかりだけど太宰治の若い頃のまあ分身と言えば分身。
まさに若い頃だから読んでるのがこれだっていう。
それがもうどんぴしゃで。
当時自分の話になるんですけど中学とか高校の頃にノートに書いてた暗いちょっとポエムっぽいフレーズって大人になったら恥ずかしいじゃないですか。
芸人になったらネタの中で痛い発言としてその自分の言葉を入れると割とリアリティーあって受けるんですよ。
笑ってる人と僕も同じ距離でこの言葉僕もバカにしてますからねというふりしてるんですけど…ネタとして出してるんだから笑ってもらって最高なんだけどでもちょっとあれはほんとの俺でもあるから。
どっかの誰かにはストレートに刺さらんかなと思ってるんですよ。
だから直治の言葉もそのかず子とか上原の目線で見るとすごく若いしああ青春ですねというふうな読み方もできるんですけど。
やっぱ僕はいまだにいやもうこの瞬間この直治の感じた事はこれ偽りない事やからという目線もまだあるんですね。
第3夜の事なんですけど直治は「中二病」だという話を高橋さんがおっしゃったんですよ。
ところが高橋さん知らなくて言ったんですけど…そうですよね。
えっ!中二病って言葉は今人をばかにするように使われてるけど僕はそうじゃないんです。
「俺はそうなんだ」という。
その俺を笑って下さいみんなで笑いましょうって思って作ったけどあれを人を揶揄する言葉としてだけ使われるとすごく僕複雑になるんですね。
でも直治中二病の固まりですよねあれって。
魅力的で興味深くて…でいてちょっと恥ずかしい痛いやつっていう。
何かすごい今他のどのお笑いの後輩と話す時よりも何かこの人と僕は一緒の職業をしてるって思いたい感じになった。
はい。
「斜陽」という作品は又吉さんが最初に違和感を覚えられた女性の語りで書いてあるという。
(又吉)そうですね。
後々太宰のいろんな短編を読んでいく中で…それがすごい面白いものがたくさんあるんですよね。
ほんとにハッとするような表現もあって。
それをちょっと読んだあとに「斜陽」をもう一回読み直すと何となくこう読み方が分かってきて。
今回また改めて読んだんですけどあの短編のあの部分がそのまま何かあるとか。
太宰治は女性が語り手となる作品を数多く残しています。
例えば実際の女学生の日記を元に繊細で移ろいやすい心情を取りとめなくつづった「女生徒」。
「おさん」では愛人がいる事を隠す夫を冷めた目で見つめる妻が描かれます。
僕これ初めて知りましたけどとてつもなく変な事に気付きました。
何に気付きました?俺が伸び悩んでマツコ・デラックスが超売れる理由。
いやいや何で?要するにマツコ・デラックスさんって言ってる事の本質の中にかなり男性の事はいっぱいあるの。
だけど女性の声でしかも女性フィルターを少し通してくる事でとても面白くとても突き刺さるという事がちょっと。
僕が今言ってる事は半分冗談だけど半分本当に思うのは。
むちゃくちゃそうじゃないですか。
男の都合のいい事が結構入ってくるから男のセリフとして書かれちゃったら全然入ってこないですよ。
分かった分かったという話だから。
伊集院さんがおっしゃってるように男性がそのまま「自分はこう思ってる」って言うよりも一個女性を経由する事によって客観的に自分というか男性を見直せるというのがあると思うんですよね。
僕学生時代に母親が自分の事を書くみたいな高校時代に何か文章であって。
これ提出してって言って書いてもらったのを見たら何て言うんですかね親の僕に対する愛情あふれすぎててめちゃめちゃええように書いてるんですよ。
しかも僕が周りの同級生に見られたい自分として書いてないんですよ。
最後の方勉強頑張ったとかそこじゃなくて。
もうちょっと何かアホに書いてほしいし。
それで僕全部書き直したんですよ自分で。
自分で書いた方が自分に厳しく書けるんですよ。
母親の目線を通して。
同級生が見た時に「なんやねんお前のオカン」ともならんし。
ちょうどいいバランスでだけど全部否定するんじゃなくてそんだけ厳しい事を言ったりするからこそここだけは譲られへんっていう一個ここは俺頑張ってんというのをやっぱり入れやすいんですよね。
うわっそれはとても面白いな。
面白い。
今初めて思いましたよ。
今の今まで太宰的というのは暗い事だと僕は思ってた。
私も思ってました!切り口としては。
「これ太宰的だね」というのはそういうくよくよしてる事だと思ってたけどここも太宰的なんですねこの女性フィルター。
もともと日本の文化の中に女性の声を使うというのがあって。
これ有名なんですが…でも男は漢文を書かなきゃいけなかったんで…平仮名を使って書いたという伝統があるんですけども。
太宰もやっぱりかず子も「ほんとうのこと」を言う人ね。
男に対して女性が「ほんとうのこと」を言う。
彼はね実際に「女生徒」も日記を使ったり太田静子の日記を使ったりした。
女性ってなんて寛大で生命力にあふれているんだろうって自分で書きながら気付いてったんじゃないかと思う。
これ仮定ですけどじゃあ女性目線じゃなくて「斜陽」を書いてたら。
かず子の一人称じゃなくて書くとしたらつまり説得力が無くなっちゃうじゃない。
かず子が何を言ってもつまり彼の男の目から見た女性。
そうか上原が例えば主人公だと都合のいい女が来てやばいなおい妊娠しちゃったよってなってしかもおいおいでも自分で育てるって言ってるぞみたいな。
とても下世話な説得力のない。
女性が嫌悪感を抱くような描かれ方になりますよね。
それが一旦経由してる事でこれだけ広がるっていうか。
さて又吉さんが太宰の本質が凝縮していると感じる作品があるそうですね?はい。
「斜陽」と同じ名前の和子の一人語りで女性が作家に会いに行くという所も設定的には似てるんですよね。
「恥」は和子という女性が小説家戸田に会いに行きとても恥ずかしい思いをしたという話。
和子は戸田の小説を読みそこに出てくる貧乏で破滅的な男が戸田そのものだと思い込んでいました。
ある時和子は戸田の小説にまるで自分をモデルにしたかのような女性が出てきて驚きます。
なぜ戸田は自分の事を知っているのか。
和子は戸田に会いに行く事にしました。
貧乏に違いない戸田を気遣いわざとみすぼらしい身なりもしました。
しかし訪ねてみると戸田は貧乏どころか立派な書斎に座る端正な男。
和子は急に自分が恥ずかしくなります。
自分の勘違いを思い知らされ和子は恥ずかしさいっぱいで逃げ帰りました。
人の屑だわ本当に。
「モデル使いません」とか言って。
これ語弊があるかもしれないけど「斜陽」がちゃんと長い演劇なのに対してこれショートコントみたいな。
破滅的な作家がいるから「あなたみたいな人には女性ファンつかないよ」という手紙を書いたりして会いに行くんですよ。
あんまりきれいにしていったらあれなんで差し歯抜いたり一番汚い格好していったら相手がめっちゃちゃんとしてたという。
うわうわうそつきやってなるんですけど。
でもここが複雑なところで太宰はこの「恥」で書かれているほんとはちゃんとしてますよ…でもないんですよ。
どれがどれが本当かが分からなくて。
この途中に出てくる「僕は小説には絶対にモデルを使いません。
全部フィクションです」ってこれもう大うそじゃないですか。
大うそですよね。
複合的に自分の思ってる事であったりとか面白いと思う物語を描いてたっていう事の何か証明になるような。
この短編で分かるんじゃないかなと思うんですよね。
極めてコントなのにかなり本音の「読者って本当の僕を分かってくれてるわけがない」みたいなところも入れてたりするでしょう。
これ完全に恥をかかされてるんですけどかと言ってこの女性をばかだと言ってるわけじゃないしみんなそういう事もあるかもしれないしってなっていく。
更には又吉君が言うみたいにいや実際の太宰は逆にこうじゃないって考えてくとむしろそこまで入れちゃうとこれは太宰の恥だったりもするという。
でも聞いててちょっとだけやべえ「火花」読みたいなってなっちゃうのは題材が自分の事つまりお笑いであり漫才なんだってなった時に何か私小説だと思っちゃうよね。
…でいてみんなきっと「あれは又吉君ですよね」って言うよねきっと読めば。
はい。
でも今言ったような事なんだよやっぱり。
まんまのわけがないじゃんというか。
(又吉)そうですね。
そうやって自分の中のものを出しつつちょっとそうじゃないものを混ぜたりとか。
自分の中のものを極端に切る事で何か作った物語を話したり書いたりするでしょ。
それに巻き込まれたり吸い込まれたりはしていかないの?そこを結構気を付けるというか。
編集の人とかに読んでもらった時に「ここ笑いました」って言われたら笑ったという事はそのボケは僕なんじゃないかって。
それは僕自意識過剰なんですけど僕はその登場人物より僕の方が芸歴重ねてるんで面白いっていう。
(伊集院)でもそこはほんとにこんがらがるよね。
それ精神衛生上よくないとこにちょっと行くでしょ。
そしたら僕はそういうボケは完全に自分かもしれないと思ったものは排除していきました。
その距離感みたいなのは自分が分からんように。
まあどっかでは完全に重なる部分もあるしまた離れる部分もそれは皆さん一緒やと思うんですけど。
でも僕はこの「斜陽」で太宰が上原として直治としてこう死に向かっていくじゃないですか。
その事と本当に死んでいく事とこう関係があるのかなという。
引っ張られるというのはこのキャラクターに引っ張られていくというか。
太宰は最後まあ死んじゃうんですけども…彼自身は僕はもしかしたら生き延びて書きたいと思ったかもしれないんだけれども作品の中ではどんどん死に近づいていく。
そうすると確かに引っ張られますけどね。
でもそこまで近づいていかないとこの彼が育てたキャラは動いてくれない。
だからそういう意味では…さあ高橋さんにもですね太宰の魅力を語る上で重要だと思う作品を挙げて頂きました。
もちろんたくさんあるんですけれども僕は大好きなこの「お伽草紙」という作品ですね。
これはあの昭和20年東京大空襲があった真っただ中で書かれて冒頭の部分にあるんですけどね空襲警報が鳴ってる中で子供たちに話をするという体で書かれています。
防空壕の中で子供に昔話の絵本を読み聞かせている作家。
昔話はどのように解釈すれば今の人にも納得がいくのか。
作家は現代的な感性でそれぞれの話を語り直していきます。
例えばあの「カチカチ山」だとうさぎとたぬきですよね。
おばあさんがたぬきに食べられちゃったのでその復讐のためにうさぎが復讐に行くんですけどその復讐がたぬきが背負った薪に火をつけられてやけどをしてですね。
やけどした上にそこにからしを塗り。
とうがらしみそを塗られ。
最後は泥舟で沈められる。
太宰がそこは解釈してる。
そうですよね残酷ですよね。
これはまた太宰の解釈なんですよ。
面白い。
しかもそんなに延々とねちねちするような相手って誰だ。
それは30代の醜男に無理やり好かれちゃう。
ストーカーみたいな男になってるから。
求愛をするんだけどうさぎである女の子は徹底的に軽蔑しててキモいこのおやじって言って。
私のようなかわいい子に好きとか言ってああ気持ち悪い。
何とかひどい目に遭わせてやろうという話になってるの。
読んでるうちにもうたぬきが気の毒で気の毒で。
これはもちろん又吉君も。
はい。
でもね読んでると笑えますよね。
そうそう笑える。
笑える話で面白くて。
僕がすごいと思うのはやっぱりこの「お伽草紙」に入っていく前の防空壕で娘に語るんですけどそこの冒頭の部分の書き方がすごいおしゃれというかかっこよくて。
自分はその物語を作る仕事やからさてどういうふうになるかみたいな入りなんですよ。
だから今からこの題材で…芸人で言うところの「めっちゃおもろい漫才しますよ」という。
僕はそういうふうにうわすごい…。
上げてきたと。
ほんでおもろいんかいという。
これは昔話を使っています。
あと「新釈諸国噺」という井原西鶴のお話をアレンジしたのもあるし「走れメロス」も古いお話を。
普通文学というのはオリジナルが一番偉くて過去の作品をリメイクするみたいのはちょっと二流みたいな感じがやっぱりずっとあった中でいやいいじゃん古くて。
あともう一つさっき太宰が女性の言葉って言いましたけどそういう女性の言葉というのはある意味非常に豊かでみんなを何て言うかね憩わせてくれるような大きい空間なんですよね。
太宰の考え方でそれは一貫してますよね。
だからいつも人の女性の言葉なり古い物語に…すごくいろんなところにアンテナを張ってずっと聞いて巫女さんみたいにね降りてきて太宰っていう作家の口を通って出てきた。
いや〜何かますますちょっと太宰への興味が出てきましたが。
いろんな日本語を使ってます結局あらゆるタイプの日本語を。
古文も漢文も古いものも新しいものも全て使ってあらゆる書き方をしてるんです。
ちょっと元気がなくなるとですね太宰を読んでねああ日本語いいなよしやる気になろうと思って。
自分は中学で読み始めて今35でず〜っと定点で太宰を読み続けてるんですけど…恐らく中学の時で一回置いといて今読んだらえ?こんな話やったっけってなると思うんですよね。
もう去年読んでまた発見した事とかいっぱいあるんですよね。
だからすごく皆さんに僕は太宰を再読をお勧めしてるんですけどね。
俺復学するわ。
私もしたいですね。
待ってます。
皆様本当にありがとうございました。
楽しゅうございました。
ありがとうございました。
2015/09/23(水) 22:00〜22:25
NHKEテレ1大阪
100分de名著 太宰治 斜陽[終]第4回▽“太宰治”の中にはすべてが入っている[解][字]
現代でも太宰治の作品は多くの人をひきつけてやまない。時代を超えて愛され続ける太宰の魅力とは?作家・高橋源一郎さんと芥川賞を受賞した又吉直樹さんが徹底トーク!
詳細情報
番組内容
現代でも太宰治の作品は多くの人をひきつけてやまない。時代を超えて愛され続ける太宰の魅力とはいったい何なのか?高橋源一郎さんは、太宰が「世界で何が起こっているかを静かに聴くことができる耳」の持ち主だったからだという。第四回は、お笑いタレントで芥川賞受賞作家の又吉直樹さんを交え、「斜陽」だけでなく、「人間失格」やその他の短編など他の作品も取り上げながら、太宰治の魅力を徹底トークする。
出演者
【ゲスト】又吉直樹,【講師】作家…高橋源一郎,【司会】伊集院光,武内陶子,【朗読】伊勢佳世,【出演】加藤有生子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
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