ラグビー日本代表が教えてくれたこの国の活路〜「純潔日本人主義」に未来はない!

2015年09月26日(土) 田村 耕太郎
〔PHOTO〕gettyimages

ラグビー日本代表チームにみる先進性

惜しくも第2戦ではスコットランドに敗れてしまったが、イギリスで開催されているラグビーのワールドカップで、日本が世界ランク3位の強豪・南アフリカを破った快挙は、みなさんもご存じだろう。

歴史的に見てもあり得ないくらい凄いことだが、ここですぐに「日本は凄い」と騒ぎたてるメディアの勘違いが怖い。今回勝ったのは、チーム編成も戦略も”純国産ではない日本代表”なのだ。

単に熱狂して騒ぐか、それとも冷静に分析して安定した強さを常に再現できるようになるか、ここが、「真珠湾から連戦連勝、もっと遡れば元寇、日清・日露から負けていない」と勘違いの大本営となるか、真の強さを獲得するかの別れ道だと思う。

ラグビーの一番の特徴は外国人をナショナルチームに入れやすいことだ。その点においては他のスポーツに追随を許さない。

・出生地が日本
・両親、祖父母のうち一人が日本出身
・日本に3年以上、継続して居住している

これらいずれかの条件をクリアしていれば日本代表に入る資格がある。かつては他国で代表となった選手も日本代表に入れたが、今は基本的に二重代表は認められていない。ラグビーの場合、国籍よりも、所属しているチームがある国を優先するのだ。

今回の日本代表チームでは、日本人のフィットネスや技術では不足するポジションに10名ほど外国生まれの選手が選出されている。つまり純粋日本人によるオールジャパンではないのだ。ここがある意味でラグビーの先進性だと思う。

欧州や南半球で発達したこのスポーツは、移民を前提とした国々で広がり、プロ化が遅れアマチュア精神の塊として成熟してきたことが背景にあるのではないか。




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。