佐々波幸子
2015年9月24日13時42分
国連教育科学文化機関(ユネスコ)が消滅の危機にあると指摘した、世界約2500の言語。この中には、アイヌ語や沖縄地方の方言など国内八つの言語・方言が含まれている。対象の地域は、次世代への継承に向け、取り組みを共有するなど連携を強めている。
「アマンクリツサル ウブニ マリレー(甘い甘い大根になれ)」
会場に、穏やかな与那国方言が響き渡った。同じセリフを今度はアイヌ語で。「タイコ トペン タイコ トペン」。那覇市で18日にあった「危機的な状況にある言語・方言サミット」(文化庁など主催)。8言語・方言の多様さを聞き比べる企画には「狭い日本が広く見える」との声が上がった。
2009年にユネスコが発表したのは、各地の言語の状況を「どの程度次の世代に伝承されているか」「コミュニティー全体にしめる話者の割合」「教育に利用されうる言語資料がどの程度あるか」など9項目の尺度で調べた結果だ。アイヌ語が「極めて深刻」、沖縄の八重山方言(石垣島など)、与那国方言(与那国島)が「重大な危険」、沖縄方言(沖縄本島南部など)、国頭(くにがみ)方言(同島北部など)、宮古方言(宮古島など)、鹿児島・奄美大島などの奄美方言、東京・八丈島などの八丈方言の五つが「危険」な状況にあると分類された。
サミットでは、各地域の取り組みが紹介された。
八丈町教育委員会は翌10年、「八丈・島ことばカルタ」を作り、小学生の家庭に贈った。カルタ大会も開く。小中高生を対象に09年と12年に八丈方言の理解度や使用度を調べたところ、「知っている」と答えた割合は、「あっぱめ(赤ん坊)」が38ポイント増の57%に、「たこうな(竹の子)」は23ポイント増の42%に伸びた。
一方、「使っている」のは、9割が知っていると回答した「おじゃりやれ(いらっしゃい)」が21ポイント増えて4割を超えたのが最高だった。寸劇や教員研修なども続けているが、茂手木清・町教育委員長は「現実は厳しい」と報告した。
■独自のアイデンティティー、喪失への危機感
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