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2015年09月13日 俺たちの仕立てはこれからだ。「キングスマン」

toshi202015-09-13

[][]「キングスマン「キングスマン」を含むブックマーク 「キングスマン」のブックマークコメント

原題:Kingsman: The Secret Service

監督 マシュー・ヴォーン

脚本 ジェーン・ゴールドマン/マシュー・ヴォーン



 元海兵隊員で今は無職。荒廃した家庭に嫌気がさして、無軌道な日々を送るエグジー(タロン・エガートン)は警察に捕まるが、昔教わった電話番号に電話し、秘密のキーワードを言うとこで釈放される。警察の外で待っていたのは、ハリー・ハート(コリン・ファース)という名の、ダブルのスーツを着た紳士であった。

 高級仕立て屋「キングスマン」は、どこの国にも所属せず秘密裏の活動を行い、数々の難事件・テロリズムを解決する、スパイ組織の本部であった。エグジーの父親はかつてそこに所属し、殉職。ハリーは、かつて父親の同僚だった。

 ある作戦で工作員に欠員が出たことで、ハリーはかつての同僚の息子・エグジーをスカウトに来たのだった。こうしてエグジーは、過酷なキングスマン選抜試験を受ける事になる。


【関連】

「007/カジノ・ロワイヤル」感想

泣いてチンピラ - 虚馬ダイアリー


 以前ダニエル・クレイグの007第1作「カジノ・ロワイヤル」感想で自分はこう書いた事がある。

 いやあ、楽しかった。正直007って、どこかルーティンな感じがして、熱心に見ようと言う気になれないシリーズだったんだけど、これは楽しかった。いや、ダニエル・クレイグ主演っていう時点で、ある意味期待通りか。

 だって今回のジェームス・ボンド・・・こいつ基本ヤクザですよ!チンピラチンピラ!紳士服着たチンピラですよ。

 007を演じる前のダニエル・クレイグというと、とにかくコワモテの印象が強くて、スマートなスパイという印象からはほど遠い。当時の彼の代表作は「レイヤー・ケーキ」なんだけど、そこで演じていたのは麻薬ディーラーだったわけだしね。ダニエル・クレイグの007は、紳士服着たチンピラが如何にして殺しの番号を受け継ぐにふさわしい存在になるかを、3作も掛けて描いてる、異色なボンドシリーズなんだよね。

レイヤー・ケーキ [Blu-ray]

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 で、その「レイヤー・ケーキ」が監督デビュー作なのが、本作を監督しているマシュー・ヴォーン監督ということで、クレイグ・ボンドを監督できなかった意趣返しという見立て*1も、なるほどと思わざるを得ない所もある。


 本作においても、スパイを受け継ぐ資質を見込まれるエグジーは絵に描いたような悪童であるし、であらばこそ、コリン・ファースのかっちりしたダブルのスーツを着こなした紳士が、街の不良をたたきのめす本作を象徴するアクションシークエンス「Manners maketh Man.」のシーンも、言わば内なる暴力性を紳士服で抑え込んでいるスパイという側面を具現化した、素晴らしいシーンだと思う。

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 なのだが。結論から言えば、ボクはこの映画を最後までノって見る事が出来なかった。ひとえに言えば、後半のある転調が原因である。


 以下、ネタバレなので注意。




 コリン・ファース演じるハリー・ハートは優秀な工作員であると同時に、工作員未満の悪童・エグジーを精神的に導く偉大なメンターでもあるべき人間である。ところが、途中で彼はその役割から降りざるを得ない展開に巻き込まれる。サミュエル・L・ジャクソン演じるIT大富豪リッチモンド・ヴァレンタインが暴走するのである。

 いや、その暴走はまあいい。問題はそのいけにえに、ハリー・ハートを差し出したことにある。


 なぜだ。なぜそんなことをする?俺は許容できない。


 エグジーは言わば資質が採用試験に適合しただけで、彼はしょせん基本、労働者階級の悪童なのである。「紳士服を着ました→ハイ君も今日からキングスマン」ってものでもないはずである。ところが、その過程を映画はすっ飛ばす。本家007が3作も掛けてやったことを、いきなり否定するわけだ。コスプレして同じ魂を引き継ぎました、ってそんな簡単なものでもないと思う。ところが、彼はほとんど1人で敵と対峙し、世界を救うのである。

 もやっとしたのはそこだ。納得できないのである。この映画がウケている理由が「ダブルのスーツを着れば、君もキングスマン」という点だとすれば、正直言えばちょっとがっかりだ。


「マナーが、男を、作るんだ」


 それはそうだ。だが、スーツとマナーで型を作っても、その型におさまるべき魂を型にふさわしい域まで高めるには経験と葛藤がいるだろう。その時に、なぜ。それを導く立場からハリーを引きずり下ろしたのか。ボクにはどうしても納得がいかないのである。エグジーが本当に偉大なる「キングスマン」になるのはまだまだこれからのはずだ。ところが、もうその導き手に最適な男を退場させたのは、解せない。

 映画は結局、仕立て屋に最後まで仕事をさせないまま、映画は未完成の紳士服を肯定するのである。仕立てはまだ終わっていないのに。


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 ていうかね!なんでコリー・ファースのスーツ姿を最後まで見せないのだ!俺はもっと「完璧に仕立てられたスーツ」ハリー・ハートの活躍が見たかったのに!若造が世界を救ったって意味ないのだ。エグジーを背中で導くべき男、コリン・ファースの不在がとにかく残念だった。(★★★)



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