中国の戦闘機、黄海上で米偵察機前方を横切る

中国の戦闘機「JH-7」2機が先月24日、米国の偵察機「RC-135」の機首から500フィート弱まで接近した ENLARGE
中国の戦闘機「JH-7」2機が先月24日、米国の偵察機「RC-135」の機首から500フィート弱まで接近した Photo: Zuma Press

 【ワシントン】米軍関係者は中国の戦闘機2機が1週間前に米国の偵察機の前方を横切る危険な行動をしたことを明らかにした。習近平・中国国家主席のホワイトハウス訪問を目前にして、ということになる。

 この出来事は9月15日に黄海上空で発生した。中国の戦闘機「JH-7」2機が、米国の偵察機「RC-135」の機首から500フィート(約150メートル)弱まで接近した。米軍関係者によると、この米偵察機は中国の山東半島から80マイル(約130キロメートル)離れた沖合上空の国際空域を巡回していた。

 米太平洋軍は、このインターセプト(進路妨害、前方横断)が「安全でない」と判断し、国防総省が調査を行っている。

 ある軍関係者は、この出来事は安全でないとみなされるが、「near-collision(衝突寸前、異常接近)」には当たらないと述べた。

 ワシントンにある中国大使館の広報担当者にコメントを要請したが、回答はない。

 この出来事は、習主席が訪米してオバマ大統領などとの一連のハイレベル会合を控えるなかで発生した。9月には、中国の軍艦がベーリング海の米領海内を航行したことも明らかになっている。これらの軍艦は国際的な法律や条約を完全に順守し、領海を「無害通航」した。

 通常、国防総省は軍用機への安全でない接近を深刻にとらえるが、軍関係者は今回のインターセプトは脅威ではなかったと述べた。それが傾向的なものでなく例外的とみられるからだという。

 今回の出来事は、中国軍による米機への危険なインターセプトとしては、2014年以来のこととなる。14年には、悪質な中国人パイロットが米海軍の哨戒機「P8」に嫌がらせのような行為を繰り返したことがあった。

 これには、バレル・ロールと呼ばれる飛行も含まれていた。プロのスタントパイロットが行うような飛行だ。このインターセプトは中国人民解放軍の空軍中佐が行ったもので、これに対して米国務省が正式な外交措置を取り、嫌がらせ行為は止まった。

 国防総省の当局者は、今月の上空での遭遇がそれほど重要でないとの見方を示し、米中の軍用機のインターセプトは何度も発生しており、その大半は安全な方法でなされていると指摘した。国防総省は、過去1年間で中国人パイロットの行動に「改善が見受けられる」とも述べている。

 国防総省のアーバン報道官は、「今回のインターセプトと、前の危険なインターセプトとの間に長い時間がたっていることや、今回のインターセプトの性質を考えると、今回は1回限りの事象である公算が大きい」と述べた。

 米中両国は昨年、船舶が公海上で遭遇したときのために「覚書」を交わした。これは誤解や挑発行為を回避するための合意だ。上空での遭遇に関連する類似の合意はまだ発表されていない。米国の当局者は、そのような文書が今週の習主席のワシントン訪問中にまとまり、公表される可能性があるとほのめかしている。

 中国の軍艦や戦闘機のこうした行動は人民解放軍からのシグナルだと受け取られることが多い。だが専門家たちは、米軍と同様に中国軍にも「バッド・アップル(迷惑な連中)」がいると述べ、下級兵士が国際的な問題行為を引き起こすこともあると指摘した。

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