「ヨーロッパは一つ」の夢は崩壊寸前
さて、やらせ写真の話はこれぐらいにして、EUの難民の状況。
「政治難民の受け入れに上限はない」と大見得を切ったメルケル首相だったが、9月の最初の11日間で7万人もの難民が到着して、ドイツ国内は大混乱。ついに13日、オーストリア国境で入国審査を再開すると発表。30年前に逆戻りだ。
主要道路の国境部分で検問が始まり、普段なら時速100キロですいすい走り抜ける車を止めては、いちいち難民が隠れていないか覗いているらしく、大渋滞が起こっている。13日から14日にかけては、オーストリア・ドイツ間の鉄道も止められた。感覚としては、東京から長野にノンストップで行けない感じ。想像を絶する事態だ。
ドイツが突然国境を閉じれば、当然、連鎖反応が起こる。
オーストリアにいる難民が自国に入ることを嫌い、チェコも慌てて国境を閉じたし、オーストリアもハンガリーとの国境を閉じた。オーストリアは現在、国境に軍隊を動員して守りを固めている。断っておくが、これらはすべて、本来なら往来自由なはずのEU内の国境の話である。
一方、ハンガリーでは9月15日から新しい法律が施行され、以後、セルビアから入ってくる難民は国境侵犯で拘束される可能性が高まった。そうなれば難民は迂回路を求めて、おそらくクロアチア(2012年よりEU)に入ろうとするだろう。
今までこのルートがあまり使われなかった理由は、ユーゴ内乱の時の地雷がたくさん残っているからだそうだ。しかも、これからは寒くなるので、EUが迅速に行動しないと死者が出る恐れもある。
ドイツのガブリエル副首相は、9月14日、今年、訪れる難民の数を再々度、上方修正した。なんと100万人だ。これは香川県の人口に匹敵する。どうやって収容するのか?
15日、難民問題の解決法を探すためEUの内務大臣が集まったが、何も決まらなかった。今のところ、ドイツ、オーストリア、スウェーデンの3国が、EU28国の難民をすべて引き受けているような感じだ。
この調子では、ユーロ危機で揺さぶられた「ヨーロッパは一つ」の夢は、さらに崩れていくかもしれない。
著者: 川口マーン惠美
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