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世界有数の自動車メーカー、独フォルクスワーゲン(VW)の不正が発覚した…
世界有数の自動車メーカー、独フォルクスワーゲン(VW)の不正が発覚した。
米国での排ガス規制を逃れるため、主力となるディーゼル車の制御装置に違法なソフトウェアを組み込んでいたという。
不正に適合試験を通った車は、公道では最大で基準値の40倍もの窒素酸化物(NOx)をはき出していた。
米当局は刑事罰も視野に捜査に着手した。VWは欧州市場での不正も認めているという。
規制当局と消費者をあざむく、極めて悪質な不正である。最高経営責任者の辞任は当然だ。VWは、車の回収・修理とともに、経緯の解明と公表に全力をあげるべきだ。
環境性能をめぐる自動車業界の国際競争は激しさを増している。ハイブリッド車や電気自動車で先行する日本勢に対し、欧州メーカーはディーゼル車を中核にすえ、排ガスの浄化技術に力を入れて米国市場に攻勢をかけていた。そのトップバッターがVWだった。
ディーゼル車は欧州市場では燃費がよく温室効果ガスの排出も抑制できる「エコカー」として定着しており、新車販売の5割以上を占める。
だが、排気中のNOxや黒煙を減らそうとすると燃費が落ちる問題がある。
VWの違法ソフトは、ハンドル操作やスピードなどから「試験中」と判断すると排ガス浄化機能が働き、一般走行だと判断すると機能を大幅に落として燃費をあげるよう、巧妙に細工するものだった。
トヨタ自動車を抜いて世界首位に立つ目標を掲げていたVWが、環境性能と燃費の両立を演じることで米国市場でのシェアを伸ばそうとした。それが不正の背景ではないかとの見方が強まっている。
高い環境性能と低いコストを両立させることは、どの自動車メーカーにとっても難しい課題ではある。しかし、温暖化防止を含む環境対策が待ったなしの状況である以上、各社は技術力を磨いて対応する以外にない。
VWの不正発覚は、交通機関が環境に与える影響を監視・分析し、必要な改善を求める非営利組織(NPO)が、ディーゼル車の排ガス試験での数値と実際のデータとの乖離(かいり)に疑問を抱いたのが始まりだった。
人材面でも資金面でも大企業に対抗しうる市民セクターは確実に成長している。こうした厳しい目に向き合って消費者の信頼を得ることなしに、企業経営が成り立たないことも、今回の不正事件は示している。
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