イタリアのエンジニアリング企業 WASP が、直径6m、高さ12mという巨大な 3D プリンター"Big Delta"を製作しました。貧困地域や災害の被災地に低コストに住宅を供給することを目的としており、泥や粘土といった現地で採取できる材料で短期間に住居を作ります。
世界では裕福な暮らしをする人がいる一方で、約40億人が年収36万円以下の収入しか得られない貧困層であると言われています。また日本でも東北大震災につづいて今年も豪雨による災害は発生し、家を失う被災者が大変な生活を強いられています。
WASP が開発するのはこうした家を持てない、または失った人々に迅速かつ低コストで住処を提供するための3Dプリンター。"やぐら"の部分は鉄骨をラチェット式のベルトで組み上げるため、2時間前後で設置が可能です。
材料は現地で調達できる泥や粘土に植物の種子と凝固剤(セメント)を混ぜあわせて使うため、建築資材などの輸送コストがかかりません。植物の種子は内部で成長し、根を張ることで構造の強度を増す効果を生み出します。
試作機による3Dプリントのデモ
もちろん出力できるのは家というよりはシェルターのような基本構造だけなので、内装や家具などは別途用意する必要があります。それでも短期間に風雨をしのげるプライベートな空間を供給できるというのは、世界の貧困地域や被災地域に大きなメリットをもたらしそうです。
WASP の開発チームは、将来的には災害向けだけでなく一般的な住宅の建設にも3Dプリント技術を応用していくことを構想中とのこと。
ちなみに、3D プリンターで建築物を作るという発想自体はそう新しいものでもありません。セラミック混合素材を利用して約20時間で住宅を建設するという「Contour Crafting」プロジェクトもそのひとつ、こちらも WASP のビッグデルタと同様、途上国や被災地での住居建設を目的としています。またNASA は将来の火星有人探査において、飛行士用住居を3Dプリントで作る建設技術コンペをこの9月26日から開催します。