『獅子舞ボーイズ』 オレのためにやってんのか!ご当地映画祭で富山県合併十周年記念の「獅子舞ミュージカル」 (柳下毅一郎) -2,977文字-
『獅子舞ボーイズ』
監督 市川徹
脚本 気仙沼悠希、武内晶子、市川徹
撮影 金森正晃、藤田敦
音楽 藤久直樹、藤久尚子
出演 皆本真帆、布川隼汰、長谷川初範、武内晶子、中田裕一、加藤貴宏、苅羽悠
高岡市合併十周年記念映画
さっそく来たよ!『きみと見る風景』のときに予言したとおり、「平成の大合併」の負の遺産ともいうべき「合併十周年記念映画」。今度は富山県高岡市からの登場である。これ、なんと横浜にできたミニ映画館シネマ・ノヴェチントで〈ご当地映画祭〉として上映された。オレのためにやってんのか! と文句を言いながら「鋳物と獅子舞の町」高岡発の獅子舞映画の上映に滑りこんだところ、驚いたことに映画がはじまる前に『彩火』や渡辺裕之主演のBCリーグ(北陸地方を中心にしたセミプロ野球地域リーグ)富山サンダーバーズプロモーション映画『TAKAOCAN DREAM ~がんばれ!サンダーバーズ!!』といった映画の予告編が次々にかかるではないか! これどうやらすべてTAKAOKAN DREAM なる会社が製作する高岡/富山映画であるらしい。なんでもVシネマを中心に20年以上のキャリアを誇る映画監督市川徹が中心になって富山映画を作っているという。ちなみにこの『獅子舞ボーイズ』、市川徹監督八十作目記念作品でもある……『魚津のパン屋さん』なる映画の予告編もかかっていたので、次は魚津市映画になるのか? シネマ・ノヴェチントでは10月に〈富山映画祭〉が予定されているようなので、ここで一気に紹介されるのだろう。楽しみなような怖いような……
さて、映画がはじまると舞台は横浜。は?と思ったが実は市川監督は横浜出身だそうで、どうやらシネマ・ノヴェチントとの関係もそこらへんから……映画には富山に移住して二十年経っているのにいまだに「旅の人」だと嘆くキャラクターも出てくるのである。鉄道研究会の春子(皆本真帆)とワタル(布川隼汰)は中華街で食事中。
「ねえ車借りてドライブにでもいかない?」
「いやよ、どうせまたホテルに誘うつもりでしょ!」
と図星をつかれると回想シーンがはじまって、そこでは
「♪汗もかいたし、ちょっと休んでいかないか~」
と歌いはじめるワタル。そう、この映画実はミュージカルなのである! さすがはふっくんの息子、父親譲りの美声を……と言いたいところだが実に壊滅的な歌に壊滅的な歌唱で、まあ自主映画なら許せるか……というレベルの大惨事。まいったなこれ……と思っていたら春子は大学に貼ってあった「菅笠(すげがさ)作りワークショップ」のビラに興味を抱き、「ふくおか行ってくるわ!」といきなり高岡市福岡町に行ってしまう。とりのこされたワタル、「ソフバンの電波が届かない」僻地の春子と連絡がとれなくなってしまったので、「路面電車とかある鉄道王国」高岡に撮影がてら出かけるのであった。
♪はじめての街に降り立った~君を求めてやってきた~本当にこの街にいるの?
♪やべ~すげ~山ん中~
(歌も含めて)どうなる!? ワタル!?
tags: ご当地映画, 中田裕一, 加藤貴宏, 地方発映画, 市川徹, 布川隼汰, 武内晶子, 気仙沼悠希, 皆本真帆, 苅羽悠, 藤久尚子, 藤久直樹, 藤田敦, 金森正晃, 長谷川初範
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