「日韓両国の文化財返還問題を解決するためには、両国による文化財共同調査システムをまず整備すべきだ。例えば、韓国の国外所在文化財財団と日本の文化庁の一部署をカウンターパートに定めてはどうか」
日本の民主党政権下で官房長官を務めた仙谷由人氏(69)は、2010年に菅直人首相(当時)が発表した談話や、韓日両国の図書譲渡協定の締結に当たって立役者となった。宮内庁が所蔵してきた「朝鮮王室儀軌」(朝鮮王朝時代、王室や国家の重要な行事の内容を絵と文章で整理した書物)など、韓国の書物1205冊が、このとき故国への返還を果たした。その仙谷氏が今月12日、国立古宮博物館で行われた「韓日文化財返還問題、過去と未来を語る」と題する学術セミナーで、当時の経験を基に基調講演を行った。今回のセミナーは、光復(日本の植民地支配からの解放)70周年と韓日国交正常化50周年を記念し、国外所在文化財財団が韓日両国間の文化財返還問題の解決法を模索するため企画したものだ。
仙谷氏は基調講演後、本紙とのインタビューで「2010年に日韓併合100周年を迎え、日本の内閣には、韓国との関係改善を図るため、言葉ではなく行動で示さなければならないという基本的な認識があった。それと同時に、2004年以来、韓国側から非公式的に、宮内庁が所蔵する韓国の図書の返還を要請してきた。朝鮮総督府経由で持ち出され、日本政府が保管していた書物は全て返還すべきだというのが私の考えであり、宮内庁の考えでもあった」と述べた。
「(朝鮮)総督府の統治時代に、朝鮮半島から無理やり持ち出したものは返さなければならないと思う。そのためには両国間の友好的な関係が重要だ。そして、返還のための交渉は静かに行わなければならない。マスコミなどに大々的に知られてしまうと、博物館など担当機関のトップやその上役が政治的な決断を下さなければならず、決断を下すのが容易ではなくなるからだ」