イノシシ撃退機:「うちも被害助けて」各地農家からSOS

毎日新聞 2015年09月26日 10時48分(最終更新 09月26日 11時14分)

イノシシ撃退の機器に用いる電子部品を前にする漆谷さん=福岡県みやこ町犀川本庄で2015年9月17日15時25分23秒、山本紀子撮影
イノシシ撃退の機器に用いる電子部品を前にする漆谷さん=福岡県みやこ町犀川本庄で2015年9月17日15時25分23秒、山本紀子撮影

 ◇苦悶の声「キュイ〜ン」が効果絶大 注文殺到、納品6カ月先

 イノシシのうめき声によるイノシシ撃退機を発明した福岡県みやこ町犀川本庄の漆谷(うるしだに)正義さん(70)に、田畑を荒らされて困っている各地の農家からのSOSが殺到している。電柵やフェンスで効果のなかった人からの依頼が多く、注文は200件に達した。漆谷さんは知人の協力を得て、撃退機の本格製造に乗り出している。

 9月の毎日新聞の報道後、北は福島県から南は鹿児島県まで400件以上の問い合わせが漆谷さんに寄せられた。イノシシに果樹や稲を荒らされる農家が大半だが、「芝生が掘り返される」と嘆くゴルフ場も2割近い。試験導入を検討する自治体や、「ミミズを食べるためか庭先が掘り返される」という一般市民からも相談があった。長崎県五島列島の福江島の農家は「少し前からイノシシが泳いで渡りすみつくようになった」と困った様子だったという。

 「ここ1、2年で被害が出始めたという人が多い。よほどイノシシが増え、食べものに事欠いているのでしょう」と漆谷さん。

 撃退機は、野生のイノシシを捕まえた際の苦悶(くもん)した「キュイ〜ン」という声を収録、イノシシが嫌う犬のほえ声も収め、自動再生する。試験設置して約3カ月間、食害は起きなかった。殺到する注文に対し、漆谷さんは、▽撃退効果はスピーカーの届く20〜30メートル以内▽3カ月超の長期的効果は不明▽実験段階のため購入は1人2台まで(1台1万800円)−−の条件を承諾する人から受注している。

 スピーカーを覆う木箱は手先の器用な知人が作り、内部の電子部品は専門会社が製作、漆谷さんが組み立てて完成させる。納品は6カ月先になる。

 獣害に悩む人の中には、同様にラジオの音を流している人もいるといい、漆谷さんは「課題は音の効き目をどう持続させるか。イノシシの声を断末魔のものに変えることも考えたい」と話す。電子メールurushida@skyblue.ocn.ne.jpで相談や希望を受け付けている。【山本紀子】

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