東北大学大学院生命科学研究科の草野友延教授のグループは、ドイツ「生物多様性・気候変動研究センター」(Biodiversity and Climate Research Center)のトーマス・ベルベリッヒ博士、東北大学大学院農学研究科の金山喜則准教授らとの共同研究により、果実の糖度を高める新規手法の開発に成功しました。研究成果については、9月24日付「Plant Biotechnology Journal(電子版)」に掲載されています。
果実を甘くする技術はさまざまなものがあります。花が開いた頃に根を冷やして栽培する「根域冷却水耕栽培」、水分・塩分を少なくして植物にストレスを与え糖度を高めて栽培する方法など、研究が進んでいます。
今回の研究は、トマトを使って行われました。トマトの中に「bZIP遺伝子」という遺伝子があり、その遺伝子はbZIPタンパク質を合成します。甘み成分の元となるショ糖が少ない場合、このbZIPタンパク質を合成することでショ糖を作るのですが、ショ糖が多くなるとショ糖濃度を感知するセンサーの役割を持つ遺伝子領域「上流ORF」が働き、ショ糖の合成を抑制してしまうのだとか。
今回東北大では、DNA分子の中にあるショ糖センサー領域「上流ORF」を削除し、そのDNA分子を生食用にも用いられているトマト品種に導入しました。導入後、成長したトマト果実の中にあるショ糖・グルコース・フルクトースの総量を計測したところ、野生トマトの1.5倍になったそうです。
この方法は、ショ糖が主な甘みの元となっている果実の糖度を高めるだけでなく、バイオマス(再生可能な生物由来の有機資源)を発酵・蒸留して作られるバイオマスエタノールの材料となるトウモロコシの実の糖度を高める技術への応用が期待できるとのことです。
(あまにょん)
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