将来の実りのために、今を犠牲にする。この考え方は、今と将来がトレードオフの関係にあるとするものだ。子どものころから友達と遊ぶ時間や家族との団欒の時間を犠牲にして、スポーツに打ち込みプロになる。特にスポーツや芸術(音楽などを含む)に顕著だが、勉学にもあるだろう。
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この考え方は否定しない。何かを成し遂げようと思えば、トレードオフが生じるものだ。
だが同時に、トレードオフが生じても、その犠牲に心を囚われることなく、今を楽しむ方法もあるのではないか?そして、今を楽しんだ方が、良い結果に繋がるのではないか?というのが本記事の主旨だ。
▼ トレードオフとは
トレードオフとは、
一方を追求すれば他方を犠牲にせざるを得ないという状態・関係のことである
出典:ウィキペディア
トレードオフのもとでは、他方を犠牲にして、もう一方にリソースを集中するということになる。もし、本当の意味でリソースを集中することができれば、成功の可能性は必然的に高くなるだろう。
たとえば、イチローが小学生のとき、ほぼ毎日バッティングセンターに通っていたことは有名である。
ぼくは、3歳の時から練習を始めています。3歳から7歳までは半年くらいやっていましたが、3年生の時から今までは365日中360日は激しい練習をやっています。だから、一週間のうちで友達と遊べる時間は5~6時間です
出典:イチローの小学6年生のときの作文
この文章は、(イチローにとって)野球の練習と友達と遊ぶ時間がトレードオフになっていたことを示している。バッティングセンターに毎日通えば、友達と遊ぶ時間は限られる。また、ほかの習いごとをする時間もなくなるし、そのほかの娯楽の時間もとれなくなる、ということだ。
・お父さんにもトレードオフが…
お父さんと一緒に名古屋空港近くのバッティングセンターへ毎日通い、1ゲーム(25球で200円)のマシンを5ゲーム以上打ち込んでいました
出典:少年野球が上達する練習方法
※10ゲーム(250球)こなすこともあった。
バッティングセンターの費用だけで、月に5万円以上かかったそうだ。
そのため、イチローのお父さんは、ゴルフをやめ、ほかの遊びもしなかったそうだ。また、費用だけではなく、終始イチローの練習につき合ったため、相当な時間も投資している(イチローのお父さんは中小企業の経営者であったが、午後3時半以降は、イチローとの野球の練習に時間を充てた)。そのため、仕事にもマイナスの影響が出ている。
イチローにもトレードオフがあったし、お父さんにもトレードオフがあったのだ。
・明暗を分けるポイント
だが、彼らに○○を犠牲にしたという感覚があっただろうか?本当のところは本人たちに聞いてみないとわからないが、そんな感覚は、なかったのではないか…と思う。実際、このタイプの親に尋ねると、「私たちが楽しませてもらった」と口にするケースが多いそうだ。
私の考えでは、(犠牲が発生する)トレードオフ下でも楽しむことができるか、これが明暗を分けるポイントだ。もし、楽しむことができるのであれば、成功に至る道筋に乗っている、と考えてもいいと思う。
では、その状況の中で今を楽しむためには、どのような考え方が必要なのだろうか?
▼ 結果を気にしない
結果が出ないと、○○をやめてまでこれに賭けたのに…○○を犠牲にした意味がないではないか…という思いが湧き上がってくる。当然の感情のようにも思えるが、そのような精神状態では楽しくないし、良い結果も望めない。
努力をしても結果が出ない…という時期は、誰にでもあるのだ。
学習過程をみると,一時的に学習効果がみられなくなることがある。この場合における学習曲線が一時水平になり高原状を呈するような現象をいう。スポーツにおいては,競技者の成績が向上しない状態が続く場合をいい,ときには長期間にわたることがある
出典:コトバンク
ブログを書く作業を考えてもそうだ。記事数を増やしても、PVがさほど伸びないことがある。一時的に減ることすらある。PVばかりを気にしてブログを書いても楽しくないし、楽しくなければ続かないだろう。
私が以前、別のテーマでブログを書いていたときは、PVや記事数などの数値(結果)を重視していたため、書いていておもしろいと感じることはほとんどなかった。結果を主なモチベーションにして、義務感や苦痛を感じながら書いても、続くはずがないのだ。
以前、私は別のテーマでブログを書いていたことがあるのですが、とにかくアウトプット重視で、内容よりも記事数を増やすことを主に考えていました。しかし、100記事を超えたあたりで、それでは意味がないということがわかりました
出典:インプットとアウトプットの黄金比率は?
まずは、短期的(場合によっては中期的)な結果を気にしないことだ。
▼ プロセスを楽しむ
人生において、目標を達成したときだけ喜ぶ、というのではあまりにもキツイ。
1番をとれた、受験に成功した、希望の会社に入社できた、そのときは嬉しくてたまらないだろうが、人はそのような嬉しさにはすぐに順応する。1時間の打ち上げ花火を堪能するために、何年もつらいことを我慢するというのは、違うような気がする。それでは人生が我慢だらけになってしまう。
なので、結果だけに楽しみを求めるのではなく、プロセスを楽しむようにしたい。
たとえば、学ぶことにより知識が増えて、点と点が繋がり「そうか!」と思うことがある。これまで頭の中でモヤモヤしていたものがクリアになる…これは楽しいことだ。また、何かに打ち込み充実した時間を過ごすことを「楽しい」と捉えることもできる。
惰性でダラダラ時間を過ごすより、はるかに充実しており「面白味」があるはずだ。
プロセスを楽しむということは、結果を待たずして今を楽しむということに通じる。楽しみながら努力を続けることのできる人になれるということだ。このタイプの人は強い。ある意味最強だと思う。そしてそんな人には、結果はドカンと後からついてくる。
▼ 夢を見る
不器用な人というのは、夢想が得意だ。ちょっとした出来事からでも、あれこれ思いを巡らすことができる。この才能をプラスに使えばいいのだが、普段はマイナスにしか使っていない。過去の嫌な出来事を反芻して嫌な気分になるという無意味なことをよくやるのだ(笑)。
そうではなくて、自分が成功した姿を夢想すればいい。今取り組んでいる作業の延長上に、成功があると考えればいいのだ。サクセスストーリーの道半ばで、苦しいこともあるけれど、今が一番おもしろいときだと考えればいい。夢を見ながら何かに取り組んでいる時というのは、張りがあって楽しいものなのだ。
功成り名遂げた成功者に聞いてみても、その頃が一番楽しかった…と口にするケースが多い。
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▼ まとめ
何かを成し遂げようと思えば、トレードオフが生じるものだ。
何かを求めれば、何かが犠牲になるが、その犠牲に心を囚われることなく、今を楽しむ方法もあるのではないか?そして、今を楽しんだ方が、良い結果に繋がるのではないか?というのが本記事の主旨だ。
イチローの例を出して説明したが、レベルにかかわらず、(犠牲が発生する)トレードオフ下でも楽しむことができるか、これが明暗を分けるポイントだ。犠牲の方に目が向くようだと、失敗の入り口に立っているとしていい。もし、その状況を楽しむことができるのであれば、成功に至る道筋に乗っている、としていいと思う。
人生の今を楽しむ方法は以下の3つだ。
1)結果を気にしない
2)プロセスを楽しむ
3)夢を見る
簡単にいえば、夢を見ながら、短期的な結果を気にせず、プロセスを楽しむということだ。もちろん、この3つが揃ったからといって、成功するとは限らない。だが、成功する可能性は高くなるはずだ。やってみて損はないだろう。