政府の行政刷新会議による事業仕分けは28日、国土交通省所管の社会資本整備事業特別会計を6テーマに分けて議論し、公共事業にメスを入れた。同特会は道路や港湾、空港、治水(ダムなど)ごとに勘定が分かれ公共事業の原資となっている。仕分けでは軒並み予算の圧縮を求めたが、ねじれ国会を前にすぐに実現できるかは不透明。ただ、これを実行していかないと民主党政権に対する期待感は一段と低下しかねない。
「可能かといわれるとちょっと……。努力したいと思う」。仕分けの現場にも説明役として参加した国交省の津川祥吾政務官は同日夕の記者会見でこう述べた。道路、港湾、治水は「10~20%」、空港は「10%」。仕分けで求められた予算の圧縮幅は単純計算で最大5000億円規模になる。
■国会も関門に
同政務官は「現実的な議論を全然していない。そもそも公共事業をこんなに削って政治的に持つわけがない」といら立ちを隠さない。同省の政務三役経験者も「今回の判定を柔軟に見直す必要がある」と述べ、早くも軌道修正に乗り出す考えを示した。
特会を一般会計にすることには課題も多い。「一般会計化するメリットはない。特会廃止というメッセージを出したいだけだ」。国交省内ではこんな声も上がる。政府内で難しい制度設計が迫られるうえ、特会法の改正が必要。参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」の下で法案成立は容易ではない。
空港の整備や維持運営などに充てる「空港整備勘定」に対しても「廃止」の判定が出たが、すぐに廃止できない事情もある。同勘定には羽田空港の拡張事業などにより約1兆円の借金があり、すぐに一般会計化すれば、特会の借金を国民全体で負担することにつながるからだ。
通常の堤防より幅の広いスーパー堤防の整備事業では国交省が方針を立てた約870キロメートルを整備するには400年かかるとの指摘も出た。
「スーパー堤防は『スーパー無駄遣い』ということで廃止にさせてもらいたい」――。仕分け人の緒方林太郎衆院議員は通常の堤防よりも決壊しにくい「スーパー堤防」の判定結果をこう発表すると、会場内からは笑い声と拍手が起こった。
■年度内に結論
仕分けで国交省側の説明役を務めた津川祥吾政務官は終了後、記者団に「根本的な治水対策を未来永劫(えいごう)放棄するのか議論しないといけない」と指摘。より優先順位の高い河川整備や水害対策を進めると強調しながらも、スーパー堤防については国交省の政務三役で年度内に結論を出すと述べるにとどめた。
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