「韓国人慰安婦を強制連行」と書いたのは朝日でなく産経新聞だった! 植村記者に論破され阿比留記者が赤っ恥 

リテラ / 2015年9月26日 8時0分

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 したがって、記事はこの経緯に沿って(1)元慰安婦の女性がソウル市内に生存し、挺対協が聞き取り調査を始めた、(2)挺対協は女性の話を録音したテープを記者に公開した、(3)以下、挺対協の尹代表らによると......という構成になっている。つまり、テープはあくまでも尹代表らの話の真実性を裏付ける材料のひとつに過ぎず、記事は尹代表らの話を元に書かれているということだ。もし、この報道が"記者の作法として"許されないのだとしたら、警察の発表記事などいっさい書けないことになってしまう。いまや産経の「顔」とまでいわれる阿比留記者が、それを知らないはずはないのである。

 もうひとつの争点(?)である「慰安婦」と「挺身隊」の混同・誤用問題も、植村氏の話には説得力がある。これは朝日新聞社も昨年8月の検証記事では混同があったと認めているが、植村氏の主張によれば、そもそも当時の韓国では「慰安婦」という言葉は一般的でなく、この問題に関心のある学者も調査団体の関係者も、あるいは元慰安婦の人たち自身も、みんな「挺身隊」という言葉を使っていたというのだ。「挺身隊」は韓国語で「チョシンデ」という。金学順さんが名乗り出たときも、「チョシンデハルモニ(挺身隊のおばあさん)がついに名乗りを上げた」と言われたそうだ。なにより、韓国の慰安婦問題に関する調査団体が「韓国挺身隊問題対策協議会」と名乗っていることからしても明らかだ。

 当然、当時は日韓の新聞の多くが「挺身隊」という言葉を使っていた。1991年9月3日付産経新聞大阪本社版には〈『挺身隊』の名のもとに、従軍慰安婦として狩りだされた〉と、ほとんど植村氏の記事と同じ表現が使われている。読売も、毎日も例外ではない。にもかかわらず、植村氏だけがバッシングされ、新しい職場に「辞めさせろ」「殺せ!」といった抗議や脅迫が届くといった事態が起きているのだ。いかに異常なことかがわかるだろう。

 しかし、植村氏は「他紙も間違っているではないか!」とは非難しない。それは、どの会社のどの記者も、その時代時代で真実を追求しようと一生懸命に取材し、記事を書いた結果だからだ。実際、阿比留記者らをそう諭す場面もある。

 だが、一方の阿比留記者らは、植村氏が韓国語ができ、韓国の留学経験もある韓国の専門家だから一般の記者とは違う、といった訳のわからない理屈を展開しようとしたり、阿比留記者も原川記者も実は元慰安婦を直接取材したことがないということが明らかになったり(理由は「韓国語ができないから」。植村氏も「通訳を使えばできるよ」と当然のツッコミを入れている)、とにかく読みどころ満載の"インタビュー対決"なのだ。

 しかも、産経がみっともないのは、8月4日付の紙面で〈「強制連行」「挺身隊」本紙も過去に使用〉とこっそり記事を載せている点だ。元朝日記者の植村氏からの指摘でわかったということにはいっさい触れず、謝罪も訂正もしていない。朝日新聞に対して「廃刊してお詫びしろ」と迫っていたのに、自分たちの誤報に対するこの態度はいったいなんなのか。

 しかも、これは「産経は正義、朝日は廃刊しろ!」と叫んできた右派知識人やネトウヨたちも同罪だ。

 そもそも朝日新聞バッシングは最初から右派メディアと官邸によって恣意的に仕掛けられたまったく中身のないものだったのだ。「国賊」という言葉は、朝日ではなくバッシングを仕掛けた連中にこそぴったりの形容詞である。
(野尻民夫)

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