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【社会】

2016年問題 公演会場が足りない 首都圏 閉館、改修ラッシュ

 コンサートや演劇などの公演会場となる大規模施設の閉館が、首都圏で相次いでいる。老朽化による閉館に加え、二〇二〇年東京五輪に向けた改修や建て替えが本格化するためだ。関係者は「来年から劇場不足が深刻化する『二〇一六年問題』が始まる」と懸念している。 (砂上麻子)

 三十日、老朽化などを理由に閉館する「ゆうぽうとホール」(東京都品川区)。一九八二年に開館し、年間百五十日はバレエ公演に利用され「バレエの殿堂」とも呼ばれてきた。

 今月上旬に「くるみ割り人形」を上演した牧阿佐美バレエ団(中野区)は、三十年近く利用してきた。バレエには大掛かりな舞台装置やオーケストラピットが必要で、上演できる劇場は限られる。三谷恭三総監督は「使いやすい舞台だったのに。別の劇場を探すのは簡単ではない」と残念がる。

 首都圏では、来年から「横浜アリーナ」(横浜市港北区)など大規模会場の改修が続くほか、ビートルズなど海外の有名アーティストの公演で使われてきた「日本武道館」(東京都千代田区)の改修も、今後予定されている。

 コンサートなどの企画会社の事業部長(59)は「大規模ホールが閉館すれば公演自体が減る」と指摘。「以前は半年前でも押さえられたが、今は有名ホールなら一年半前からでも間に合わない。特に土日は競争が激しく、狭き門だ」と危機感を募らせる。

 公演に足を運ぶファンにも影響が出る。人気デュオ「コブクロ」のファンクラブ会員で、横浜市西区の主婦(40)は「首都圏でコブクロのコンサートは開けなくなるかも。小規模会場になると、ただでさえ人気のチケットが入手困難になるし代金が高騰するのでは…」。

 事態を打開しようと、関係者が国や自治体を巻き込んで解決策を探る動きも。国は東京五輪に合わせて文化芸術立国を目指し、来年から四年間で文化イベント二十万件を実施する計画を打ち出しているが、会場が減れば実現も危ぶまれるからだ。

 日本バレエ団連盟(新宿区)では、開発計画が進むJR品川駅近くの民有地を借りて仮設劇場を建てるよう、国や都に働き掛けている。加入する東京バレエ団(目黒区)の高橋典夫事務局長は「優秀な日本人ダンサーが海外に流出しかねない」と理解を求める。

 また日本芸能実演家団体協議会(新宿区)の福島明夫常務理事は「このままでは文化の発信力が弱まる。劇場の閉館時期を運営側に任せるだけでなく、時期をずらすよう国や自治体が司令塔の役割を果たすことも必要だ」と話している。

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