(電話)
(秋葉英治)はい秘書室です。
もしもし?
(ボイスチェンジャーの声)「大内機械工業の敷地に爆弾を仕掛けた」
(秋葉)は?「爆発されたくなければ20億円用意しろ」爆発…!?「逆らえば人が死ぬ」「3階西側の男子トイレを見ろ」
(電話の不通音)もしもし…?もしもし?
(秋葉)社長!!
(大内貴明)くだらん!何が爆弾だ。
いたずらに決まってるだろう。
しかし万一という事があります。
念のため警察に…。
よせ!バカバカしい。
(ノック)
(辻正康)社長!
(辻)3階西側のトイレにこのようなものが…!「デモンストレーション」…?
(南れい子)最近このプロジェクトについて縮小されるとか打ち切られるとかいう噂があるようですが私たちはそれに惑わされる事なく研究を続けたいと思います。
当面の課題はGPRセンサーの精度向上だな。
それもそうだがまずはコスト面の見直しを考えないと。
(爆発音)
(非常ベルの音)おい…おいどうした!?
(非常ベルの音)
(警備員)あっちだ!うわ…!どうした!?気をつけろ!
(非常ベルの音)早く救急車呼ばないと…!
(れい子)おばさん…!?大丈夫ですか?救急車!救急車呼んで!はい…はい!おばさん!
(秋葉)もしもし…。
研究所のほうからですが…。
もしもし?…何!?
(秋葉)研究所の備品倉庫で爆発があったと…。
バカな…!
(メール着信音)
(辻)メールの着信です!なんて事だ…。
(亀山薫)おっ…!…特殊班?
(中園照生)あっ部長!大内機械工業に関連する施設は営業所や工場など都内に6か所あります。
(内村完爾)手の空いている捜査員を動員して何としても爆弾を見つけろ!
(3人)はい!
(レポーター)「今のところ大内社長が金銭の支払いに応じるかどうかは明らかにされていません」「大内機械工業は営業所や…」
(杉下右京)おはようございます。
あ〜右京さん。
この事件知ってます?騒ぎになっているようですねぇ。
犯人マスコミに声明文を送りつけたそうですよ。
これです。
「正義の名のもとに大内機械工業に罰を与える」「社長が二十億の支払いに応じなければ同社で大爆発が起きるだろう」大内機械工業の社長といえば3年前に先代の跡を継いで以来大規模なリストラや下請けの切り捨てを強行し力ずくで業績を伸ばしてきたワンマン社長だそうですよ。
つまり社長を恨んでいる人間は大勢いると…。
しかし一体何なのでしょうねぇ。
え?犯人の言う…「正義」とは?無茶だ。
工場をストップさせればどれほどの損害が出ると思ってるんですか!
(吉岡琢磨)今は爆弾を探す事が先決です。
ご理解ください。
(メール着信音)
(大内)「二十億円は正午までに用意しろ」「受け渡し方法は追ってメールで指示する」冗談じゃない!20億なんて。
(メール着信音)
(大内)「お前たちの姿は見えている」「妙な真似をすればただちに爆弾を作動させる」
(メール着信音)
(吉岡)大内さん…。
犯人は内蔵カメラで我々を監視しているようです。
音声も聞かれているかもしれない。
くれぐれも慎重に行動してください。
社長20億集める手配をしたいと思います。
社長犯人の要求はマスコミに知られています。
我々が要求に応じなければ世論が黙っていません。
(米沢守)研究所の見取り図です。
(米沢)爆発現場はここ1階の備品倉庫でした。
当時室内に人はいたのですか?いえ研究員たちは会議室でミーティングをしており倉庫は無人でした。
じゃケガ人はゼロ?それがですね掃除係の女性が負傷されたそうです。
聞くところによればちょうど廊下の蛍光灯を換えようとしていたようで…。
運悪く爆発現場に居合わせた。
はい。
(捜査員)班長!犯人からメールです。
ダイヤだと…?
(無線機の受信音)「こちら吉岡」
(吉岡)「犯人は20億円を…」ダイヤに換えるよう要求してきました!ダイヤ…!?どういう事だ?それでは紙幣採証作業の班は撤収という事ですね?はい引き続き現場のほうよろしくお願いします。
どうかしましたか?それがですね犯人からメールがあって20億円すべてダイヤに換えろと要求してきたそうです。
ダイヤ!?また妙な要求ですね。
電話をお借りします。
どうぞ。
一体何の用だ!?こんな時に。
お取り込み中のところすみません。
犯人が20億円をダイヤで要求してきたと聞いたものですから。
なぜお前がそれを知ってるんだ?おとがめは後ほど。
そのダイヤの受け渡し方法についてある可能性を思いついたのでお耳に入れておこうと思いまして。
部長!犯人からメールが入ったようです。
お前と話してる暇はないんだ!
(電話の不通音)右京さん。
ある可能性って何なんですか?ごく小さな可能性ですが。
メールの文面は…「社長の大内に告ぐ」。
「午後3時にこのPCとダイヤを持って北羽駅前広場へ行け」「ダイヤに発信機などを仕掛けた場合は爆弾を作動させる」
(吉岡)「以上です」駅前!捜査員はただちに現場に急行!
(一同)はい!緊急のご用命でしたが何とか揃いました。
(大内)ありがとう。
大内さん。
おい。
(捜査員)班長。
私との通信はこれで。
くれぐれも勝手な行動はなさらないように。
わかっています。
あぁ…。
(伊丹憲一)おいついてくんじゃねえぞ。
(三浦信輔)ほら行くぞ!よし…あっ!?右京さんどこ行くんですか?俺らも早く現場に。
その前に用意しておきたい物があります。
えっ…!?
(芹沢慶二)犯人どこで見てるんですかね?キョロキョロしてんじゃねえよ。
しかしどうやってダイヤの受け渡しするつもりだ?
(メール着信音)私1人にしてください…。
犯人の命令です…!
(吉岡)捜査員に告ぐ。
(吉岡)「犯人は大内さん1人で行動する事を要求している!」「監視は慎重に!」伊丹!状況は?あ〜もう!このビルで受け渡しだ。
特命の出る幕じゃねえぞ!ダイヤ投げ落とさせる気ですかね?
(三浦)お前下で不審者探せ!
(芹沢)はい!亀山君!…行けほら。
クッソー。
撮影してください。
あ…はい!鳩…?
(メール着信音)
(大内)3分…!?あぁ…右京さん隠れちゃって全然見えないですよ。
続けておいてください。
…はい!あぁ…。
こちら吉岡。
状況はどうなんだ?それがよくわかりません。
(吉岡)「わからん?わからんとはどういう事だ!?」大内さんが何をやっているか見えないんです。
おい何が起きてるんだ?あっ何か飛んだ!亀山君鳩です!鳩!はい…はい!鳩です鳩!鳩です!鳩が屋上から飛び立ちました!
(中園)鳩だと!?追え!鳩を追うんだ!こっちです!
(吉岡)ああ!
(メール着信音)
(伊丹)クソッ…。
(吉岡)「ダメです。
見失いました」もういいでしょう。
はい。
うまく撮れましたか?はい何とか。
この映像が役に立つといいのですがねぇ。
(米沢)驚きました。
犯人が鳩を使うなどよく予想できましたねぇ。
1983年にイギリスで発生したある誘拐事件を思い出したものですから。
その事件でも鳩が使われたんですか?ええ身代金がダイヤで要求され受け渡しに伝書鳩が使われたものの犯人の用意した鳩には伝書鳩協会の足輪が付いていました。
それをもとに飼い主が特定され犯人逮捕に至ったという事件です。
何か間抜けな犯人ですね。
こちらの犯人はそう間抜けではなさそうですねぇ。
えっ?飼い主の特定に繋がるようなものは発見できませんでした。
手がかりなしか…。
これお返しします。
このコピーを捜査本部に渡しておいていただけますか。
かしこまりました。
本部は今煮えくり返っているようですよ。
目下犯人の圧勝ですからねぇ。
それだけではありません。
犯行に使用されたパソコンを科捜研で調べたところメールの着信が皆無だった事がわかりまして。
ん?どういう意味ですか?つまりですね犯人が使用したパソコンはあらかじめ決められた時間になるとメールの文面が現れるように設定されてたんです。
内蔵カメラもただのフェイクでした。
捜査員たちを牽制するための細工。
賢い犯人ですねぇ。
完全に踊らされてたわけですね。
一課は現在関係者の中に伝書鳩を飼っている人物がいないかどうか躍起になって調べています。
あ…で爆弾は見つかったんですか?それが一向に見つからず犯人からも連絡がありません。
(亀山美和子)せっかく撮影したのに役に立たなかったんだ?ああ。
特定に繋がる手がかりはなし。
(美和子)まあ鳩なんてみんな同じに見えるしねぇ。
(宮部たまき)たまには人の知恵を借りてもいいんじゃないんですか?鳩に詳しい人ですか?ええ。
そういえば現代のように通信手段が発達する以前新聞社の記者は事件現場から原稿を送るのに伝書鳩を用いていたとか。
どこの新聞社にも立派な鳩舎があったと聞いた事があります。
へえ…あ知らなかった。
あっそれだったらつてを当たってみましょうか?え…あるの?帝都新聞にも昭和30年代まで鳩係がいたんです。
そのOBたちが退職後伝書鳩の愛好会を作ったって聞いた事があります。
その愛好会の連絡先調べていただけますか?はい喜んで。
いかがでしょうか。
(小峰利夫)ええ…こりゃあいい鳩ですなぁ。
映像だけでいい鳩ってわかるんですか?
(中川光信)ある程度はわかりますよ。
第一羽ばたきが大きい。
(小峰)尾羽の開きにムラはないし翼と胴体の均整もとれている。
ま年齢は2〜3歳ってとこですかな。
この映像をもとに飼い主を特定する事は可能でしょうか?飼い主ですか…。
いやいくら何でもそれは難しいでしょう。
まあレース鳩の血統であるのは確かでしょうがねぇ。
え鳩にも血統とかあるんですか?もちろん。
血統飼育訓練その3つが揃ってレースで優勝できる鳩になると言われています。
あれ?ひょっとするとこの鳩…。
何か?ん?うーん…もしかすると「中野538号」の血統かもしれません。
ほらよく見ると翼のところに灰色の斑点のようなものが混ざってるんですよ。
おお…。
あの血筋の鳩はこれが特徴なんです。
同じ系統の鳩を飼っていらっしゃる方は全国に何人ほど?さあ見当もつきませんね。
いやあの人ならわかるんじゃないかな?ほら城南大学の…。
ハハ…。
中野538号なら教授だな。
教授って?え…?名誉教授です。
鳥類学の。
どうですかね?
(脇田勝彦)確かに中野538号の子孫という可能性はありますが。
断定は出来ませんか?そうですねぇ…。
翼の斑点は南部系統の鳩にも見られますから。
教授は中野538号系の鳩を飼っていらっしゃるそうですがこの血筋の鳩は現在何羽ほど存在するのでしょうか?ちょっと把握できませんね。
伝書鳩ブームの頃に私もずいぶん人にひな鳩を分けたものです。
鳩を分けた相手ってのは覚えてらっしゃいますか?全員はとても。
何しろ愛好家の多い時代でしたから。
今ではすっかり廃れてしまいましたが。
レースの帰巣率も低下してますし寂しいものです。
帰巣率の低下…ですか。
ええ。
迷子になって野生化してしまう鳩が増え問題になってるんです。
何か理由でもあるんですか?高層ビルの増加と指摘されていますが詳しい原因はわかっておりません。
そもそもなぜ鳩が自分の巣に戻ってくるか科学的に解明されていないんです。
はぁ〜。
私これで…研究会がありますので失礼します。
ありがとうございました。
じゃ…。
はぁ…やっぱり鳩は手がかりになりそうもありませんね。
では見取り図のほうを。
見取り図?鑑識課で現場の見取り図を見た時から僕が気になっていたのは会議室の場所です。
会議室がどうかしたんですか?爆発があった時刻研究員がミーティングを行っていたのはここです。
場所は3階東側の隅。
そして爆発があったのが1階西側の備品倉庫。
何か気がつきませんか?え?あえーっと…。
2つの部屋は同じ建物内で最も離れた場所にあるという事です。
ああ確かに。
果たしてこれは偶然でしょうかねぇ。
例えば犯人はあえてミーティングが行われている部屋から最も離れた場所に爆弾を仕掛けた。
何のために?研究員の安全を確保するためです。
内部犯って事ですか?1つの仮説ですが。
犯行に使われたパソコンは決められた時刻に文章が現れるようにあらかじめプログラミングされていました。
屋上の伝書鳩もあらかじめ置かれていた。
となると犯人が当日すべき事は大内機械工業への最初の電話だけだったはずです。
つまりほんの少し周りの目を盗めばこの建物の中にいても犯行は可能だった。
この仮説が正しいとするならば犯人は…。
昨日ミーティングが行われる事を知っていた人物!はい。
いろいろ懸案事項があったもので臨時に開きました。
あ臨時のミーティングだったわけですか。
ええ。
つまりあなたがミーティングを設定された?一応研究チームのリーダーですから。
失礼を承知で伺いますが鳩などは飼っていらっしゃいませんか?やだ私を疑ってるんですか?すいません。
皆さんにお訊きしてるものですから。
飼ってません。
身内にも友人にも飼ってる人はいません。
失礼します。
ああ…もう1つだけよろしいでしょうか。
何です?こちらの研究所であなたはどのような研究をなさっているのでしょう?ロボットの開発です。
あ…ロボット。
どのような?説明すると長くなりますので。
長くなっても構いませんよ。
俺たちどうせ暇ですから。
すいません。
私は忙しいので。
右京さん。
調べてみました。
あの女性研究員ですが…。
「南れい子東工大学工学部出身。
平成8年大内機械工業入社」これ3年前の業界誌なんですけどね…。
「地雷処理システムの現状と展望」大内直輔氏…大内機械工業の創業者ですねぇ。
ええ。
平和活動に熱心な人だったらしいです。
画期的な地雷処理ロボットを開発して海外のNPOに安く提供するつもりだったみたいですね。
で創業者の遺志を継いで開発チームのリーダーとなったのが…。
南れい子さんだった。
はい。
でも今のところ事件との関係は見えてきませんね。
第一動機が見当たらないんですよねぇ。
(角田六郎)暇か?あ…ういっす。
(角田)うん。
相変わらず自分のとこのコーヒー飲まないですね。
こっちの豆のほうがうまいんだよ。
豆に釣られて来てたんですか?ダメ?鳩みたい。
ハハ…。
あ鳩といえばさ任意で引っ張られてきたらしいよ。
鳩がですか?そう鳩が…。
んなわけねえだろ。
フフフ…。
伝書鳩を飼ってた奴だよ!何でもね大内機械工業と取り引きのあった工場の社長らしい。
あそうか。
え…?今日は苦いな…。
『鳥類学研究体系』ねぇ…。
「あなただけなんですよ。
大内機械工業に関係している人物の中で伝書鳩を飼ってるのは」
(猪俣健吾)「フッ…偶然ですよ。
私はそんな…」
(三浦)「おたくの工場で使っている化学薬品で爆弾作れますよね」「大内社長の話では再来月からおたくとの取り引きを縮小する予定だったそうですね」「だからってあんな事件起こしたりしませんよ」「それに取り引きの縮小ったって一部の発注が止まっただけで…」
(三浦)「発注というと?」「ロボットのアームの部品です」「大きな取り引きじゃないしうちにとっては大した痛手じゃない」「ちょっと待った」追い払ってやる。
コラ〜うん?
(ノック)
(伊丹)はい。
(伊丹)クッ…。
失礼します。
相変わらず動き素早いっすね。
(伊丹)ドアボーイかよ俺は。
警部…。
1分だけ。
ロボットの部品の発注が止まったとおっしゃいました。
それは地雷処理ロボットに使われていたものですね?地雷処理ロボット?
(猪俣)ええ「S82」用です。
それがロボットの名称ですか?はい。
しかしなぜ部品の発注が止まったのでしょう?プロジェクトの中止が決定したんですよ。
社長の一声で。
中止って何でまた?あの社長の事だ。
採算の取れない研究に見切りをつけたんでしょうね。
死んだ父親とはえらい違いですよ。
どうもありがとう。
321…はい。
「S82」についてですか?高性能センサーで埋没地雷を探知し遠隔操作で処理するロボットの完成は創業者大内直輔氏の悲願だったそうですね。
しかし創業者は2か月前に他界。
その直後息子である現社長は「S82」の開発中止を決定した。
事件についてお調べなんじゃないんですか?もちろん事件について調べてます。
しかし犯人はいまだに大内工業に爆弾の場所を告げる連絡をしてきません。
それがなぜなのかやっと見当がつきました。
そもそも犯人が用意した爆弾はこちらの備品倉庫で爆発した1つだけしか存在しなかったんです。
しかし犯人がその事実を告げずにいるために大内機械工業の人々は姿の見えない爆弾に脅かされています。
それはまさしく地雷埋没地域に住む人々が日々直面している恐怖そのものです。
まるで「S82」の開発中止に対する報復のようだとは思いませんか?当然研究リーダーである私にも動機があるというわけですね?あなたは爆弾を作る技術を持っている。
パソコンのプログラミングもお手の物…でしょう?疑うのは勝手ですけど証拠はありませんね。
何一つ。
あ〜動機はあるけど証拠はなしか…。
確かに彼女の言うとおりですねぇ。
相変わらず鳩の行方はわからないし手詰まりですねぇ。
犯人さ証拠隠滅のためにその鳩食っちまったんじゃねえか?フランス料理か何かだと食材にするんだろ?俺は食いたかないですね〜犯罪の証拠なんて。
(女性警官)すいません小包です。
(角田)特命係に?はい。
あ…。
はいご苦労様。
はい。
爆弾だったりしてな。
やめてくださいよ。
亀山君!
(2人)ああっ…!?非常に興味深い事実がわかりました。
中野538号は軍鳩だったそうです。
グ…グンキュウ?文字どおり軍の鳩です。
中国大陸における戦争で活躍した通信用の伝書鳩でその圧倒的な飛翔能力をたたえられ陸軍から勲章を授与されたそうですよ。
へえ鳩に勲章ね。
それと事件とどう関係が?中野538号を育てたのは伝書鳩を愛する2人の軍国少年です。
少年の1人の名は大内直輔。
え?大内って…。
大内機械工業の創業者ですよ。
つまり創業者が育てた鳩の子孫が…。
創業者の会社を標的とした犯罪に使われた。
偶然でしょうかねぇ。
(角田)何だこりゃ?え…?おっ…!?おぉ…。
すべて本物のダイヤモンドでした。
大内社長の指紋も付いています。
つまり鳩が運んだダイヤに間違いない。
そうなりますね。
ちなみに差出人は偽名住所も架空のものでした。
だけど何で特命係あてに…。
米沢さん1つお願いがあります。
何なりと。
この事を捜査一課に伝えるのは1日待っていただけますか。
いよいよ運命共同体ですな。
まだ何か?あ…今日は謝りに伺いました。
謝りに?はい。
あなたを疑ったりして申し訳ありませんでした。
どういう事かしら突然。
あぁいえね…今回の犯行が結局愉快犯の仕業だとわかったもんですから。
愉快犯?はい…。
犯人からダイヤが送り返されてきたんですよ。
あぁ…。
ま犯人はただ世間を騒がせたかっただけみたいですね。
あいろいろ失礼言ってすみませんでした。
いえ…別に気にしてませんから。
失礼します。
今日も鳩に関するご質問ですか?いえ先日こちらにお邪魔した時に少々気になる事があったものですから。
は?教授は先日こちらの本棚から1冊の本を抜き出しましたね。
レースの帰巣率も低下してますし…。
その後教授はその本を持って部屋を出られた。
あれは確か『鳥類学研究体系』の第3巻でしたねぇ。
おやまだ戻されてませんね。
何がおっしゃりたいのか私にはさっぱり…。
あの本の内容が少し気になったものですから同じものを買い求めて読んでみました。
非常に興味深い記述がありました。
昭和15年2人の軍国少年が自分たちの育てた鳩を陸軍に献納しました。
鳩は「中野538号」と名付けられ中国戦線で活躍。
後に陸軍から勲章を授与されました。
鳩を育てた少年の名は大内直輔。
そして飯沼勝彦。
さらに調べたところ飯沼少年は戦後遠縁の夫婦の養子になり名字が「脇田」と変わった事がわかりました。
よくお調べになりましたね。
脇田教授なぜ黙っていらっしゃったのですか?ご自身が遠い昔今は亡き大内直輔さんと中野538号を育てたという事を。
(脇田)答える必要がなかったからです。
では本を持ち去ったのも偶然でしょうか?偶然でなければ何なんです?偶然でなければ無意識のうちに教授はその本を隠そうとなさったのではありませんか?なぜならその本の中には今回の事件に直結する事柄が書かれていたからです。
すなわちご自身と大内直輔さんとの繋がりが。
私が何かこの事件に関わりがあるとでもおっしゃるんですか?申し訳ない。
何でも疑ってかかるのが僕の仕事でして。
念のために事件の日はどちらにいらっしゃったのか教えていただけますか。
学会で箱根へ行ってました。
帰ってきたのは夕方です。
申し訳ないが今日中に書かなければならない原稿があるので。
ああそうでしたか。
お忙しいところ失礼いたしました。
はい。
脇田教授もう1つだけ。
何です?「S82」の開発中止はご存じでしたか?は?「S82」…。
大内直輔さんが完成させようとしていた地雷処理ロボットです。
地雷処理ロボット…聞いた事もないですね。
教授は確かプロジェクトの支援者だったはずですが。
開発プロジェクトに寄付をされた有志の方々の名簿の中に教授のお名前もありました。
教授と大内直輔さんとの友情は戦後もずっと続いていたのでしょうねぇ。
彼が晩年を捧げた研究をあなたは友人として応援なさっていたのではありませんか?お帰りください。
失礼します。
(れい子)教授!教授なんですね?ダイヤを送り返したのは。
(脇田)何の事だ?どうしてあんな嘘をついたんです?鳩が戻ってこなかったなんて。
鳩は戻ってこなかった。
迷い鳩になってどこかにダイヤを落とした。
そのダイヤを誰かが拾って警察に送った。
…それでいいじゃないか。
よくないわちっとも。
私は何も知らなかった事にする。
君も深く反省して研究の現場に戻りなさい。
今さら何を研究しろって言うんです!「S82」の開発はもう…。
…教授!
(れい子)教授!明日研究員たちにプロジェクト中止を発表します。
「S82」が完成しないのは教授のせいです。
あの20億があれば研究を続ける事が出来たのに。
プロジェクトを独立させる事が出来たのに。
教授が協力さえしてくれれば…。
協力なんか出来るものか。
どうして?教授なら力になってくれると思ってました。
戦争の傷跡を消すための装置…。
その開発を続けるために喜んで鳩を貸してくれると。
遠い昔同じ事を私に頼んできた連中がいたよ。
…は?お国のために鳩を差し出せとね。
私は迷いもせず彼らに鳩を渡した。
子供ながらにあの戦争に協力したんだ。
私の研究は平和のためのものです。
バカな事言うんじゃない!犯罪を犯してまで続けるべき研究などありはしない。
同感です。
屋上の貯水タンクの陰。
いい隠し場所ですね。
鳩の一番の敵は湿気だそうですねぇ。
鳩舎は日光の当たる風通しの良い場所に置かねばならない。
恐らく教授ならばそういった場所に隠すのではないかと思いました。
南さんあなたの犯行の動機は2つ。
1つは「S82」の開発中止に対する報復です。
もう1つは20億を元手にプロジェクトを独立させ「S82」の開発を続ける事だった。
その計画を思いついたあなたは創業者の親友でありプロジェクトの支援者でもある教授に協力を頼んだ。
計画は完璧です。
鳩を貸してください。
お願いします。
冗談じゃない。
そんな計画は絶対に協力できない。
協力を拒まれたあなたは教授が学会で家を空けている日を狙い鳩を盗み出した。
そして単独での犯行を成功させたのです。
否応なしに教授を計画に巻き込んだわけですね。
一方事件を知った教授は…。
予定より早く学会から戻ってこられた。
(窓の開く音)
(れい子)箱根で学会じゃなかったんですか?ニュースを聞いて飛んで帰った。
まさか君本当にあんな事件を起こすとは…!ダイヤを渡してください。
鳩はどこです?鳩は帰ってきてない。
(れい子)は?ダイヤを持ったまま行方不明だ。
そんな!どうして!?知らん。
迷い鳩になったかカラスに襲われでもしたか。
教授は彼女に鳩が戻らなかったと嘘をつき鳩が持ち帰ったダイヤを我々に送り返した。
先ほどの話を総合するとそういう事になりますねぇ。
(脇田)物証はあるんですか?教授…何言ってるんですか!?彼女を逮捕させたくないお気持ちはわかりますが今さら犯罪の片棒を担ぐおつもりですか?私の鳩が犯行に使われたという証拠がどこにあるんです?屋上に落ちていました。
大内さんが鳩を放す時にその鳩の体から抜け落ちたものです。
羽のDNAがこの鳩と一致しました。
つまりこの鳩が犯行に使われた鳩だという事です。
鳩の足にGPSチップを取り付けました。
これによって鳩の位置を常時パソコンで正確に確認できます。
脇田教授あの鳩が教授の家の鳩舎に戻ればそれが動かぬ証拠となります。
鳩が真実を暴くか…。
認めますね?あなたも。
間違ってないわ。
…はい?平和のための研究が利益だけを追求する経営者に潰されるなんてどう考えても理不尽すぎる。
私のした事は間違ってなんかいない。
本気でおっしゃっているのですか?学生時代友人とNPOに参加して途上国の病院でボランティアをしました。
そこで私が出会ったのは国境の紛争地域に生まれ地雷で手足を失った多くの子供たちでした。
彼らの国から地雷をなくしたい…。
私はその一心で仕事をしてきたんです。
試作品もますます改良されているのに今さら開発中止なんてそんなの認めるわけには…。
でもあなたも人にケガを負わせたじゃないですか。
デモンストレーションの爆発で掃除のおばさんが病院に運ばれた。
そうでしょ?
(れい子)あれは偶然でした。
偶然…?あの時間本当は誰も廊下なんか通らないはずだった。
蛍光灯を換えようとしてたなんてそんなの予測できるわけないでしょう?あれは不幸な偶然だったんです。
南さん。
偶然で済む事ではありません。
地雷をなくしたいというあなたのお考えはとても立派なものだと思います。
ですが何の罪もない人の命を危険に晒してしまっては愚かな武器を生み出す人間たちと変わらない事になってしまうじゃありませんか。
行きましょう。
1つお願いしてもいいですか。
(横山澄江)お〜出来た出来た。
(ノック)
(ドアの開く音)あれあんた研究所の…。
(れい子)具合いかがですか?おかげさまでねだいぶ良くなったよ。
ちょっとあんたたちちゃんと挨拶おし。
(2人)こんにちは。
このお姉ちゃんねすんごく立派な研究してるんだよ。
(れい子)ごめんなさい。
…私のせいなんです。
少年時代の教授と大内さん楽しそうですね。
鳩は無事鳩舎に戻っていました。
よかったですね迷い鳩にならなくて。
迷うのは鳩ばかりじゃありませんな。
彼女も戻ってきてくれればいいのですが。
研究者としての本来の道に…。
進むべき方向を見極め軌道修正する能力。
それを持っているのは鳩だけではないと思いますよ。
「S82」という名称どういう意味だかおわかりになりますか?名称…?直輔が死ぬ間際に付けた名前です。
察するに年号ではありませんか?今年は平成19年。
昭和で数えれば82年です。
無論昭和は64年1月までしか存在しません。
ですが…。
終わらなかったんですよ。
直輔にとって昭和は死ぬまで続いていたんです。
直輔も私も軍国少年でした。
子供ながらにお国のためにすべてを捧げる気でいたんです。
直輔は14の時に少年兵に志願しました。
彼の乗った船は東シナ海で米航空機部隊に撃沈され乗組員の9割が海の藻くずと消えたそうです。
生き残った彼は戦後何一つ語りませんでした。
晩年の彼は戦争が生んだ忌まわしい産物を消す装置地雷処理ロボットを開発する研究にすべてを捧げていたんです。
そしてそれを「昭和82年」…「S82」と名付けたのですねぇ。
長い長い戦後だったろう…そう思います。
これでよかったんですよね。
このやり方で…。
そう信じましょう。
『ジングルベル』クリスマスか…。
今年ももう終わりですね。
年が明ければ平成20年…。
昭和も遠くなったものです。
2015/09/22(火) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒 season6[再][字]
今回のゲストは大滝秀治! 杉下右京(水谷豊)と亀山薫(寺脇康文)の名コンビが難事件に挑む!豪華ゲストもスゴすぎ!
詳細情報
◇番組内容
第8話「正義の翼」
大内機械工業に爆破予告の電話があった。社長はいたずらだというが実際に爆発してしまう。幸い死者は出なかったものの怪我人が出た。さらなる爆破予告があり、身代金代わりにダイヤを用意せよとの要求だが犯人の狙いは一体…!?ある教授(大滝秀治)が捜査線上に!
◇出演者
水谷豊・寺脇康文・鈴木砂羽・高樹沙耶(益戸育江)
大滝秀治・小西美帆・藤堂新二
川原和久・大谷亮介・山中崇史・山西惇・六角精児
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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