思いだすままに……(47)
あれは息子の忌明けになる四十九日の日だった。
足音が聞こえた。
間違いない。竜介の何時もの力強い足音だ。
私は驚いて目を覚ました。
竜介は事故で亡くなった筈では無かったか……。
しかし、あの足音は間違いなく竜介の足音だ!
私は飛び起きて玄関を開けた。
そこには満面の笑顔で竜介が立っていた。
逞しい身体の可愛い笑顔が、嬉しそうに立っている。
「竜介!おまえ……?」
「お父さん、俺、大丈夫だよ。心配ないよ、事故で怪我はしたけど、ほら、この通り、入院していただけだから、もうすっかり良くなったよ」
「そうか、そうか……良かった……、俺の勘違いだったのか……良かった……」
息子の背後で、長い黒髪の清楚な女性が、優しく微笑みながら静かに頭を下げた。
「竜介、後の人は誰?」
「お父さん、心配しなくてもいいよ……、俺、大丈夫だから」
私の問い掛けには答えず、竜介は、又、白い歯を見せて満面の笑みを見せた。
「お母さん、竜介が帰って来たぞ!死んでなかった。帰って来たぞ!」
振り返って家内を呼んだ。
何か、大声で唸っていたらしい。
気付くと、涙を一杯にした自分がいた。
夢……、だったらしい……。