美の壺・選「京の豆腐」 2015.09.20


(テーマ音楽)あ〜うれしいなぁ。
京都の友人から日本酒が届きました。
あ〜今日は奥さんお出かけですよね。
昼間から湯豆腐で一杯ですか?バレた?そうなんですよ。
湯豆腐の準備OK!あとはと…。
うん?肝心のお豆腐はあるんですか?「しまった!お豆腐が…」なんていつもの展開やめて下さいよ。
大丈夫ですよ。
男友達は気が利くんだから。
京都のお豆腐も一緒に送ってきました。
フフン。
豆腐豆腐…ありましたねぇ。
あ!それって…ええっ?おいしそう。
豆腐に一家言ある町です。
(ラッパ)夕暮れ時になるとこんな風景に出会います。
袋入れときます?いえいえそのままで。
すいません。
ありがとうございます。
ここのがおいしい。
どうしてもおいしい。
はいご苦労さんです。
2丁。
このままで大丈夫です。
おおきに。
ありがとうございます。
好みはいろいろあるねお豆腐もね。
軟らかいの言わはる人もあればみんな自分の好き好きやからな。
私とこにはこの固さがちょうど。
(ラッパ)一方住宅街の豆腐店。
お豆腐の味がすごいしっかりしてて好きです。
こうやってこじんまりやってはるとこは味が変わらない。
京都の方はそれぞれごひいきの豆腐があっておいしい豆腐に目がないんですね。
東山の…参道には湯豆腐の店があちこちに。
江戸時代から続く老舗の湯豆腐店。
京都らしい風流なしつらえで料理が供されます。
昆布のだしで温まったお豆腐おいしそう!豆腐専門誌の編集長西尾俊治さんです。
京都はですね水の都と言われるぐらいですね名水があちこちにあるんですけれども南禅寺の近くの白川の水というのは非常にいいお水なんです。
それで…三方を山に囲まれ鴨川と桂川に挟まれた京都は名水の宝庫なのです。
それぞれの豆腐店の切磋琢磨もあります。
こちらのにがりは自家製。
昔ながらの製法に注目しました。
粗塩をむしろで包み時間をかけ抽出しています。
随分こだわってますね。
さあ京都が手塩にかけ育ててきた豆腐のお話始めましょう。
こちら京都の木綿豆腐。
白くて四角くて木綿のようなざっくりとした風合い。
この生地の感じが名前の由来。
入山貴之さんです。
京都の町で200年来代々豆腐を作ってきました。
京都はね木綿豆腐を「白」と言う。
通称で。
実際に我々が見てるお豆腐の色というのは真っ白ではないしちょっとやっぱり大豆のねちょっと黄色みがかった色にはなってます。
ですから純粋な白とはちょっと言いにくいんですけどただ我々は食べる分のお豆腐の白というふうな白だと思います。
木綿豆腐の最大の特徴は隙間。
そう京料理のおだしもこの隙間にしみ込むんですね。
一つ目の壺は…毎朝4時。
入山さんの豆腐作りが始まります。
まずは昔ながらのかまど「おくどさん」に火を入れて…。
一晩水に浸した2種類の国産大豆を細かくすり潰します。
これを湯に入れて炊くのです。
代々伝わってきたかまどは木が燃料です。
かまどに付きっきりでこまめにかき回します。
うちの場合はかまどでね炊くということでしかも木を使って炊くということですから…これだけは絶対避けないと駄目です。
ゆっくり炊いていては風味が飛んでしまいます。
おくどさんの強い火力で短時間で炊くのです。
大豆の甘〜い香りが立ちこめます。
布袋でこして出来るのが豆乳です。
ここでまずご覧に入れるのが絹ごし豆腐作り。
入山さんの店で最初に作るのが絹ごし。
凝固剤と寒天で固めます。
溶かした寒天をこして滑らかにし豆乳に加えます。
寒天の用い方は和菓子作りを応用した京都ならではの技なのです。
まさに京菓子のような繊細な舌触り。
京美人の豆腐です。
同じ豆乳からいよいよ看板の木綿豆腐を仕上げていきます。
ここで初めてにがりを加えると…。
すぐに固まり始めます。
タイミングを見定めてせっかく固まりだした豆腐をなんと大胆にも崩して別の型に移します。
この工程が豆腐の隙間を作るのです。
おもしを載せて固めます。
理想の弾力になっているか布の上から触れて確認。
お豆腐でもね軟らかすぎるとお客さん困るんです。
お箸でつかめないと駄目。
やっぱりそういうふうなプルプル具合やないと駄目やいうことですね。
朝4時に始めておよそ5時間。
入山さんの豆腐が完成しました。
最も単純な材料に手間ひまを惜しまずかけることで生まれる豆腐。
京都はその端正な姿にこだわり続けます。
あ〜昆布もいい感じじゃない。
ではお豆腐を。
あっいやそのと…豆腐…。
どうだ?う〜んああこの香り!うん?これもしかして…。
ですよねぇ。
モッツァレラチーズ!?ああモッツァいない!なんだ気づいてたら教えてよ。
気分はすっかり湯豆腐だったのに。
もう!豆腐の角に頭ぶつけてもう死にたい。
江戸時代後期に出版されベストセラーになったグルメ本「豆腐百珍」。
煮る焼く炒めるなど豆腐料理ばかり100品を紹介しています。
頻繁に登場するのが「田楽」。
14種類の田楽が紹介されています。
田楽を再現して下さった福田浩さんです。
ただのお豆腐ですけどもいろんな物を加えたり利用したりしていってまあ田楽でもこれだけ何種類もできるんですからねお料理のバイブルみたいな感じですね「豆腐百珍」というのは。
「たまご田楽」は豆腐に卵入りのしょうゆだれを塗りこんがり焼いたもの。
わさびとケシの実のトッピングがおしゃれ。
葛あんをかけ砕いたお麩をあしらいます。
そしてご存じ…粉山椒入りのみそだれ仕立て。
山椒の葉を飾ります。
お豆腐を買いに来た奥さんたちが…いわゆるファーストフードとしては人気だったんじゃないでしょうか。
田楽はまるで白い豆腐が色とりどりの着物をまとったよう。
目にも楽しい料理です。
二つ目の壺は…あの弥次さん喜多さんも田楽を楽しみにしながら東海道中を旅したといいます。
東海道は京都の終点に程近い…ここの南門で弥次さん喜多さんは田楽にありつきます。
今も参道で田楽を商う店があります。
当主の辻雅光さんが伝え聞いていわく…。
今で言う出店夜店のようなものが境内一面に立ち並んでおりましてそういった中でお客様を手前どもの店に入って頂くように引きつけるために…こちらの「木の芽田楽」は一風変わってみその色ではなく深い緑が印象的です。
その作り方は京風の白みそを使います。
卵の黄身砂糖みりん酒などを混ぜたタレ。
火が入ることで程よい焼き色と香りを醸すのです。
彩りの決め手は…京都名産鞍馬の山椒ですが更に…。
木の芽みそとしたわけでございますがやはり木の芽ばっかりを色が付くほど入れるとねえぐい感じがしますんでですからいつの時代か緑の色を爽やかな色を求めて……で色を付けるようになったと思われておりますけれども。
みそと山椒だけでなく青菜で深い緑色を演出しているのです。
この緑は焼くことでより趣を増します。
甘いみそと山椒の香ばしい香りが立ち昇ります。
炭火で焦がします。
緑がこんがり色づき織部焼のようなわびた風情です。
もともと京都にございました白みそですね。
これは京都では甘味料のもともと代用であったわけですね。
そういった…「わびさび」じゃないですけれどもそういった田楽豆腐というのを目指しております。
古都の旅路ではんなり味わう田楽です。
もう湯豆腐にはこだわりません。
冷ややっこで一杯キュッといきます。
どうです?薬味もいろいろ用意しましたよ。
しょうがかつお節ねぎしそみょうが粗塩からしゆずこしょう。
おいしそうでしょ?どれもおいしそうですね。
豆腐ってアイデア次第で何でも合うんですね。
他には?うん?そう来ると思ってね…。
ザーサイイカの塩辛つくだ煮京漬物…なんてどう?はぁ確かにイケそう。
そう。
そして仕上げに…。
あ?京の豆腐のアッと驚くエピソードを一つ。
ここでは中国から伝来した禅僧ゆかりの精進料理を頂くことができます。
お参りした人々をねぎらいもてなす料理です。
とても豪勢に見えますが肉や魚は使えません。
そこで考えられた料理がかまぼこならぬ小麦粉などの衣で包んだ山芋。
お肉?…ではありません。
しょうゆなどで煮つけたお麩。
この中国の精進料理普茶料理は「擬き料理」と言いましてね本来お寺では出さないまたは私たち僧侶が食べないような肉・魚を使ったお料理それを別の材料でそれを見立てて似たようなものを作りましょうという。
極め付きがこちら。
どう見てもうなぎのかば焼き。
実はこれが豆腐なんです。
うなぎの皮に見立てたのりにすり潰して下味をつけた豆腐を載せます。
うなぎそっくりの模様までつけて…。
油でサッと揚げます。
まだあります。
ご丁寧にもかば焼き風味のたれを塗ってこんがりと。
手の込んだうなぎ擬きです。
この擬き料理を作る時に非常に加工がしやすいということでお豆腐がいろいろな形で作られてきたものと思われます。
禅寺に伝わるとんちの利いた豆腐です。
京都の真ん中にひっそりとたたずむ旧家…ここで生まれ育った料理研究家の杉本節子さん。
江戸時代から続く呉服商だった杉本家はたくさんの奉公人に賄いを出していました。
質素倹約を旨とした日々の献立「おばんざい」にも豆腐が。
季節に関係なく使える食材というものもやはり1年の暮らしの中では必要になってくるんですよね。
そうした時にお豆腐そしてお豆腐から作ったいろいろな食材といいますのはとても便利に使い回せるというそういう食材なんですよね。
豆腐はもちろん揚げがんもどき高野豆腐湯葉などの食材にはある名前が付いています。
…ということでときしらずという言い方をするんですけれども。
高野豆腐はお昆布のおだし少し甘めにしたおだしで煮含めるというのが京都でもよく作るお料理の一品。
そして湯葉を細かく刻んでちりめんじゃことさんしょうの実など少し加えて炊きあげますとご飯とかお茶漬けにおいしい一品というのが出来ますね。
「ときしらず」はおばんざいの陰の主役。
だしの柔らかな色にもなじみます。
最後の壺は…200年以上前から杉本家に伝わる…年中行事や日々の献立の決まりなどを記した備忘録です。
12月のみそか。
すす払いをします。
この日頂くのは…豆腐をうどんのように細く切りだし6しょうゆ1酒1合わせて8杯の汁をかけたもの。
毎月16日と21日の献立にも豆腐です。
16日は親鸞様の月命日。
おみそ汁には小豆小芋そして焼き豆腐が決まりです。
21日は親鸞様の誕生日。
茶飯とさいの目に切った豆腐のみそ汁です。
杉本家に今も伝わるとっておきの倹約料理「白あえ」を教えて頂きました。
使い残したようなお豆腐があったような時にちょうどそれで水が切れていたりしますね。
そうした時に衣にちょうどいい状態にお豆腐がなってくれてるということもあります。
そういうお豆腐の一つの使いみち。
おいしく使えるお料理の一つだと思います。
この日の野菜はいんげんとみょうがだけ。
みょうがはたっぷり入れて香りと食感を楽しみます。
季節季節の物を取り合わせてそしてこのお豆腐のあえ衣であえると非常に季節感のあるおいしいさっぱりとしたお料理になると思います。
ささやかなごちそうが生まれました。
豆腐の白でほんのり輝く一品です。
…というふうに言うんですけれどもそうしたお料理をまとめ上げてくれる大事な食材がお豆腐。
やはりお豆腐がなくては京都のお台所は務まらへんなと思います。
色形味さまざまな表情を持つ豆腐。
京都の食卓を輝かせます。
出来ましたよ〜!マサオ・クサカリプレゼンツ。
「豆腐とモッツァレラチーズのカプレーゼ」。
うわおいしそう!でしょ?よく見て下さい。
豆腐とモッツァレラが交互にトマトに挾まって和と洋のマリアージュ。
これぞ世界中の人に愛されるお・も・て・な・しの料理です。
やればできるじゃない!草刈さん。
う〜ん!さあ頂きましょう。
今日は東京の上野公園にある2015/09/20(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「京の豆腐」[字]

身近なテーマを中心に3つのツボでわかりやすく観賞指南する新感覚美術番組。今回は「京の豆腐」。京都名物、湯豆腐、田楽、おばんざい!案内役:草刈正雄 語り:木村多江

詳細情報
番組内容
京都の奥深い豆腐文化をたっぷりご紹介します。創業三百余年、老舗の湯豆腐店のこだわり美豆腐の秘密とは?▽手作り豆腐職人が絹ごし豆腐に加える京都ならでは食材とは?▽江戸時代にベストセラーの豆腐グルメ本、弥次さん喜多さんも食べた豆腐田楽の美しい彩りとは?▽うなぎのかば焼き?いいえ豆腐なんです!精進料理でもどき料理の驚きの作り方▽質素倹約と季節感!京の旧家に伝わる美しき豆腐のおばんざいの数々を堪能します。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】木村多江

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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