【社説】韓国全土で排ガスをまき散らす「クリーンディーゼル車」

 韓国政府は24日、米国で排ガス規制を逃れるためディーゼル車に不正なソフトウエアを搭載していた独フォルクスワーゲン(VW)社の各車種に対し調査を開始した。米国環境保護庁は18日、ゴルフ、ジェッタ、パサート、ビートル、アウディA3という5車種のVWディーゼル車について「検査時だけ排ガス低減装置が作動するようにソフトウエアを不正操作した」として、米国国内で48万台をリコール(回収・無償修理)するよう命じた。検査のときだけごまかして基準を満たすが、その後は汚染物質をばらまきながら道路上を走行していたということだ。韓国にもこのような不正車両が約15万台輸入されたものと推定されている。

 ディーゼル車は燃費が良いが、窒素酸化物(NOx)など人体に有害な汚染物質を多く排出する。首都圏の窒素酸化物排出量26万トンの半分はディーゼル車が原因だという調査結果もある。もちろん、政府はディーゼル車の環境基準を欧州連合(EU)並みに強化している。昨年も窒素酸化物の排出許容量を走行距離1キロ当たり0.18グラムから0.08グラムに引き下げた。しかし、この基準は、検査場でのみ適用される。自動車検査場では車のエアコンを切り、気温20-30度を保つという条件で試験が行われる。ところが、実際に道路上を走行するときはエアコンをつけるのが普通で、急加速をしたり、坂を上ったりもする。だから、実際の道路を走行する際は検査場よりも汚染物質が多く出やすい。このほど国立環境科学院が国内でディーゼル車2台を走行させて調査したところ、窒素酸化物が許容値の7-8倍検出されたとのことだ。

 韓国には道路走行時に適用される排ガス許容基準がまだない。基準がないから、VWのように検査場の排出量と道路走行時の排出量に差があっても処罰するのは難しい。政府はEUと共同で排ガス測定方法や基準を作るべきだとしているが、時間ばかりが過ぎている。乗用車については2017年9月に道路走行時排ガス認定制度を導入する計画だという。

 今年上半期に韓国で販売された自動車約90万台のうち、52%に当たる47万台がディーゼル車だった。政府がちゅうちょしている間に、自動車メーカー各車が「クリーンディーゼル車」と宣伝してきたディーゼル車は、汚染物質をまき散らして韓国全土を走り回っている。政府は急いでディーゼル車排ガス測定を実際の道路走行状況で実施すべきだ。その上で、基準に達しないディーゼル車は韓国で販売できないようにしなければならない。

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