春野ユリ - こころ,メンタル,モチベーション,人生,仕事術,健康,時間管理,生活 10:00 PM
生産性と幸福感を魔法のように高めてくれる6つのテクニック
Inc.:「1つだけ願いが叶うとしたら、何を願いますか」と最近聞かれました。
「もっと時間が欲しい」と真っ先に思いました。でも、もし時間ができても、仕事でその時間は埋まってしまうことになるだろうな、とも思いました。
それで代わりにこう答えました。「時間の流れを遅くしたいです。時間の流れがゆっくりだった子供時代に戻りたいです。今ではあの頃が夢のように感じられます」
そんなとき、私は『ワシントン・ポスト』紙の記者であるBrigid Schulte氏の著書『Overwhelmed』に出会いました。今回はこの本から、自分自身の処理能力をもっと効率的に活用するテクニックをご紹介します。自分に限界を感じたときにきっと役に立つはずです。
多忙であることは成功していることと同じではない
社会学者のEdson Rodriguez氏によれば、「多忙」であろうとすることが、文化的に強く期待されるようになっています。しかも、「忙しい人ほど有能で、頭が良く、成功していて、尊敬と羨望を集めるものだ」と考える傾向があると、多くの心理学研究が指摘しています。私たちの社会は、一体いつから結果ではなく、費やした時間で知性や成功を計ることにしたのでしょうか。
ミシガン州立大学の社会学者であるBarbara Schneider氏が指摘するところによれば、現代人は起きている時間の半分はマルチタスキングをしています。1975年と比較すると、マルチタスキング時間は実に2倍になっています。電子機器が多すぎるせいで気が散り、過剰なデジタルコミュニケーションのせいで、情報処理能力、決断力、効率的に仕事を仕上げる能力が低下しています。
サンディエゴ州立大学の心理学の教授であるJean Twenge氏は、「現在、鬱や不安症になっている高校生や大学生の数は、大恐慌時代の5倍にのぼる」ことを発見しています。
Schulte氏は、こうした"多忙さ"を「過剰さ(overwhelm)」と命名しています。では、こうした問題は現代特有のものですが、どのように対処していくべきでしょうか?
1. 意識を変える:ストレスを強く意識しないようにする
自分はストレスが多いと感じていると、実際に健康状態が良くなくなってきます。そのため、ヨガや深呼吸、あるいは自らの意志の力を活用し、自分のストレスを強く意識しないようにできれば、健康状態を改善させることができます。もちろん、ストレスの原因を根本的に解消することはできませんが、日々の実感としてポジティブな影響を感じることができるはずです。
Schulte氏は、「ToDoリストが尽きることはなくても、人生はいつか必ず終わりを迎える」と指摘しています。まずは、一息ついてください。ささやかながらものびのびとできる瞬間に巡り会えたら、自分を解放してあげてください。
2. まず幸福になる:物質的成功によらない幸福を探してみる
まず物質的な目標達成があり、幸福はそのあとにやってくると思われがちですが、その逆こそが真実です。つまり、まず幸福感があるべきなのです。カリフォルニア大学バークレー校の社会科学者であるChristine Carter氏は、「まずは前向きに幸福を感じることで、目標の達成が促進される」のだと述べています。
次の課題を試してみてください。最初に、紙の真ん中に線を引いて2つにわけます。左側には自分が欲しい物(物質的な物や旅行など)を書きましょう。右側には、左側に書いた物が欲しい理由を書きましょう。見返してみると、「それがあれば自分が幸福になれると思っているから欲しい」という物がほとんどのはずです。冷静になって、物や物質的成果を幸福感と切り離してみてください。そして今、この瞬間にどうしたら幸福になれるかを考えてみましょう。
3. 自分がコントロールできることに集中する:自主性は生産性と創造性の向上につながる
ミシガン大学の神経科学者であるHuda Akil氏は、「ストレスによって、私たちの生活にかかるさまざまな影響力を予測したりコントロールしたりする能力が損なわれる」と述べています。情報を使って仕事をしている人たちは、あまりに多くの情報が入ってくるので、3分ごとに作業を切り替えなければならず、作業の一貫性が欠けてしまっていることをある研究が指摘しています。情報の洪水に翻弄されてしまっているのです。
それに対して、「自主性、統括力、目的意識をもった人々は、はるかに高い創造性と生産性を手に入れている」とMenlo Innovations社の創業者兼CEOのRich Sheridan氏がSchulte氏とのインタビューで語っています。
4. 優先順位をつける:まず自分にとって重要度の高いことに時間を作る
本当の幸福は、自分の可能性を最大限に発揮し、本当の自分になることで達成されます。ほかの人の急用に対応するばかりでは無理なことでしょう。カレンダー上でまず優先度の高いことをスケジュールして、ルーティンを作りましょう。これで、毎日細かな決断をする必要がなくなり、重要な決断に集中できるようになります。デジタルデバイスの電源コードをコンセントから抜いて、一定の時間集中して働きましょう。少なくとも90分ごとに休憩を取れば、頭をリフレッシュさせることができ、創造性や集中力、生産性が高まります。
最後に、自分にとって何が一番重要なのか、ベストな時間の使い方をするにはどうしたらいいかについて考えましょう。「時間には限りがあるので、他人の人生を生きて自分の時間を無駄にしてはいけない」とは、スティーブ・ジョブス氏がよく口にしていた言葉です。
5. 感謝する:健康と成功は感謝の気持ちを通して発展する
感謝の気持ちは生活に影響を及ぼすという研究が多数発表されています。正直言って、以前の私は、このアドバイスにわざとらしさを感じていました。しかし、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙の健康コラムニストであるMelinda Beck氏は、10年にわたる研究によって、次のようなことが明らかになっていると述べています。
感謝の気持ちをもたない人に比べて、感謝する人はエネルギーが高く、楽観的で、社会的つながりが多く、幸福感も高いのです。収入も多く、健康的に眠ることができて、定期的にエクササイズをし、ウイルス感染に対する抵抗力も強いのです。
だから、その日あった良いことを3つ思い浮かべるようにして、やるべきことでいっぱいの毎日に何か変化があるかどうか見てみましょう。
6. 遊ぼう:最高の人生の中心には遊びがある
正直に答えてください。本気で遊ぶための時間をどのぐらいの頻度でとっていますか?
精神科医であり遊びについての研究を行っているスチュアート・ブラウン博士は、「遊びのない人生は、機械的で退屈なものだ」と述べています。心理学者のミハイ・チクセントミハイ氏は、「平凡な生活の中で、"人生の輝かしいきらめき"を発見し創造する」ことを勧めています。
遊びによって、創造性、イノベーション、学習、問題解決、精神的回復力、幸福感が機能するようになります。人間には遊びが必要なのです。「遊ぶことで、自分自身を他人とも世界の諸々の可能性とも改めて結びつけることができるようになる」とSara Baysinger氏は本の中で述べています。
遊ぶときには、自分の基本的なニーズを満たすことが大切です。ワーテルロー大学の心理学者であるロジャー・マンネル氏、は「余暇を有意義に過ごすことを意識的に選択できるようになるのが、健全に生きるための最初のステップだ」と述べています。休みの日に本当にやりたいことを書き出してみると、実際にそれが実現する可能性が高まるので、ぜひ試してみて欲しいということです。
自由な時間をもちましょう。日常生活に組み込まれていない瞬間を感じ、クリエイティブになりましょう。テレビはつけないように。子供の頃、夢中になっていたときの幸福感を思い出してみてください。どうしてあんなに幸福だったのか、思い出してみましょう。
ユニークな遊び体験を提供するグループの創設者であるGigi Branch-Shaw氏は、「心から楽しんで遊んでいるときは、いつもとは違った状態になります。時間を感じなくなりますよね。遊びは大人の脳を柔軟に保ってくれるのです」と述べています。カリフォルニア工科大のマネージャーたちは、最高のエンジニアほど遊び心が多いことを発見しました。時間を気にせず、即席のメリーゴーランドを作ったり、手を使って作業をしたりするのです。
覚えておいて欲しいこと
物理的には時間の流れの速度を遅くすることはできません。でも、子どもの頃のように、流れの遅い時間を体験することはできます。このことはよく覚えておいたほうがいいでしょう。
心理学者であり瞑想を教えているTara Brach氏は次のように述べています。
私たちは、まるで人生の終わりに誰が先に着くかを競い合っているかのようです。そんな状態では、人生の表面をすくい取ることしかできません。人生を深いところまで掘り下げようとは絶対にしないのです。味わうべき人生の神秘を感じることなく、ただ解決するものとして処理していくでしょう。
私たちひとりひとりが、自分の人生の時間を取り戻して、より生産的に働き、できるかぎり人生を満喫して生きられたらいいと思います。今日という日にはもう二度と出会えないのですから。
6 Magic Tricks to Noticeably Increase Your Productivity (and Your Happiness) | Inc.
Katherine Barr(原文/訳:春野ユリ)
Photo by Shutterstock.
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- スチュアート ブラウン,クリストファー ヴォーンバベルプレス