横スライドを制する者は試合を制す? ~Aマドリー×FCバルセロナ~
<スライドを制する者は試合を制す? ~Aマドリー×FCバルセロナ~>
今季は各国リーグでビッグカードが早めに組まれていますが、リーガでも三つ巴の内の1カードが実現。
この2クラブはスペイン国内のみならず、欧州の覇権争いにも関ってくる勢力なので
今日はこのカードから両チームの仕上がりと今季のトレンドを探っていきたいと思います。
まずは今季大型補強を敢行したAマドリーから。
スタメンにはオリベルとFルイスという出戻り組の顔ぶれが。
Fルイスについてはロンドンに半年貸し出したら利子までついて戻ってきたという錬金術移籍。
オリベルに関しては2年間に見た時に「センスは抜群だけどこのか弱い青年がシメオネサッカーに果たして耐えられるのか?」と心配していたら案の定レンタルへ。
しかし昨季、ポルトで見せたCLでのパフォーマンス(特にバイエルン戦)からは
ハードワークとセンスが癒合した「戦えるゲームメイカー」に成長してる姿がありました。
加えてベンチには今季ワールドクラス入り間違い無しと目されるJマルティネスと
昨季ビジャレアルでブレイクしたビエットにモナコから暴れん坊カラスコまで加えて
攻撃陣の層はリーガでも屈指のレベルに上積みされています。
対するは2年目のエンリケが率いる王者バルサ。
昨季3冠に輝きながら今ひとつそれに見合った名声を得ていないようにも思えるエンリケだが
今季は夏の補強が禁止(正確には選手登録禁止)という事情もあり試練のシーズンを迎える。
年明けにアルダとAビダルを登録出来るまでは実質昨年の戦力からシャビとペドロが抜けた陣容で戦わなくてはなりません。
そういう意味では開幕から好調のベルメーレンが「最大の補強」と言えなくも無いが・・・。
ただし、この大一番ではメッシが第二子出産の為、TRから抜けていた事でベンチスタートとなっています。
いきなりエンリケの「今季もメッシだろうと特別扱いはしない」という強烈なメッセージですが
昨年は結果がついてきたので周囲もメッシ本人ともギリギリの均衡を保っていたバランスはいつ崩れてもおかしくないでしょう。
「選手時代の実績」「カンテラ育ちではなく外様」そしてなにより「監督としてのカリスマ性」でペップに大きく劣るエンリケのチームは
あくまで主役は選手(MSN)であり、サッカースタイルもカウンター主体の極めてオーソドックスなものでハッキリ言ってしまえばフツーなんですよね(^^;
<欧州を日常に戦っているインテンシティ>
試合は序盤から極めてインテンシティの高い攻防となりました。
バルセロナは昨年以上に失った瞬間のボール狩りが向上しており、ネイマールなんかは完全に欧州基準のトランジションを実装した近代型のウイングとしてブラジル時代の面影はもう残っていません。
メッシがベンチスタートだった事もあり、11人全員で瞬間的に攻守のスイッチが切り替わるバルサは非常にモダンな印象を抱かせました。
勿論シメオネのアトレチコも縦横を圧縮した密集守備は健在。
格上相手には2トップも自陣にリトリートさせて10枚で組む4-4-2ブロックは強固であり
ボール回収地点が低くてもロングカウンターを成功させられるタレントがこのチームにはいます。
(アルダは失ったけどね)
お互いの守備に隙がないので「これぞ欧州!」という緻密な崩しがこの試合の鍵を握る事でしょう。
<バルサの攻め筋を変えたエンリケ>
これまでアトレチコ×バルサと言えば、中央密集で中を固めるアトレチコに対し、
そこを意地でもパスワークとドリブルで中央突破を狙うバルサという構図が恒例でした。
【中央密集×中央突破】
バルサは両WGをタッチラインぎりぎりに張らせていましたが、もはやそれがオトリに過ぎない事はどこのチームにもバレていました。
結局最後はメッシとイニシャビがバイタルでボール遊びして崩すのだから「このエリアだけ固めとけばいい」という
シメオネの極端な中央圧縮ブロックが非常に効果的だった時代です。
一方、この試合のバルサはこれと正反対のアプローチを仕掛けました。
「中央を塞いでいるなら空いた両脇を使えばいいだろう」という正攻法がエンリケの考え方です。
【エンリケの両脇狙い】
アトレチコの圧縮ブロックはスアレス1枚で固定させておき、ボールの循環と起点はあくまでそのブロックの外で作る・・・という攻め筋です。
まあ、相手を見て空いたところをシンプルに使うという当たり前っちゃ当たり前の事をしただけなんですが、
バルサで「相手を見て攻め筋を変える」というアプローチはある意味画期的でした。
局面は右から左へバルサが攻めている場面ですが、サイドを起点にしているのでアトレチコの密集ブロックが
そのままボールサイドへスライドしているのが分かります。
右SHのオリベルがピッチのちょうど中央あたりにいますので横幅はピッチ半分にほぼ全員が入るぐらい圧縮されているのがミソ。
従来のバルサであればラフィーニャからいかにバイタルへのナナメのクサビを打ち込むか・・・という場面でしたが
エンリケのバルサはブロックの外から外に回してサイドを変え、逆SH(オリベル)の背後を取ったところでタテパスという按配。
アトレチコのブロックはサイドを変えられたので全体がボールサイドへ横スライド。
この横スライドの速さは欧州でも3本の指に入ります。
アトレチコのスライドが早かったせいでネイマールのドリブルがタテではなく、ここでもブロックの外側をなぞるように横へ横へ。
ある意味これはドリブルによるサイドチェンジですね。
右から左、そして左から右へとボールを動かしてからこれまたブロックの大外をえぐるサイド攻撃・・・と。
これは要するに密集したブロック内にタテパスを入れるリスクを冒さずボールを前進させる為の攻撃ルートですね。
ブロックの外側をジワジワと左右に振って少しづつ前進させていく攻撃はこの間、中のスアレスが一度もボールに触れていない事からも明らかです。
続いて「個の輝き」を利用したパターン。
イニエスタたんがアトレチコのブロック進入を外から狙う場面
ここで横に進路を変えてブロックを横断、ドリブルによるサイドチェンジ第二段です。
パスと違いドリブルによる横断のメリットは長い時間相手DFの視線を固定させる事が出来るのと
「溜め」を作っている間に後ろから長い距離を走ってくる味方によって攻撃の厚みが作りやすい事。
この場面でもイニエスタのドリブルでDFを引きつけて大外をラキティッチが狙うの図。
このように前半のバルサは徹頭徹尾、ブロックの外側を基点にしたサイド攻撃で
カウンターを受けるリスクが低い効果的なジャブの連打が目立っていました。
まるでメイウェザーのボクシングみたいですね。
<シメオネの横スライド強化策>
これを見たシメオネはすぐさま手を打ちます。
4-4-2からトップのグリーズマンを右SHに下げて4-5-1へ。
中盤に5枚を並べてしまえば全体が横スライドする距離がかなり短くなるのでバルサのサイドチェンジに対抗しやすくなるという狙いです。
【4-4-2の逆SHの位置】
ボールが右にある時の逆SH(オリベル)がこの位置なのでイニエスタが背後を取れる。
【4-5-1の逆SHの位置】
前半途中から左にオリベル、右にグリーズマン、中央にガビ、ティアゴ、コケの3枚を並べた4-5-1に修正したアトレチコ。
中盤が5枚横並びになった事で逆SH(グリーズマン)がイニエスタをケア出来るポジションを取れるようになりました。
これを見てバルサは中盤(イニエスタ)を飛ばして直接逆サイドのWGへのサイドチェンジを増やしていきます。
【4-5-1の横スライド】
今度はバルサがラキティッチから逆サイドのネイマールへ一発のサイドチェンジ
・・・が、逆SH(グリーズマン)の横スライドが間に合ってSBファンフランと2対1を作れる磐石の構え
ネイマールが横ドリで横断しようとすれば中央3枚のMFが挟んで応対
ボールを奪うとアトレチコ伝家の宝刀ロングカウンター発動!
これがアトレチコの狙いであり、SHにアルダやグリーズマンといったタレントを置いている意味でもあります。
試合は少しづつ風がアトレチコに向いていく流れでバルサにアクシデント発生。
開幕から好調だったベルメーレンが怪我によってマテューと代わる事に。
昨季、加入当初はポジションを掴んだかに思えたマテューでしたが気がつけば完全なベンチメンバーに降格していた男。
それも妙に納得出来るのはバルサのCBコンビがマスケラーノとマテューに代わった後の安定感の無さでした。
【バルサ急造CBコンビの不安定さ】
局面は後半、右から左へ攻めるアトレチコの図ですがマスケラーノとマテューのCB同士の距離感がまず悪い。
間にトーレスを置いた状態でこの距離感では実質、チャレンジ&カバーが機能していません。
ティアゴから裏にスルーパスが出される瞬間になってもマテューはボールの方に何となくフラフラ~と食いついているだけで
背後を走られているトーレスの存在に気がついていません。
これは王子、ワンチャンあるで・・・と思った矢先に、案の定アトレチコの先制点が生まれました。
【アトレチコの先制点を検証】
局面は中盤でガビが浮き球を収めようとする場面。
ポイントはボールを受けるガビが攻撃方向に背を向けている状況である、という事。
背後からはブスケスがもう寄せていますが、当然DFラインはこれに合わせて押し上げてアンカーとの距離を一定に保つ場面です。
・・・がしっかりラインを上げたのはマスケラーノだけ。それでもセルジは歩いていますがギリギリ、ポジションを上げてはいます。
問題はマテューで1人だけ棒立ち・・・・
マスケラーノは「オフサイ!」って手を挙げてますが悲しいかなラインはその遥か後方であった・・・OTL
裏抜けしかない王子に対してこの状況を2度も作ったらそれは失点しますって。
先制に沸くアトレチコベンチの横で静かに”あの男”が立ち上がった-
<王の帰還 攻め筋を変えたメッシという個>
アトレチコとすればせめて”あの男”が投入されるまでは1-0リードの状況を守っていたかったはずだ。
そういう意味でネイマールがFKをものにした同点弾はアトレチコにとっては痛恨でバルサにとっては舞台が整ったという感じだったでしょうか。
シメオネは勿論、試合を見ていた誰もがバルサが勝負どころでメッシを投入してくるのは分かりきっていました。
そして今、その時が来たという事も-
この時、僕はそこではなく、じゃあ「メッシをどこに入れるのか?」を頭の中でシミュレーションしていたのです。
真っ先に思いつくのはラフィーニャに変えて前線をMSNにする事。
横の揺さぶりの精度を更に上げて強力ジャブでアトレチコのガードをこじ開ける一手ですね。
・・・と同時にメッシを中央のインテリオールに入れてイニエスタを左WGに右にネイマールを持ってくる一手が浮かんだのです。
横⇒横の攻め筋にアトレチコが慣れてきたこのタイミングでメッシの間受けと中央突破という中筋ルートを交える事でジャブにストレートとワンツーを加えるようなイメージでしょうか。
守備陣の目がバルサの攻撃パターンに慣れてきたところで全く違うところから飛んでくるパンチはガード困難でエグイな~とか考えていたらラキテッチOUT⇒メッシINの文字が。
ガチでインテリオールに入れてきおった・・・・((( ;゚д゚))))
ハッキリ言ってこの一手はエグイ。
百聞は一見にしかずという事でこの交代でピッチに何が起きたかを検証していきましょう。
【攻め筋を変えるメッシという個】
局面は右から左へ攻めるバルサ。早速メッシが中央で時間を作り、これに合わせてネイマールが露骨に中央突破モードへ(笑)
さっきまではサイドで横断ドリしてたウイングが露骨に間受けポジションでくれくれ状態。
アトレチコも慌てて中盤が中に絞ってきていますが、先ほどまでワイド対応をしていたせいで、
従来の中央圧縮に比べるとやや絞りが甘いような・・・?
やっぱりスパッと真ん中通されたーーー!!!
ネイマールはファーストタッチで前を向けるので、これに対応するのはそれまでスアレスをマークしていたCBしかいない。
出てきたところを通されてスアレスへ。
さっきまでオトリに過ぎなかったスアレスがメッシ投入によって一気に牙を向きます。
この流れを別角度で検証するとですね・・・・↓
まずメッシが持ったところでアトレチコの中盤5枚がこれに引き付けられた上にフリーズさせられてしまっているんですね。
(全員「飛び込んだらかわされる・・・」と思ってしまうから)
一方最終ラインはスアレスがピン留めしているので、その間でネイマールが間受けを狙える・・・という構図だった訳です。
・・・でメッシはボール1個分隙間があれば中を通せるし、ネイマールはこれぐらいのスペースがあれば前を向くには充分なんです。
慌ててゴディンが対応すれば次はスアレスが空く・・・という具合にMSN3枚にアトレチコの中盤とDFは完全に剥がされてしまった・・・と。
残り時間は25分・・・・うん、これは持たないわ、とこのワンシーンを見て確信した次第(笑)
案の定、バルサの決勝点はこの10分後でした。
【バルサの決勝点を検証】
今度は左45度の得意なエリアで受けたネイマールという局面。
これまたサイドで5枚のDFがネイマールに引きつけられてしまっています。
(ネイマールのタテへの突破力とカットインシュート、そしてラストパスの精度を考えたらチャレンジとカバーにこれぐらいの枚数割かれるのは致し方なし)
一度はアトレチコが奪い返したボールが混戦からバルサにこぼれてスアレス⇒メッシでジ・エンド。
これも別角度からもう1回見直してみますけど・・・
まずネイマールに5枚割かれて中でスアレスが1対2という状況は先ほどと全く同じ
アトレチコは最初のチャレンジでボールを取り切れないと背後ではスアレス+メッシに対してDF3枚という数関係。
普通最終ラインで「+1」の数的優位が作れていればディフェンスとしてはOKなはずなんですが、この凶悪コンビに「+1」は無いに等しいアドバンテージでした。
(若干、ファンフランの絞りが遅れたのは痛かった・・・)
アッーー!!!
ラスト5分はティキタカでボールを渡さない
無慈悲なまでの完勝です。
この試合のポイントは昨季CL決勝や先日のバイエルン×レバークーゼンに続き、
密集守備からの横スライドを巡る戦いが見られた事です。今季一つのトレンドになるかもしれません。
最後に余談にはなりますが試合後、どうやってこのMSNを止めるか、その方法を脳内シミュレーションしてみました。
まずネイマールには4枚、スアレスにも4枚、メッシには5枚はマークが必要でしょう。
その上でカウンターを成立させる為に最低限前残りの1枚と、それをつなぐ中盤に1枚・・・・
そうか、15人で試合をすればいいんだな。(キリッ!)
・・・スイマセン、僕のシミュレーションではここが限界です。誰か良い案を教えて下さい!
モウリーニョ「プレミアはそれどこじゃなし」
ペップ「去年チンチンにやられてるんだよね・・・」
ベニテス「まずはクラシコ前に解任されない事が目標(キリッ!)」
???「おいおい・・・情けねぇーな、大の男ががん首揃えて・・・」
お・・・お前は一体!?
『君達・・・・カルチョをお忘れかな?』
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