「日本書紀」に初めてその名が登場。
伝統文化として育み日本が世界に誇る相撲。
その歴史に女性だけによる女相撲が存在していた。
男の相撲に負けず劣らず人気があったという。
果たしてどのようなものだったのか。
私は取材をするべくタイムワープをした
アブソリュートポジションN275W466E738S287。
ポジション確認。
アブソリュートタイムB0273120年44時64分29秒。
西暦変換しますと1921年3月12日5時52分37秒。
無事タイムワープ成功しました。
コードナンバー572899。
これから記録を開始します。
沢嶋雄一。
彼はタイムスクープ社より派遣されたジャーナリストである。
あらゆる時代にタイムワープしながら時空を超えて名もなき人々を記録していくタイムスクープハンターである。
激しいぶつかり稽古。
ひたすら稽古に励むこの力士たちは皆女性である。
今回の取材対象は女相撲の力士たち。
相撲に人生を懸けた女性たちを密着ドキュメントする
この時代の人々にとって私は時空を超えた存在となります。
彼女たちにとって私は宇宙人のような存在です。
彼女たちに接触するには細心の注意が必要です。
私自身の介在によってこの歴史が変わる事もありえるからです。
彼女たちに取材を許してもらうためには特殊な交渉術を用います。
それは極秘事項となっておりお見せする事はできませんが今回も無事密着取材する事に成功しました。
厳しい表情で稽古をつけているのは増岡女相撲代表の増岡辰江。
興行を取りしきりながら若桔梗というしこ名で土俵にもあがる大関である
すいませんお疲れのところ。
あっいえ。
初めて女相撲というのを見せて頂いたんですけど…
増岡女相撲はかつて20人の力士を抱える大所帯であったという。
だが父の人脈を失った事で次第に興行収益が悪化。
女性力士たちも次々とやめて今では僅か5人の弱小団体となった
すいません。
あの僕も一戦いいですか?はい。
親方いいんですか?ああいいですよ。
あっすいません。
頑張れ!お強いですね!ありがとうございました。
びくともしませんでした。
ものすごいパワーです。
はい!そう親に説得されまして。
彼女たちは寝食を共にしながら各地を巡業し場所の設営から広報活動まで全て自らの手で行っている。
この日彼女たちは久しぶりの興行に胸が躍っていた。
なかなか巡業場所を見つけられずにいたところある人物が援助を差し伸べてくれたからだ。
その人物とは…
あっどうも。
勧進元と呼ばれる地方巡業の主催者である。
女相撲のような巡業スタイルの興行にはこうした資金力のある者からのバックアップが必要であった。
増岡辰江から興行の具体的な説明が行われる。
彼女たちが作った今回のチラシである。
だが…
その内容に不満があるようだ
これだけかい?いけませんか?いや…どういう事でしょうか?お前さんも知ってるだろう。
ええ。
存じてますが…そうはまいりません。
同じ事をやれって言ってるんじゃないんだよ。
ですが社長…それは先代の頃からずっとそうしてきたんで…。
そんな事ありません。
先代先代って言うがね…それぐらい分かるだろう。
ええそりゃあ…。
いいかい?
男性客を意識した興行を望む副島相撲の取組で勝負したい辰江
真剣勝負をお見せしますから。
分かんない人だね。
興行方針をめぐって鋭く対立する。
…とその時
おお待ってたよ!遅かったな。
入れ入れ。
元気かい?今度店行くから。
ありがとうございます。
どうだ。
いいだろう?
けばけばしい女性たちの出現にあぜんとする力士たち。
それは副島が集めた女性たちだった。
相撲取りが少ない興行では満足にお客を呼べないと考えたのである。
果たして興行はどうなってしまうのか?
おいお前らなにボーッと立ってるんだ。
バカな事言わないで下さいよ!何がバカな事だよ。
急なんだからしかたねえだろ。
一方的な副島のやり方についに辰江の怒りが爆発する
そしてこのあと最悪の事態が起きる!
おい!何だよ?何やってんだよ出ていけ!早く持っていきな!何で帰るんだよ!おい!てめえらよ!出ていくのはてめえらだろ!出ていってやりますよ!おう!ほらとっとと準備しろ!えっ?えっ?
小屋から去る辰江たち。
それを待ち受けていたのは一人の熱心なファンであった
どなたかケガでも?そうなんですか…。
かつていかがわしい興行も多かった女相撲だが明治に入ると規制の対象となった。
しかし副島は警察の目をかいくぐりひともうけをたくらんでいたのだ。
伝統と誇りを汚された辰江。
今は相撲を愛する人の存在だけが心のよりどころだった
新たな巡業先も見つからず先の見通しが全く立たなくなってしまった。
5人はしばらく辰江の親類の家に身を寄せる事になった。
しかし彼女たちに更なる危機が訪れる事になる。
辰江宛てに届けられた一通の手紙。
それは…
いや何でもないんだよ。
団体を維持するために多額の借金を背負っていた辰江。
皆初めて知る事実に動揺を隠せない
そういう事は1人で解決しようとせずに私らにも話して頂きたいんですよ。
私もそう思います。
5人しかいないんですから…。
抑えきれない不安感。
静子が思いもかけない事を口にする
何言ってるの?バカな事言わないでよ。
他の人までどうこうとは言っちゃいませんよ。
私はかまわないと言ってるだけの話でさ。
じゃあどうすればいいんですか?たった5人でどうするんですか?だからそれを今話し合ってるんじゃないか。
借金までしてるんですよ!これからどう解決しようかというところじゃないか。
何なんだあんた。
だからどうしようかという時だよな今。
とりあえず落ち着こう。
ないからこういう状況になってるんですよね?相撲が好きじゃないんですか!?
感情的になる静子とヨシ。
そして取り返しのつかない事態へ…
好きだから裸になってでも相撲取りたいって言ってるんですよ!大好きな裸の相撲取ってくりゃいいじゃないか!ちょっと!
(ヨシ)好きにさせてやりな!止めて下さいよ!本気じゃないから!静子さん!
(ヨシ)いいよかまわない。
出ていかせなよ。
待って。
静子さん!静子さん!本当に行っちゃいます!もういいから。
もういいよ。
みんなで追いかけましょうよ。
仲間の決裂。
辰江にはもはや取り繕う気力さえなかった
ついに団体の解散が決まった。
その時…
それはあの熱心な女相撲ファン小野寺清であった
お忙しそうですけど大丈夫…?ちょっと忙しいですけどね。
ちょっと荷造りをね。
いや…まあそうですね。
「解散」という言葉に息をのむ清
いや先日お会いした時にあんまりお元気がなかったもんですから…
清からの思いがけない申し出。
その内容とは…?
清が個人的に動いて新たな興行場所を探し出してくれたのだ
どういう事ですか?興行の話ですか?そうみたいだ。
もちろんです。
やっぱり柔道場だと駄目ですか?
千葉での2日間だけの興行だという。
だが辰江は素直に受け入れる事ができない。
静子の事が気がかりだったからだ
やらせて下さい!迷ってるんですか?今。
できますよ!大丈夫です。
何とかなる!大丈夫。
そうですよ。
何とかなります。
いやどこにもいないですよ。
ほら!親方!
清も行司として参加する事になった
相撲が取れるんですよ!
そして辰江はついに…
女相撲の興行が決まった
興行の日の朝部屋は久しぶりの笑顔に包まれていた。
荷造りを終えいよいよ出発。
だがその時だった
突然の訪問者。
その正体は…?
男は借金の取り立て屋だった
せっかく来て頂いてなんなんですが…あさってしあさって帰ってきますから…伺ってないんですか?ふざけんなよ!何もありませんよ。
行く手を遮り動こうとしない取り立て屋。
そして…!
なんと大事な化粧まわしを奪っていってしまった。
必死に追いかける。
ところが次の瞬間…!一体何が起きたのか?そこにいたのは…。
静子の張り手が見事男をとらえたのだ
そうだよ。
千葉でやるよ。
でも私…。
あんたの締め込みの化粧まわしも若い2人がちゃんと荷入れしてる。
急がないと…。
早く!あの時は…。
そんなのいいから!
彼女たちにはもうわだかまりはなかった。
こうして元のメンバーに戻った増岡女相撲。
急ぎ開催地へ向かった。
そして…
既に会場にはたくさんの観客が詰めかけていた
こちら沢嶋。
本部応答願います。
(古橋ミナミ)こちら本部古橋です。
これから増岡興行の取組が始まります。
取組のもようをマルチで収録したいので映像機器の追加補充をお願いします。
了解しました。
一度いらっしゃった事があるんですか?はい。
楽しかったですか?その時は。
会場も非常に盛り上がってきました。
増岡興行女相撲の取組間もなくです。
増岡女相撲の興行がとうとう開幕した。
まずは全力士による土俵入り
(拍手)
(一同)よいしょ!
女性による珍しいしこ踏みに観客が沸き立つ。
その雰囲気はいかがわしさとは程遠くすがすがしさがある。
女相撲は家族そろって楽しめる数少ない娯楽だった。
このような健全な興行はさまざまな団体により日本各地で開催されていたという。
土俵入りが終わるといよいよ取組。
まずはみどり里
(すず)対桃乃山
(あやの)の一番。
行司は小野寺清
(歓声と拍手)
掛け投げでみどり里の勝ち
続く一番
梅吹雪
(静子)菖蒲嶽
(ヨシ)
(歓声)
送り出しで梅吹雪の勝ち
そして桃乃山
(あやの)梅吹雪
(静子)の対戦は…
うっちゃりで桃乃山の勝ち。
取組が終わる度に観客の熱が上がっていく。
そしていよいよ大関若桔梗
(辰江)による三人抜き
(歓声)
1人目対梅吹雪
(静子)
はっけよい!
押し出しで辰江の勝ち。
2人目
はっけよい!
渡し込みで辰江の勝ち。
そして結びの一番は…
吊出しで見事三人抜きで勝利した。
土俵にはたくさんのおひねりが舞う。
観客の盛り上がりは最高潮。
増岡女相撲は大盛況のうちに幕を閉じようとしていた。
…がその時だった!客席から聞こえてくるヤジ。
何やらただならぬ雰囲気。
そのヤジの主はあの副島だ。
辰江に勧進元の顔を潰された副島が復讐に乗り込んできていたのだ。
とんでもない邪魔者の乱入。
このあと思いも寄らぬ事態に!
静かにして下さい!うるせえんだお前らはよ。
お前らそれでいいのかよ。
インチキで金払っていいのかお前らは!インチキなんかしてませんよ。
何が「インチキじゃねえ」だ。
インチキばっかだろさっきから。
辰江を挑発する副島。
一触即発の緊迫した空気。
だが清が必死に制する
入り口に警官の姿が…
明治に入ると女相撲は風紀上の理由により男性との取組は禁止されていた。
もし戦えば今後の興行も中止を覚悟しなければならない。
だが…
さあいらっしゃって下さいな。
(副島)やってやろうじゃねえか!
思わぬ展開に場内が沸き立った。
そして…
(歓声)
増岡女相撲のプライドを懸けた戦いが今始まる!
(歓声)
(歓声)
勝った!辰江の腕捻りが見事決まった。
飛び交う座布団。
この日最高の盛り上がりで会場が大歓声に包まれる
(歓声)
しかし次の瞬間。
警官が辰江に詰め寄ってきた。
果たして辰江は…?
待って下さい!理由があるんです。
全ては覚悟の上だった。
警官に従い土俵を後にする。
その時…
(拍手)
去っていく辰江に拍手と歓声が沸き起こる。
それは誇りを守りきり自信に満ちあふれた女性の姿だった
興行の終わり。
それは相撲甚句で締めくくられた。
警察に出頭した辰江に代わりヨシが代理を務める。
観客への感謝の気持ちがつづられていく。
女相撲の興行は昭和に入ると減り続けやがてその姿を消す事になる。
時代の流れとともにやがて人々の記憶からも消えてしまった。
だが困難にもめげず自分たちのやり方を貫いた女性力士たちの姿を私は決して忘れる事はない
以上コードナンバー572899アウトします。
2015/09/23(水) 01:30〜02:00
NHK総合1・神戸
タイムスクープハンター セレクション「女相撲じんせい土俵際」[字]
「タイムスクープハンター」のアンコール放送。時空ジャーナリストの沢嶋雄一(要潤)は明治から大正時代に流行した女相撲を取材する。興行として各地を巡業していた。
詳細情報
番組内容
今回の取材対象は「女相撲」。文献の中で初めて「相撲」の文字が現れるのは、日本書紀。伝統の相撲の歴史には、女性力士が相撲を取る女相撲があった。明治から大正時代に人気を博したのは各地を巡業していく興行としての女相撲である。1921(大正10)年、女相撲を率いる増岡辰枝はリーダーであり、若桔梗として土俵に上がる女大関である。だが、力士は5人しかおらず、団体解散の危機が迫っていた。
出演者
【出演】要潤,杏
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドラマ – 国内ドラマ
バラエティ – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:32885(0x8075)