田舎はいいねぇ。
少し前の話になるが、今年のお盆は、越谷に住んでいる従兄弟が家族を伴って遊びに来た。従兄弟が来る度に言うのだが、今年も例のセリフを言っていた。
「やっぱ田舎はいいねぇ! 空気は美味しいし、のんびりしていて」
冗談ではない。
東京などの大都市に住んでいる人からすれば、想像もつかないかもしれないが、田舎にはわりと何もない。確かに空気は美味しいかもしれないが、実際に住んでみると大変なことが多いのが田舎の実情なのだ。
実際、自分は十数年前東京で働いていて、ある程度都会の暮らしがどんなものかわかっているつもりだ。
というわけで、今回は田舎暮らしの大変さについて、淡々と語ってみようと思う。
※ちなみに、世の中にはもっと閑散としている田舎も存在するのは承知している。自分が住んでいるのは人口10万人クラスの町の例である。村レベルの地域から比べれば、まだ恵まれているというのは、当然自覚している。
公共交通機関が来ない。
まずは当たり前だが、田舎では公共交通機関はアテに出来ない。フラッと駅に行って電車が来るのを待つなどということをすれば、下手すると長時間待たされるハメになる。下記に時刻表の画像を貼っておくが、大体1時間に1本程度の本数なのだ。
※午前中の時刻表。横の列が電車の運行間隔である。縦の列は各駅への到着時刻。
※午後の時刻表。東京に行きたければ、最終列車は19時15分である。
電車に限らず、バスもそうだ。例えば、自分の住んでいるアパートの最寄りのバス停の時刻表を下記に貼ってみよう。
素晴らしくスカスカである。
時刻の数字の横の記号は、元日や年末年始は運休するという意味である。つまり、元日は12時台までウチの最寄りのバス停にはバスが来ない。まあ、元日にバスを利用する人は少ないのかもしれないが。
とにかく、自分の住んでいる町で、電車なりバスなりを利用しようと思ったら、予め時刻表で来る時間を調べておいて、その時間を狙って駅なりバス停なりに行かなければならない。
当然ながら、これではあまりに使い勝手が悪いので、みんなマイカーを持っている。一家に一台というより、一人一台の世界だ。その分、車の購入費用や税金やガソリン代等の維持費がかかる。田舎の暮らしはお金がかからないと思っている人がいるかもしれないが、そんなことはないのである。
お店がない。
当然ながら、田舎ではお店がない。
全国的に有名なチェーン店はいくつか来ている。以下に列挙すると…
- コンビニ:セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、ミニストップ
- 牛丼屋:吉野家、すき家
- ファミレス:デニーズ、ガスト、ココス、ビッグボーイ
- ファーストフード:マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキーフライドチキン、サブウェイ
- カフェ:ドトール、タリーズコーヒー、エクセルシオールカフェ(病院内)
- 寿司屋:元気寿司、かっぱ寿司
- 電気屋:コジマ電気、ヤマダ電機、ケーズデンキ
- その他:ステーキけん、ステーキ宮、ミスタードーナツ、TSUTAYA、ゲオ、ラーメン二郎、アピタ
といったところだろうか。
結構あるじゃないかと思われるかもしれないが、ここに挙げたのがほぼ全てである。自分の住んでいるのは人口10万人クラスの町だが、そのクラスの町であればあってもいいような施設がいくつか無かったりする。
例えば映画館。以前はあったのだが、いまでは一つも無くなってしまった。映画を見たければ、一番近くても車で1時間半近くかかる別の町までいかなければならない。
デパートも、昔はいくつかあったのだが、全て潰れてしまった。いまではそのデパート跡は駐車場になっていたり、TSUTAYAになっていたりするが、TSUTAYAは上層階は使用しておらず、何もテナントは入っていない。
スタバとか出来て欲しいと思っているのだが、なかなか来てくれない。イオン関連のショッピングモールとかも出来て欲しいが、そういう噂がある度に地元の商店街の反対運動が激しくて、なかなか実現しないのだ。
働き口がない。
いちばん問題なのはこれだろう。田舎に住んでいても、働く場所が無いのである。
派遣の需要はある。だが、正直言ってその収入は、生きていくのがやっとといったところだろう。貯蓄まで出来るような収入を得ることはなかなか出来ない。
とはいえ、正社員の雇用があるわけではなく、あったとしても零細企業の低収入な募集ばかりだったりする。いくら家賃等が東京に比べて安いと入っても、支給で12〜3万円では安定した暮らしを営んでいくのは難しいのではないだろうか。だが、そんな程度の募集しか無いのが実情だ。
勿論、田舎を出て都会で働くことを決断できれば話は別だろう。だが、自分のようなUターン組は、いまさら都会に出て働く事はなかなか考えられない。それでは何のために地元に帰ってきたのかわからないからだ。独身だったら、とっとと東京に戻っていったかもしれないが…
お金がなけりゃスローライフなんて幻。
よく言われる「田舎でのスローライフ」だが、あんな事が出来るのは、蓄えがたっぷりあるリタイヤ組だと思う。普通に田舎に暮らして働いている身としては、とてもそんなにのんびりしている暇など無いのだ。
よくテレビでも、田舎に移住して農業で暮らす人の事をやってたりするが、先日はそういう夢を抱いてやってきた女性が、やはり暮らしていくことが出来ずに東京へ帰るという特集を地方ニュースでやっていた。世の中そんなに甘くはないのである。
余計な欲を出さずに、ミニマリズム的な生活なら出来るのではないかと思われるかもしれないが、田舎は人間関係が都会よりも大抵の場合濃いので、ちょっと変わった部分を見せると近所で噂になってしまうかもしれない。
田舎で暮らすっていうのも、なかなか大変なんですよ、マジで。