【巨人】阿部、優勝「できる」!ヤクルトに1差
◆巨人4―3ヤクルト(26日・東京ドーム)
巨人が首位ヤクルトとの天王山初戦に逆転勝ちし5連勝。9年連続でクライマックスシリーズ(CS)進出を決めた。0―3の2回に長野の14号2ランで追い上げ、4回に岡本の適時打で同点。5回に阿部の二塁打で勝ち越した。高木勇は5回3失点で約1か月ぶりの9勝目。継投で逃げ切った。首位決戦に先勝し、ゲーム差を1とした。27日も勝てば、逆転V4が見えてくる。
すさまじい打球音に、場内は一瞬、静まり返った。その後、大歓声へと変わった。阿部が決めた。打球は低い弾丸ライナーとなって、中堅手・上田の頭上を越えた。高ぶりを抑えきれず、「っしゃあ~!」と二塁塁上で叫んだ。「結果は打球に聞いてくれ、という感じだった。久しぶりに芯に当たった感触だね」。両手を3度、大きくたたいた。
四球、見逃し三振で迎えた第3打席は、同点の5回2死一塁。前の2打席で「体が開いている」と感じていた。2ボールからロマンの外角真っすぐに「ショートの頭上を狙って」踏み込んだ。13打席ぶりの安打は、決勝の二塁打。10日の阪神戦(甲子園)で15号2ランを放って以来、実に35打席ぶりの打点だった。一塁ベンチ上では父・東司さんが観戦していた。派手なオレンジ色のポロシャツを、この打席に向かう前に見つけた。「練習では逆方向を狙いなさい」との助言を思い出し、結果につなげた。
初回、高木勇が上田に死球、川端には小林の打撃妨害で無死一、二塁とした。阿部はマウンドに行き、「気持ち良く打たれちゃえよ。いいよ3点くらい」と耳打ち。ボールが先行する中で、“開き直れ”とのアドバイスだったが、結果は言葉通りとなった。それでも、ルーキー右腕はその後1死満塁のピンチをしのぎ、2回以降は立ち直った。4番はそのきっかけを作り、自らのバットで白星を贈った。
迷惑をかけた分、打ちたかった。背中を痛め、21日の中日戦を欠場。20日の試合前練習中に違和感を覚え、試合後は激痛が襲った。痛み止めを3錠飲んだが、「つるような感じでやばかった…」。呼吸もできないほどで、寝ても「数時間に1回は痛くて起きた」。朝には目の下にクマができていた。「毎年一度は背中を痛めるけど、よりによって、何でこのタイミングなんだろうな…」。自分を責め続けた。
22日の阪神戦から代打で復帰したが、結果は出なかった。「開き直るしかなかった。ここで打てなかったらとか雑念を入れないで、いい意味でね」。3回2死二塁で見逃し三振をしても、「次だ、次」と言い聞かせた。
シーズンを通して低迷が続いた打線が3点のビハインドをはね返しての首位決戦先勝で、東京D12連勝とした。首位とは1ゲーム差で、残り5試合。阿部は「残りは全部勝つつもりでいく」と宣言した。「いい打者、投手がいるが、プレッシャーがかかっているのはヤクルト。僕らは思いきってぶつかりたい」。もう、不安はない。優勝は?と聞かれ、即答した。「できる!」。男に、二言はない。(水井 基博)