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【政治】

改正派遣法 意見公募わずか3日間 労働者より施行日優先

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 働く人を入れ替えれば企業が同じ職場で派遣労働者を使い続けられるようにする改正労働者派遣法をめぐり、厚生労働省がパブリックコメント(意見公募)の期間を十七日までの三日間で打ち切った。行政手続法は公募期間を原則「三十日以上」と定めるが、特別な事情があれば、短縮を認めている。改正法は成立から施行まで三週間もなく、公募期間の短縮につながった。政府が経済界の都合を優先し、労働者が不利益を受ける結果になった。 (我那覇圭)

 政府は改正案を八月中に成立させる予定だった。しかし、日本年金機構の個人情報流出問題などの影響で、改正法の審議は進まず、成立は今月十一日にずれ込んだ。施行日も遅らせれば混乱は少なかった。しかし、経済界の要請を受けた政府は違法派遣で働かせている労働者の直接雇用を受け入れ企業に義務付ける「労働契約申し込みみなし制度」が十月から始まるのを前に、「抜け道」が盛り込まれた改正法の施行を急いだ。三十日に施行される。二〇一二年の前回改正時は、成立から施行まで約半年あった。

 改正法をスムーズに施行するには、法律を運用するための政省令などの見直しが必要だ。政省令などの改正では、キャリアアップ支援や雇用安定策などの具体策が盛り込まれる。

 厚労省は、政省令をはじめ派遣会社や受け入れ企業が守るべきルールなどで意見公募。しかし、施行が迫っているとして、公募は三日間のみだった。

 寄せられた意見は二百件を超えたが、詳細な中身は現時点で明らかにされていない。前回改正時には、三十日間公募して八十六件だった。今回改正は「一生派遣になる」として現場の反発が強く、公募期間が長ければさらに多くの意見が寄せられた可能性が高い。

 意見公募は改正される政省令案について広く国民から意見を聞くための制度だ。総務省の一三年度調査によると、各省庁が実施した意見公募の90%が公募期間「三十日以上」。三日間は異例といえる。

 厚労省は今回公募を締め切った翌十八日には政省令案をまとめた。翌日では寄せられた意見の件数さえ正確に把握できておらず、政省令案に反映することはできない。政省令を協議する審議会でも労働者側委員から「意見公募を知らない国民もいたのでは」という趣旨の苦言が出た。

 塩崎恭久厚労相は十八日の記者会見で「公募期間が長い方がいいのはその通り」と期間が短かったことを認めざるを得なかった。

 

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