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北岡伸一・安保法制懇(「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」)座長代理 インタビュー全文(2014年4月30日15:30収録)

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金平キャスター
安保法制懇が、集団的自衛権の行使を容認する方向で、報告書を出されるということですが、この報告書の柱について、まずご説明頂きたい。
北岡氏
この報告書は、別に集団的自衛権だけを議論しているわけではありません。日本の安全保障の法律、法制度に不備なところがないか、より広く点検して欲しいという諮問で(懇談会は)できている訳ですね。

それ(法制度)をいくつか点検する中で、その柱の一つが、集団的自衛権の行使はできないという(現状の)解釈なものですから、それは違うのではないか、ということを提言するということは、柱の一つになります。それはただ、以前出した、2008年の提言に既にそうしたことは書いてあるので、殊更新しいことではないんですが。
金平キャスター
提出の時期は、連休明けという風に考えて宜しいでしょうか?
北岡氏
連休明けもいろいろありますけどね、連休終わって1,2週間でしょうね。2週間超えたら、連休明けとは言わないでしょうね。
金平キャスター
5月の12,13日か中旬か?
北岡氏
その次の週にはならないと期待しています。我々も早く手を洗いたいので。
金平キャスター
集団的自衛権の行使を容認することも、柱の一つではあるけれど、安全保障全体の問題についての点検ということですか?
北岡氏
その通りです。あと"容認"という言葉は、私あまり賛成じゃないんですよ。集団的自衛権というのは、国連憲章においても、サンフランシスコ講和条約においても、日米安全保障条約においても、日本はこれを保持すると。国連憲章は全ての国が、他の講和条約と日米安保条約については、日本は集団的自衛権を持つということは明記されているわけですよ。これを日本が持っているということは、当然のことなんですよ、条約上も。それをただ、日本は憲法の枠内で行使できない、というのが内閣法制局の解釈なんですね。

禁止されている、行使できないという解釈を、禁止を解こうと、リフトしよう(外そう)というのが我々の提言なんですね。(そして)行使をするというのは具体的に現に行動を起こすということですよ。それは我々の目標ではありません。

日本は個別的自衛権も、かつて行使したことはありません、戦後。行使の禁止を解除して行使ができるようにした、整備できるようになったのは1954年なんですよ、個別的自衛権は。しかし一度も行使されていない。集団的自衛権は行使はできないという解釈なので、いざという時には行使できるようにしておこうということなんですよね。
金平キャスター
今おっしゃった、内閣法制局の解釈ですね、1981年の答弁書を読み上げますと、自衛権の行使は我が国を防衛するために必要最小限度の範囲に止めるべきで、集団的自衛権はその範囲を超えるため許されない、というのが当時の内閣法制局、つまり政府答弁書ですね。この解釈を変えると?
北岡氏
遡れば72年にもっと同じようなことを言っているので、その解釈は72年以後なんですよね。何故、必要最小限を超えるかは書かれていませんね?
金平キャスター
いや、つまり必要最小限度の範囲を超えるとこの答弁書には・・・。
北岡氏
なぜ超えるかということは、書いていない。その考察はされていないんですよ。つまりもともと、集団的自衛権という概念が明記されるようになったのは、国連憲章ができた時ですけど、その時の考え方は、世界では一応武力の行使は禁止なんですよ、戦後の世界では。

二つだけ例外があって、それは国連軍を作って悪いやつを制裁する時、これは滅多に起こらないので今回は棚上げにしておくと。もう一つは自衛なんですよね。自衛の時に必要最小限、守るために武力行使するのはこれだけはしてもいいよ、ということになっているんですよ。その中に個別的自衛権、自分が襲われたら排除する、闘うのと、自分の親しい仲間が襲われたときに、これに協力してこの攻撃を排除する。この二つはOKですよ、ということになっているんですよ。これ、そもそも必要最小限なんですよ。

例えば大きな国は、自分で反撃する。それで自分は守れます。でも中小の国が大きな国に襲われた時に、個別的自衛権だけでどうやって自分が守れるんですか? そこの論証が、政府解釈に全く無いんですよ。安全保障で守れるかどうかというのは、法律家が判断することじゃなくて、安全保障の専門家が判断することです。そういう作業が行われていないんですよね。ただ具体的に81年の答弁書が面白いのは、集団的自衛権は行使できなくても事実上不都合は無いといっているんですよ。それが、72年の答弁書と違って面白いところなんですよ。そこは意外に正しいんですよね。そのとき、アメリカは圧倒的に強くて、しかも中国も日本側で、ソ連と向き合っていたわけです。

その時は日本を守れば、日・米・中の連携の必要を満たすことができたんですよね。ですからその時はたまたまそうだったんです。でも理論的に必要最小限というのが、どうして自分が襲われた時だけなのか。それは最小限であるけど、必要性は満たしていないと、私は安全保障の専門家として考えるし、かつ81年にあった、たまたまそれでも不都合は無いという現実は、今日既に失われていると思うんですよ。
金平キャスター
端的に言うと、これまでの政府答弁、内閣法制局の解釈が間違っていたということですか?
北岡氏
全体の議論が、懇談会の提言がそのトーンであるかどうかは、ちょっと濃淡がありましてね。
金平キャスター
別として。
北岡氏
不適切だという人から間違っているという人まで色々いてですね、私は少なくとも不適切だと思いますね。
金平キャスター
不適切?
北岡氏
はい。
金平キャスター
集団的自衛権も固有の権利として、国連憲章51条からずっとあるにも関わらず、憲法上行使が許されないなら、憲法解釈が不適切だと?
北岡氏
必要最小限の中になぜ入らないのかと。最小限であるかもしれませんが、必要最小限というのは、必要かつ最小限です。集団的自衛権がなければ守れない国は、世界中たくさんあります。それで集団的自衛権は必要最小限の中に入りませんというのは、理論的に、証明不可能です。
金平キャスター
私も、憲法や現実的な国際紛争など、報道の仕事を通じて体験してきた立場から申し上げると、集団的自衛権という言葉が、これだけにわかに脚光を浴びたのは最近のことですよね。
北岡氏
そうです。
金平キャスター
例えば、報告書にどういう形で登場するかわかりませんが、例えば砂川事件最高裁判決の時、一審からいろいろありましたけど、その頃、一般的市民の間で、集団的自衛権というのが、意識されたり、論議の対象となったことは無かったですよね?
北岡氏
ありません。
金平キャスター
無かったですよね。ということはつまり、にわかに脚光を浴びてきた・・・。
北岡氏
いや、それは違いますよ。個別は良いけど集団はだめという観念も無かったですよ。
金平キャスター
個別しか無かったと。
北岡氏
いやいや、そんなことはありません。あのときの、砂川判決をどれ位重視するかというと、我々は決定的に重視しているわけではありません。それから最初に申し上げたけれど、集団的自衛権を、我々が持ち出した訳ではないんですよ。いくつかの法制度をいじっていると、集団的自衛権が行使できないから、あれもできません、これもできませんと色々あるから、その解釈は変じゃないですか、という提案を我々はするんですよ。

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金平キャスター
憲法九条の条文との関係で、これはまあ、割りとフラットに読みますよね、その関係で、海外での武力行使は、なかなかどうひっくりかえしても出てこないんじゃないかという意見がありますよね? 北岡さんはどうお考えになりますか?
北岡氏
私はそう思いません。あなたの説明自身に既にバイアスが入っているんですよ。
金平キャスター
バイアスは入ってないですよ。
北岡氏
いや。
金平キャスター
フラットに読めば、こういうことだという意見の人もいますけども、北岡さんはどう思いますかと。僕の意見を言っているのではないですよ。
北岡氏
バイアスが入っているといったのは、武力行使という言葉が使われたところにバイアスが入っているんですよ。
金平キャスター
私にバイアスがかかっているんじゃなくて、それを持ち出した人の意見にバイアスがかかっていると?
北岡氏
そう言っても良いですよ。一般的な質問として言われたからね。武力行使というのは、9条1項に入っているんですよ、武力行使というのは、日本が関わった紛争において、武力を行使することでこれを解決するのはいけませんよ、というのが9条1項なんですよね。

誤解されるといけないんで、私は9条1項は全く賛成なんですよ。9条1項は変える必要はない。9条1項を変えようという人は、一部自民党などにいますけど、私はこれには強く反対なんですよ。9条1項は国連憲章と同じですし、国際紛争は自国の武力を使って解決してはいけないというのは、私は人類が達成した、戦争違法化と言いますけども、大きなマイルストーンで、これは変えちゃいかんと思っています。ところでじゃあ9条1項の国際紛争は何かというと、これは、日本が当事者である紛争を、武力を用いて解決してはいけないという規則なんですよ。